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オレはお腹がすいた
どのくらい経ったのだろうか。いや、オレには時間の経過が問題なんじゃない。こいつがいつことを始めるのか、それにしか関心がない。
オレは今、1日に3度決まった時間に飯を出す皿野郎の前に座り、瞬きもせずに見つめている。もうすぐ変な声を出して飯を生むはずだ。
しかし、それにしてもお腹がすいた。これ以上腹が減ってしまうのは困るので、こうしてなるべく動かずに飯が出てくるのを待つのだ。
チラリとあのデカイのを見るとオレに背中を向けている。
「ニャー!ニャーニャ〜!」(おい!コラ!そこのデカイの!)
……。
くっそ!無視しやがる。あのデカイのはいつもそうだ。声をかけたくらいじゃ動かねえ。奥の手を使うしかないか。
「にゃあ〜ん♡」
体を擦り寄せてオレのカワイさ全力アピールだ!
デカイの:「コジロウもうすぐ出るよー。」
だから、出るよーじゃなくて、今すぐ出せって言っているんだ。
何故オレが待たなくちゃいけないんだよ!
こいつはいつもオレのことをコジロウとかデブロウとか呼んでいるようだが、オレはそんなへっぽこな名前じゃない。
オレの名前は「カシュー・マルブレイス・ドーリー」だ!1回くらい本当の名前で呼べよ!
しかし、こいつらの姿はほんとみっともない。体のほとんどがハゲツル。しかも尻尾がないしヒゲもない。そんな恥ずかしい姿でよく生きていけるよ。前世でよほどひどい行いをしてきたのだろうな。
しかもごちゃごちゃ動きすぎていて落ち着きがない。用がないなら寝てればいいのに、オレの昼寝をいつも邪魔しやがる。全く、低脳の極みだ。
このデカイのは間抜けだ。よく台所のドアを閉め忘れる。抜け目がないオレはそういう時静かに台所に入り、流しにあるごみ袋の中や棚にあるだしパックを味見する。音を出すとデカイのに見つかるからあくまでこっそりとだ。デカイのにさえ見つからなければ、いつもとは一味違うごちそうにありつける。
先日は1階の階段のそばにある倉庫に忍び込んだ。デカイのが間抜けさを発揮してドアがきちんとしまっていなかったから、すかさずオレは中に入った。
ごちゃごちゃとした狭い部屋だったが、何かうまそうな臭いがする。鼻を利かして棚の上に上るとそこは楽園だった。飯が入った袋がいくつもあった。オレはかじって袋を破り、気のすむまで食べた。
デカイのが気が付いて部屋に入ってきて、何かワーワー騒いでいたっけな。でもそのあとドアに鍵がついて勝手に入れなくなってしまった。チェッ!余計な知恵をつけやがって。
(部屋の片隅でガーというモーター音が聞こえる)
キタキタ!(大急ぎで自動給餌器のところへ。)
♪カリカリカリカリ
オッシャーッ!食べ終わるのに1分12秒。今日は新記録だ!てか、量が少なすぎるんだよ。これじゃ食べた気がしない。この皿野郎はケチで頭が悪い。
おっ!デカイのが動いた。
「ニャーニャーニャー!」(飯が足りないんだよ!もっと出しやがれ!)
オレは知っているんだ。このカリカリの後に、パック入りのとろっとした食感のいい旨いのがいつも出てくる。オレはアレをとても楽しみにしている。デカイのがもたもたするから、オレはいつも喝を入れてやるんだ。
「ニャニャーニャニャー!ニャニャニャー!」
おっ!これだよ〜.♪このトロッとしたやつがうまいんだ。でも味わうなんて悠長なことはしない。早く食べればまた何か出てくるかもしれないからな。
♪ガツガツガツガツ…… ぺろり
はぁー。少し落ち着いた。(日当たりのいい出窓に行く。そして毛繕いを始める。)
待っている時間はとてつもなく長いが食べるのは一瞬だ。オレはこの一瞬の幸せのために生まれてきたんだろうなぁ。できればもう食べられないっていうくらい、毎日飯にありつけるといいんだがなぁ。
……。
なんだか、眠くなってきた。猫は寝るのが仕事だ。オレはここぞというときのために常に体力を温存している。
少し寝るか……。
……。
……ん?
俺はどのくらい寝ていたのだろう。
そろそろ……お腹がすいた。 <了>
※創作課題「おなかがすいた」で書きました。
※トップ画像は飼い猫の顔のアップです。この話のモデルです。
茶トラ白で、大きな目でこちらを見つめています。
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