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冥道(ハザマ)の世界の中で:まえがき


物心ついた時から、違和感、というか、人と違う事を意識させられた。

友達は、必要なのか。

運動は、楽しいことなのか。

何故、外に出て遊ばないといけないのか。

何故、皆で、一緒に、勉強しているのか。

何故、テストで順位を付けるのか。

何故、運動会で順位をつけないのか。

同じことを、毎日毎日正しく繰り返せなければ、人間失格なのか。

思ったことを口にしないことは、罪なのか。

口にすることも罪なのか。

親のことを好きでいなければ、悪い子供なのか。

男の子らしく、女の子らしく、とは何なのか。

子供らしく、大人らしく、とは何なのか。

生徒らしく、先生らしく、とは何なのか。

みんなお揃いの格好で無ければいけないのか。

ひとり、学校の図書館で時間を過ごすことが、幸せで。
保健室も、第二の教室だった。

本を読み始めると、気づけば朝まで読んでいた。

物語の中の主人公になりきると、自由で、呼吸ができた。

主人公になりきって、本の中で世界を飛び回る。

出会ったことのないものに出会い、

見たことのないものを発見して、

本の中で、人を好きになるとは?を知った。

そうして、大人と呼ばれる年齢になっても、違和感は消えなかった。

大学は、高校を出てすぐ行かねばならないものなのか。

人は、何故、毎日働かなければいけないのか。

意見を言えなければ、無能なのか。

上司に媚びることは美徳なのか。

お金がなければ本当に不幸なのか。

仕事を転々とすることは、ダメなことなのか。

会社を休んで、会社を辞めて、好きなことをすることは変なのか。

結婚は、しなければいけないのか。

子供は、家族は、家庭は、持たねばならないものなのか。

周りの声に左右され、自分で自分を縛り付けていた事実。

単に疎外感を恐れていただけという事実。

自分も、結局、周りと同じだったという事実。

批判されても、馬鹿にされても好きに生きる。

それが自分を救うただひとつの方法。

自分のことを、他の誰かに分かってもらおうとする前提がそもそも間違っている。

過ぎた時間は戻らない。

後悔したことの方が、多すぎる。

許せない相手も、許してもらえない相手もいる。

けれどそれでも、今からでも自分の心の声に正直になりたいと願う。

たとえば人に危害を加えてたところで、幸せになれることなどない。
それは本心を巧妙に覆い隠したフェイクだから。

人の不幸が自らの幸せにつながるはずもない。
それを願った時点で相手の格は常に自分より上にある。

では、人に喜んでもらって、それだけを生きる糧にして、
一体幸せになれるのか?


自分につながる世界たちを書きとめた物語。

冥道(ハザマ)の世界は、いつだって、あなたのすぐそばにある。


【あらすじ】
《ママがパパを殺したのかもしれない》
 そう思い続けている百香(ももか)は、勉強も運動も苦手な公立の小学生。1年前、突然消えた父、《私立学校盲信派》の母、幼い弟との生活は決して裕福とは言えない。
 自分の存在意義を見失った夏の日、百香は一瞬生きる意志を手放そうとして不思議な世界に迷い込む。そこは時間の流れが違う奇妙なハザマの世界だった。その世界の主である主様(ぬしさま)に会うことを許された日、百香の人間年齢は、既に七十七歳。そして、そこで告げられた言葉に言葉を失う。
 冥道(ハザマ)の世界の最終日、残り少ない命を全うするため、八十歳目前の百香は、自分の望む道をようやく探し歩き始めようとする。

「冥道(ハザマ)の世界」あらすじ(全十九話)

(本編:第一話へとつづく)↓



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