とてつもない。
思いがけず 光るのは 海の幽霊
(米津玄師『海の幽霊』より)
不思議な感想の多い映画だった。変性意識がどうとか。
フェイスブックのタイムラインに並ぶそれを眺めながら「観ないまま終わるかな」と思っていたのだけれど、あと数日で上映が終わるという頃、主題歌の『海の幽霊』が脳内でヘビロテしたので、昨日、観に行ってきた。
見逃さなくてよかった。
そして、あの感想の不思議さの訳が分かった。
それは書きようがない、描きようがないものを描いている映画だったからだ。
いまもって、どんなストーリーだったかを説明することは難しい。
一応、筋書きはあったけれど、ほとんど意識に上らなかった。
それよりも、圧倒的な映像と体験があった。
それを観ながら、僕は「ああ、海も空も星もなんにも見ないで暮らしていたな」と気づかされた。
日常にかまけていると、空をみることを忘れたりする。
ある大きさの、焦点の合った範囲だけを見続けたせいで、眼筋だけでなく意識まで硬くなって、見える範囲の外に世界がないと思い込む。
この映画は、そんな意識や視界をぐーんとストレッチさせてくれた。
映画館を出てしばらく、絶句してスマホもなにも見られなかった。
スタバでパソコンを開いて、感想を書こうかと思ったが、そんなふうに言葉にするのも面倒だった。
よかった。すごく。
後半、宇宙や生命誕生にまで至るとてつもないシーンは、『エヴァ』と『千と千尋』と『君の名は』を混ぜたみたいに思えたけれど、いま思えば、あの圧倒的な感じは『AKIRA』によく似ている。
日本のアニメーションって、どこまでいってしまうのだろう。
こんな表現ができる人たちが次々に出てくるなんて。
この曲も YouTube で最初に聴いたときには「?」という感じだったけれど、映画館で聴いて「なるほど!」と思った。
いつもの小さな窓から見ているだけでは、見逃してしまう体験がある。
この映画と主題歌は、そういうものだった。
うちの近くは明日までらしいけれど、大きなスクリーンの、音響のいい映画館で観ることを強くお勧めします。
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