心因性って仮病って意味?
「仮病の見抜きかた」という本を図書館で借りて読んだ。著書は内科医の國松先生。
以前にも國松先生の本は読んでいて、すっかり好きになってしまった人だ。
この本の中ではいくつかの架空の(と言っても、実際にあったような)エピソードと、「賢明な読者へ」という、やや専門的な内容の叙述と、その後のエピソードという感じでまとめられていて、そうした形のお話が10編入っている。
タイトルが「仮病の見抜きかた」なので、当然その10編のエピソードに出てくる人物や症例は簡単に見抜ける病気ではない。そして、わからないから、色々な病院を紹介という形でたらい回しにされたり、何度も繰り返し緊急受診をしたり、検査値に異常がないから心身症や心因性と言われたり、仮病扱いされたりするのだ。
ここで私が(著者も)引っかかったのは、「心身症=仮病または心の問題」なのかということだ。
上記でも記述されているように、心身症とは、精神病や心の病気ではない。つまり本来、心療内科で診るのは、この心身症であり、心ではなく身体の病気なのだ。(一部の心療内科は精神科医がやっていることもあり、その場合は、精神病と心身症のどちらも診てくれる)
私が思うに、「ストレス」という概念が生まれてから、医療者を含め、誰もがストレスという言葉を使い過ぎではないのかな。
「原因はわかりません」って言われるより、「原因はストレスですね」って言われる方が、なんとなく納得してしまうし、ストレスの原因とかストレスが溜まっているとか、なんかもうストレスが「天下の宝刀」「水戸黄門の紋所」のようになってしまっているよね。
ところが驚くことに、この本の中に「ストレスは自分で自覚できないもの」「ストレスを自覚できた時点でそれはストレスではない」と書かれているじゃないですか!
それなのに、病院とかで「何かストレスになるようなことありましたか?」みたいに聞かれること結構あるぞよ。
昨今の医療は(医療に限らずだけど)よくわからないままストレスという言葉を使い、「ストレスがあるから病気のような症状が出る→心因性」という安易な結論で無理矢理納得させようとしているように感じる。
さらに、ここでも書かれているように「心因=仮病」ではないのだよ。本気で心因性だと思うのなら、心因性の病気としてその後のフォローアップをちゃんとすべきなのだ。
と同時に、私たち患者の側も、「権威」だとか「本を書いてる」だとか「TVに出てる」とかに惑わされずに、自分の感覚を信じて病院や医師を選びたいものだね。
こんな感じで、色々なことを考えさせられる良書でありました。
興味を持った方はぜひ図書館で。←値段が高いから。