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手作りプロテインケーキ

"たべること" 

これは四六時中 わたしの脳内を占領する話題の1つだ。
”食” の時間は私に幸せを運んでくれる。
朝ごはんのとき、すでに昼ご飯のことを考えている。それくらい私の頭の中は食でいっぱいだ。寝るよりもごはん、どんなに忙しくてもごはん、なにをやるにもまずごはんである。

そんなわたしが一昨年に出会った彼は、
体脂肪率を10%以下にしようと
身体をしぼることに夢中だった。炭水化物を減らし、たんぱく質を多くとるという記事を目にしてから
炊飯器を知人にゆずり、
朝はプロテインケーキとコーヒーのみ、昼は野菜と肉と一握りの米、夜も炭水化物は一切なし、お菓子などはもってのほか。そんな食生活を送っていた。 

お米。

わたしにとって炊きたてのごはんは何物にも代えがたい特別な存在なのに。

最初は え、炊飯器ない?!お米食べない?うそでしょーーー!! 彼の食生活にショックを受けた。かなりストイックな生活を送っていた彼とは、食において一生 幸せ を分かち合うことはできないかもしれないと、諦めていたとき、あのプロテインケーキに出会った。

「毎朝プロテインケーキを作ってる」
プロテインケーキ、、、(通称 プロケ)初めて彼のその言葉を耳にしたときわたしは興味深々で身を乗り出していた。プロテインはほぼ毎日飲んでいたが、味が好きではなかった。筋肉の為と割りきり、味覚スイッチはオフ状態。美味しさとは無縁なのだと思っていた。そんなわたしの前に突然現れたプロテインケーキ。しかも彼が一年もかけて編み出したレシピだという。

食べたい!
わたしも作りたい!

その彼の考案レシピ、聞いてもいいものなのかと思いつつも恐る恐るきいてみた。そしたらあっさりと教えてくれた。作り方動画まで丁寧に。ありがたい。わたしも早速家で作ってみる。

プロテイン、きなこ、黒すりごま、オリーブオイル、卵、オリゴ糖。

材料はこれだけだ。

きな粉と黒すりごまはうちにはない。とりあえず、うちにある材料でやってみようと代わりにカレー粉を代用。これは甘い味のケーキだから、ケークサレのように惣菜ケーキ風にもなるのではないかという考えだ。タッパーでよくかきまぜ、レンジでチン。時間は忘れたのでとりあえず3分。しばらくするとレンジからただならぬカレーの匂い。これはそろそろかもしれない。とりだすと、白と茶色のマーブル模様。混ぜ方が甘かったかと反省しつつも、香るカレーの匂いには思わず顔がほころぶ。カレーは王道である。これ美味しければ、彼にアレンジレシピを紹介できる。「さすがだね〜こんなアレンジも効くんだね」と彼の褒め言葉を想像してほくそ笑みながら、ケーキにフォークをさす。

「むにゅっ。??!」
切れない。この感触。まるで激落ちくんのスポンジみたいだ。
これがあのプロテインケーキいわゆるプロケなのか。
はじめてのプロケに内心興奮しつつ
やっとの思いできれた一切れを口に運ぶ。

口に入れた途端、広がるあの味。うまれてきてはじめて味わったあの味は、一生味わえないだろう絶望的な味だった。

まずい . . . . . . . !!!まず過ぎる! あまりのまずさに言葉も出ない。

 ほんと美味しそうに食べるよね~ この言葉を言われるのが嬉しくて、わたしの食への愛が日に日に増していったことは間違いない。それなのに。プロテイン。これをもはやおいしく食べることは不可能なのだろうか。あんなにも興味をそそられたプロケへの関心が一気に薄れていった。
そのことを彼に報告すると、美味しく作るには、材料、分量、レンチン時間など大切な要素がいくつかあるのだと教わった。材料を入れて混ぜ、チンするだけの簡単レシピだと思っていたが、美味しく作るにはコツがあったらしい。

カレー粉はだめだったかあ、なんとなくで作ったからなぁ。

改善の余地はいろいろありそうだとは思いながらも、あの味は二度と味わいたくないと思うと、作る気になれなかった。

そう思った後日、彼が 作ったから食べてみる? とアルミホイルに大事に包んだプロテインケーキを差し出してくれた。しかも2種類。プレーン味とコーヒー味。両方とも黒すりごまが入っているから、見た目は粒が多めの黒ゴマアイス。 「ありがとう、食べてみたい!」 差し出されたプロケをそのまま口に運ぶ。

口に入れた途端、黒ゴマの香りが口の中に広がった。

美味しい!!!! 黒ゴマの粒も程よく感じられる舌ざわり。オリゴ糖で甘みも感じられ、あのときの もさっと感 もない。食感はバームクーヘンのようでもある。これはかなり好みだ。目の前の彼とプロテインケーキに、あっという間に心を持っていかれる気がした。もう1つコーヒー味もいただく。程よく感じるコーヒーの苦み。こちらは甘さ控えめな大人の味だ。美味しい。どちらもおいしい。これを本当に一人で作ったの? 私は驚きと感嘆の目で彼を見つめた。

そしてこのプロケを自分でも作りたいと再び試作を開始。材料を買いそろえ、教わった分量、時間を守り料理する。しかし、なかなかあの時の感動の味には近づけない。あの味がもう一度食べたい。

彼に会うと「プロケがなかなかうまく作れないんだ。あのプロケまたつくってー」と思わず彼にお願いしていた。彼に会いたいのか、プロケが食べたいのか、、、もはや両方である。

今度は作るところから見させてもらう。一動作も見逃さないつもりで凝視した。今のところ私が作る過程と違うところは見あたらない。しかも、多分これくらいだろうと もはや目分量で作っている、すごい、さすが考案者は違う。そんなことを考えていたら、あっという間にレンチンの段階まできた。「最初は1分くらいかな」とレンジにかけ、取り出すと、まだ中が少しとろっとしていた。

「今日は半なまでいこうか」

「半なま???」

なんとこのプロケ、半なまでも食べれるらしい、確かに材料的にはすべて生で食べられるものだ。そんな食べ方もあったのか、、焼けた部分をフォークにとり、チーズフォンデュの要領で半なまの生地につけていただく。

おいしい、、、、!!!!!これまたおいしい!もさっと感がない。そして軽い。知らないうちにどんどん口に運んでいた。気づいたらあっという間に完食していた。これなら食べても罪悪感がない。恐るべしプロテインケーキ。

それからはこのプロケが私たちの朝食に欠かせない存在となった。ふたりを近づけたキューピットケーキと呼んでもいいのかもしれない。それからというもの、ほぼ毎日食べていた。コーヒー、シナモン、プレーン、レーズン、ココア。バリエーションが豊富で飽きない。

そんなプロケだが、ある日を境にぱったりと食べなくなった。理由はただ一つ。彼が体を絞るのをやめ、炭水化物を食べるようになったから。朝の定番メニューだったプロケはいつの間にかパンにとって替わり、2人の間であんなにも愛されたプロケは突然姿を消した。今思えばさみしい。こんなにも簡単に忘れ去られるものなのだろうか。

それが、先日たまたま見ていたインスタグラムにプロテインケーキのレシピが出てきたのだ。レシピはほぼ同じ。再び作ってみる。1年ぶりだ。懐かしい。プロケを食べると出会った頃の記憶もよみがえる。

「こうやってたまに作るのもいいかもね」二人でそんな話をしながら、思い出話に花を咲かす。そして今日も朝食にパンを食べる。


プロテインケーキ誕生秘話はこちら。


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