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なぜ人間は服を愛するのか?

なぜ私たちはこれほど服を愛するのか。それは、他のどんな表現媒体よりも肌に近いからだ。布は、やわらかいようで、傷がついていて、一生変わらないようで、少しずつ年をとっている。そんな布と布とが切られ・つなぎあわされたものに宿る美は、私たち人間が、自分自身に抱く、たしかさと曖昧さに、強く共振する。

私たちは、基本的に、存在する全てに「レタッチ」と「いいね」を行う時代に生きている。それは、優しさと攻撃性、肯定と否定、自然と人工、強さと脆さ、引き合う孤独の力(万有引力)と遠ざけ合う境界の力と、モノクロの世界とあふれる色彩とが、同時に存在する世界だ。こんな時代にもまた「服そのもの」は呼応する。

服は、人間がいなければなんの価値にもならない。その存在そのものが、その事実そのものが、逆説的に、人間の存在自体を、私たちの生命そのものを、マジで、強烈に「価値として」肯定してくれているような気がする。服は、強くも、不安定な、私たち自身の写し鏡なのだ。

最近アシスタントたちのまかないにカレーを作る回数が増えすぎて、「作ったカレーを食べてほしくて呼んでるだけ」みたいになってきてないか、自分で自分が心配になる。

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