勉強ってなんのためにあるのか_

勉強って、なんのためにあるのか。(いまのところのまとめ)

二年間、児童館で中高生の勉強をサポートする仕事をしてきた。
その中で、大きく考えが変わったことがある。

はたして、勉強はした方がいいのか、ということについてだ。

「勉強なんてしなくてもいいのでは?」

最初は、机に向かう中高生が明らかに元気をなくしているのを見て、強くそう感じた。

自分自身、学生時代にかなり勉強をしたが、もっと他のことをすればよかったという後悔もあったからだ。

そうして大学生サポーターに運営をまかせると、彼らも同じ気持ちだったので、勉強よりも交流の時間がぐっと増えた。

そのことは意図しないかたちで、受験に向けた中三生のやる気を高めた。

週二回の学習会に加えて、臨時の学習会が開かれるようになったのもそんな経緯からだ。

しかし、そんな流れの中にいながら、今度は勉強しない子どもたちの様子が気になりはじめた。

勉強を避けたまま、スマホを見たり遊びに興じたりする子どもたち。

そこには、いきいきするよりも気だるさがあった。
なんというか、レベル1でアリアハンにいたまま、冒険にいかない勇者、みたいな。

「勉強しなくていいんだろうか?」

自分の中に、以前と真逆の気持ちが芽生えていることに気づいた。

「勉強なんてしなくてもいいのでは」から「勉強しなくていいんだろうか」へ。二年のうちに変わった心境のはざまで、僕は葛藤し、その葛藤はいまも続いている。

そんな中、内田樹さんのこの記事を読んだ。

そこには、こうあった。

 幼児に要求されるのは、「自分にはまだその有用性や意味が理解できないことについても、年長者が『いいから、黙ってやれ』と告げたことについては、判断を保留して、とりあえず受け容れてみる」というマインドを身につけることである。
 これは間違いなく市民的成熟の第一歩である(第一歩にすぎないが)。
 このマインドを身につけた子どもは学校のテストで高いスコアをマークする。

 それからしばらくすると、次には「自分にはまだその有用性や意味が理解できないことについては、年長者が『いいから、黙ってやれ』と告げたことについても、『納得できなければやりません』と言い返す」力を身につける段階に達する。
 これもまた市民的成熟には不可避の経路である。

(略)

 受容と反発はその順番で繰り返される。
 何度も何度も繰り返される。
 それは昆虫が脱皮するのと同じである。

 だから、就学中にはテストの点数が「上がったり、下がったり」することこそが子どもが健全に成熟していることの指標なのである。

なんと「どちらも」だと言う。
勉強という「意味はわからないけれど、やれと言われること」を受容して、反発して、そうして人は成熟していく。

樹さんは、教育の目的をこう語る。

 教育の本義は「子どもたちを共生と協働を果たしうるだけの市民的成熟に導くこと」である。それ以外に、ない。
 教育の本義は格付けや選別や排除や標準化ではない。子どもたちを生き延びさせることであり、同時に共同体を生き延びさせることである。

これは『幸せになる勇気』の中で、アドラー心理学が教育の目標を「自立」においているのと同義だと思う。

その成熟や自立のためには「どっちか」ではなく、相反することが「どっちも」必要なのだ。勉強しないのでもなく、しっぱなしでもなく、したりしなかったりという受容と反発を見守ること。

子どものそばにいる大人に必要なのは、その「どっちも」を見守るまなざしなのかもしれない。たとえば、エーリッヒ・フロムが著書『愛するということ』において述べたようなまなざしが。

 母親的良心と父親的良心はたがいに矛盾するように見えるが、成熟した人間はその両方によって人を愛する。
 父親的良心だけを保持しようとしたら、残酷で非人間的な人物になってしまうだろう。母親的良心だけを保持しようとしたら、判断力を失い、自分の発達も他人の発達も妨げるようになるだろう。

ただ、もう一つ気になることがある。

この話を人に対して「こうだよ」と言えるには、自分の判断を信頼していなくてはならない。そして、その信頼は、判断を積み重ねた結果としての人生を、肯定していないと生まれない。

でも、二年間でこれだけ変わったのだ。
このあと、どう変わるかも分からない。

アリアハンにいるように見える勇者は、僕に見えないところでレベル上げをしているかもしれない。あるいは、そもそもレベル上げなんてしなくてもいいのかもしれない。

そう考えると、結局はこのあとも検証が必要で、だからこそ、このブログのタイトルは(いまのところのまとめ)にならざるを得ないのだ。

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