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夏が呼んでるらしい 季節にも重力が働くみたいだ 寒がりな高校生が夏の予定を話すのって面白い…
水辺の草むらに 女の死体が 虹色に 辱しめられている 草むらだから こういうこともあるのだと…
目と鼻と月の 影が ロビーに連続して 隊列のように 怒声 鳴り響くから意識を 閉じて 嵐の後の…
私が死んでいる 世界を見つめるのは 死んでいない私だ 私は鈍摩した精神でずっと 死んでいる私…
自殺者の心奥にある どろどろにとけた幸福が 陽気な夜を呼び寄せたのは 楽しいねって笑う親子…
骨の天使が 異様に発達した肩甲骨を羽ばたかせながら 僕に近づき その鋭い指で僕の眼をくりぬ…
空隙のある肉体にうまれ それが満ちることのない 様は わたしの思想が現実を侵しはじめている 証左ではないかと 夕日に染まるベランダで思う わたしは 履き古したサンダルでもあり 磨き抜いたグラスでもあるのだ
失うことを恐れて 掌で覆った それは徐々にちいさくなり 最後はくろい一点の粒になった 概念 …
かなしいとか つらいとか ということは 意外に 重い鬱のなかでは思わなくて ただ どんどんどん…
あの、青と赤の混じる空を きみは知っているか 百三十七億年の光の歪曲 抑うつの恐竜の死 すべ…
青色のうねうねがある 毎年訪れる小さな市民プールの水は特別カルキ臭くて 潜る度に鼻の奥が…
林檎。存在している。カラス。存在している。紙幣。存在している。ごみ袋。存在している。アパ…
それは汚れた布だった 語られることのないもの 語り手のいない、世界の空白 それは風に吹かれ…
漂う言葉は反響しない それは僕には届かない 見渡すほどの白い空間 ここでは意味ありげな現実さえ脆いのだ なんて幸いだろう なんて停滞だろう なんて無意味だろう 無意味であることに救いを見い出した幼児たちが、愛想笑いを浮かべながら手を伸ばしている こちらへ、こちらへと 生だ