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出版物の総額表示、書協「返品」「回収」問題を否定

消費税額を含めた支払総額の表示義務が2021年3月31日に免除期限を迎えることをめぐって、一部の作家や出版関係者が表示コストの負担や非表示書籍の返品増加による出版社の経営危機を懸念する声が相次いだ問題で、日本書籍出版協会(書協)は、「出版社に総額表示への対応義務が発生するのは4月1日発売の書籍から。3月31日までに発売された書籍の店頭在庫を返品したり、回収したり、店頭で(総額表示記載)スリップを入れたりすることは求められていない」との見解を示した。

04年開始時は混乱なし なぜ今に

4月1日を境に総額表示を施されていない、「店頭の書籍が返品される」「出版社が本を回収して対応する必要がある」など、ネットで騒がれた問題を否定。さらに、「実際、2004年に総額表示義務が開始された時も、店頭在庫を書店が大量に返品したり、出版社が回収して再出荷して対応したり、書店員が店頭でスリップを挿し込んだという事実はない」(書協)としている。

4月1日以降に発売される新刊書籍や同日以降に重版等で送品する書籍については、「すでに書協が『再販出版物の価格表示等のガイドライン』で提示しているように、スリップのボウズ部分や帯などに総額を表示して対応していただければ」(書協)と説明している。

再販出版物の価格表示等のガイドラインなど総額表示に関する一覧

しかし、出版社はコスト削減の一環として、一昨年からスリップそのものを廃止する動きに出ている。スリップを廃止した出版社に対しては「帯に表示するか、スリップの代わりに『しおり』のようなものに総額表示をすることでも可能」(書協)と代案を示している。

総額表示義務、罰則はなし

消費税の総額表示義務は2003年度の消費税法改正により、2004 年4月1日からスタート。事業者が消費者に対して価格をあらかじめ表示する場合には、消費税額を含めた支払総額を表示することを義務付けるもので、罰則規定はない。

03年に税制等対策特別委で、ガイドライン策定

出版業界では、書協、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会の出版4団体で「税制等対策特別委員会」を組織し、総額表示方法を検討。再販出版物の場合は再販契約上、出版社が定価を表示し再販価格を指示していることから、実質的に出版社がその責任を負うこととし、①現行の価格表示を継続できること、②出来るだけ手間と費用がかからない方法とすることを前提に、財務省等と打ち合わせを行い、2003年6月に「再販出版物の価格表示等のガイドライン」をまとめた。

それによると、新刊・増刷の価格表示については「総額表示として認められる表示方法としては最低限、スリップ等による総額の表示が必要」とし、「定価(総額)の表示にあたっては、⑤または5%と税率(当時)をあわせて表示することにより、税率変更時など容易に判別できるようにすることが、店頭での混乱を回避することになる」などと対応方法を明記している。

その後、二度の消費税率引き上げに際し、事業者の値札の張替えなどの事務負担への配慮などから、2013年10月~2021年3月末までの間は消費税転嫁対策特別措置法において、税込み価格の表示義務が免除されることになった。

書協では、免除期限が近づく中、財務省と「出版物における総額表示免除の延長」交渉を続けてきたが、財務省から9月11日に「基本的に特例は終了となる方向で考えてほしい」と伝えられたという。



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