調子を崩したとき

午前中、営業のためのパンフレットなどを作り、夕方から屋我と沖縄市へ。パークアベニューにあるAsian Flavorsというギャラリーで「輝く沖縄のガラス展」が開催されているためだ。ここで展示されているものは、すべて2つの工房のもの。ディスプレイが凝っていて、涼やかでありながらも温もりのある琉球ガラスの魅力がうまく表現されていてなかなかよい。このギャラリーは喫茶店も兼ねている。ここのアイスコーヒーがうまいんだ、と屋我に勧められたのでオーダーしてみた。たしかに、うまかった。

「工房戻る? それとも遊び行く?」
ここ最近、睡眠薬の副作用が強く出ている。それが「副作用」なのか病気の症状なのかよくわからないが、人とあまり関わりたくない、だるい、眠い・・・・・・などといった、かなりぼろぼろの状態がつづいていた。ここ何日かきつそうだな、と屋我に訊ねられ、そうなんだよ、たぶん体が戻ってきているんだ。薬の副作用のはず、とぼくは答えた。
「じゃあ、遊びにいくか!」
と屋我はにっと笑う。その心遣いと思わせない、彼の心遣いがありがたかった。
「御意のままに」
とぼくは笑った。

屋我の運転する車の助手席で窓の外の風景を眺めていると、東京の実家を思い出した。沖縄市から嘉手納へ入る国道58号線が東京の瑞穂町から福生市へとつづく国道16号線とよく似ていた。ともに米軍の飛行場の脇にあり、道が暗い。明滅する滑走路の明かりを見ていると急に郷愁が湧いた。
「この風景は実家の近くの風景とよくにているなぁ」
とぼくは呟くようにいった。たまたま屋我もぼくも男同士だし、異性に関心があるので、怪しい関係になることはないが、言ってみれば、ぼくは屋我の工房に「嫁いだ」みたいなものだと思う。「夫婦」として考えれば割り切れることは本当によくある。野球の世界でもキャッチャーは「女房役」というではないか。うちの場合はどっちがどうというのはときどきによって変わるが、たしかにそんなものがあるように思う。なもので、お互い、彼女ができない。

工房について夜空を見上げる。満天の星空。月と太陽も好きだけれども、この満天の星空も本当に美しい。芝生の上に大の字になって、「ホームレスって超リッチ」と思った。こんな満天の星空を天井にできる生活、壁や囲いで仕切られていない、自然と一つになれる空間をわが住処とできることの幸せは、ほかではなかなか味わえないだろうと思う。

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