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コンテンツの価値を爆発的に高める「沸騰した場」が醸成される条件について

コンテンツが価値を高めるためには、「場の勢い」というものが大切になる。場の勢いがあるときには、コンテンツはそれに引っ張られ、飛び抜けて面白いものが生まれて社会がひっくり返る。だから、飛び抜けて面白いものを作ろうと思ったら、場を意識しなければならない。コンテンツは場を超えられない。場が沸騰してないと、熱いコンテンツは作れない。だからクリエイターは、沸騰した場を求める必要があるし、なんならその場を自分で作る必要があるのだ。

そして場を作ろうとしたときには、場というものをよく知らなければならない。場を知らずして、それを作ることは至難の技だ。もちろん、これまでには場を知らないにもかかわらずいつの間にか作り上げていたという事例もなくはないが、ほんの僅かな確率に過ぎない。これからの競争が厳しい時代には、そういう幸運に頼るのはあまりにも心許ないので、戦略的に戦い抜くべきだ。だから、これからの時代のクリエイターは、場の勉強が欠かせなくなる。「場とは何か?」ということを知悉し、それを醸成するメソッドやセオリーを身につけておく必要がある。

では、場とは何か?

それを学ぶには、一つ最適の事例がある。それを学べば、場というものが少なからず分かってくる。

何かというと、それは「ファミコン」だ。

ファミコンは、もちろん単体でではないが、今の巨大なゲーム市場を作り上げた最大の功労者だ。それは、ファミコンという場が沸騰しており、そこで世の中がひっくり返るようなコンテンツがいくつも生まれたからである。

ファミコンは、近年におけるきわめて分かりやすい「沸騰した場」だった。そしてそこが沸騰した場だったからこそ、「ゲーム市場」という世界の経済地図を塗り替えるような巨大なマーケットが誕生したのだ。

では、ファミコンとはどんな場だったのか?

ここで、なるべく簡潔に概観してみたい。

なぜファミコンは煮立った場になり得たのか?

ファミコンという煮立った場は、一体どうやって生まれたのか?

そこには、大きく三つの理由がある。

ファミコンが煮立った場になった最初の理由は、それに先んじる失敗があったということだ。失敗した先達がいた。その反省を踏まえたので、大きな場になり得たのだ。

要は、ファミコンはホップ・ステップ・ジャンプのジャンプになった。逆にいえば、ジャンプはホップやステップがなければ生まれない。

ではファミコンにとってのホップやステップとは何か?

それは、アタリやアーケードゲームである。そこで小さなムーブメントや失敗劇がくり広げられた。ファミコンという王国は、その混乱や屍を土台に築かれた。

アタリやアーケードゲームでは、さまざまな混乱が巻き起こった。その混乱は、今でいうならYouTubeにおける混乱と似ているかもしれない。そこでは毎日、さまざまな事件や失敗がくり返されていた。それに人生を狂わされた人、没落した人も少なくなかった

YouTube自体は、既に煮立った場であるようにも見える。ただ、そうした混乱が収まらないところを見ると、これからさらに大きなジャンプが到来する可能性も考えられる。そうなると、YouTubeは既に巨大なマーケットを築いているのだから、それを土台としたジャンプの大きさは文字通り計り知れない。

いずれにしろ、沸騰する場というのはそのホップ・ステップ——つまり前段として必ず大きな混乱が起きている。だから、もしこれから伸びる場、沸騰しそうな場を探すのだとしたら、まずは混乱が起きているところに注目するべきだ。1970年代や80年代初頭にゲーム市場で起きていた混乱に比するような混乱が、今起きている場はどこなのか? それを探し、参加することによって、次代の沸騰した場に参加したり、またそれを作れたりする可能性は高まるのである。


ファミコンが沸騰した場になれた二つ目の理由は、「枯れた技術の水平思考」だ。この言葉は、任天堂の技術者だった横井軍平さんが考えたものだ。意味は、古い技術の新しい使い道を思いついたとき、そこに巨大なイノベーションが起きる——というものである。

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