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【大会レポ】Ultra-Trail Mt.Fuji(UTMF)2022

2012年、世界最高峰のトレイルランニングレースの一つUTMBのような大会を目指しプロトレイルランナーの鏑木さんを中心に富士山を取り囲む山々を巡り富士山を1周するレースが日本に誕生しました。

色々とあり、11回目のレースから大会名にUTMFが使えなくなりショートのKAIに対してロングのFUJIというカテゴリー名になりました。
そして12回目の開催となる2024年からMt.FUJI100とレース名として新たなスタートを迎えます。

私は最後のUTMFと名乗った2022年の10回目の大会を走りました。




UTMFを目指すキッカケ

とあるイベントで裾野市の職員の方にマラソンをやっていると話したときに、もの凄い目を輝かせて「UTMFに参加されたりするんですか?」と聞いてきたことが忘れられなかったからです。

かつて裾野市もコースになっていた時代に裾野市職員がボランティアで入っていたらしく、とにかく感動したとのこと。

UTMFは少しだけTVで見掛けて、トイレが無いから携帯トイレで用を足しながら2日間も走る過酷なマラソンだという認識しかなく、自分とは無縁な世界と思っていました。

しかし、気がつけば自分もサハラマラソンという過酷なレースを走ていました。
富士山の麓で生まれ育ったし、あんなに目を輝かせて感動するレースだというなら出てみたいと目指すことになります。

当時はUTMFにエントリーするためにITRAポイントが3レース合計12ポイント必要でした。

2018年のサハラマラソンを完走するとITRAポイントが6も付くのを知らなかったので嬉しい誤差で、一気にUTMFにチャレンジする気持ちが高まります。

静岡県の伊豆を走るITJ(Izu Trail Journey)に参加したかったので参加資格(当時は30km以上の一定の条件を満たすレース経験が必要だった)する為に、2018年7月の北丹沢12時間耐久レースにエントリーしていました。
ITJ2018のエントリー締切が6月なので2019年にエントリーしようと思いましたが、ダメ元でサハラマラソンの完走実績を使い抽選に当選しました。

北丹沢12時間耐久レースでITRAポイント3、ITJで ITRAポイント4と2018年中に12ポイントを獲得できてしまいました。

そして、2020年のUTMFにエントリーし当選とトントン拍子で走れることになりましたが、2020年、2021年は世界的な感染症の流行で中止され参加資格は持ち越しで2022年にようやく走れることになります。

UTMFの魅力

毎年コースが変わり、2018年からは富士山周辺の山麓を一周すらしなくなってしまいました。
またエントリー費が高騰し、荷物預かりやサポーターなどオプションにしたりと参加者の負担が大きくなっています。
それ故に不満もSNSでチラホラ見掛けます。

元々、UTMBを目指した大会ではありますが、正直なところ海外の大会に比べて盛り上がりに欠けます。これは、日本でウルトラディスタンスやトレイルランニングがまだまだマイナー競技だからでしょう。静岡県民なので富士山こどもの国スタートなのは少し嬉しいものの、応援に来れない区間なのは残念なところです。

トレランの競技特性上、レースのライブ映像も見れないのもあるかも知れません。UTMBのフォーマットを使えば今までよりかはライブ感を感じられると思っていたのですが、2024年からUTMBとは別の道へ進むことを決断されました。
今後、どうなることでしょうか。

結局、魅力って何?てことなんですが、トレイル率が云々など色々と言われますが富士山の絶景スポットを巡るコースはとても魅力的であることもそうですし、大会のコンセプトや主催者の思いに共感できるかというのも大きいと思います。

私は鏑木さんの強い思いに何となくでも共感して、ボランティアやランナーとして大会を盛り上げたいと思うんです。
私が富士山の麓で生まれたことや六花さんなど多くのボランティアの方がトレイルの修復や整備、トレイルランニングの啓蒙活動を熱心にされているのを見ているからかも知れません。

海外のレースに比べて盛り上がりに欠けると書きましたが、日本国内のレースの中ではお祭り感はあります。しっかりと目標に向けて大会は歩みを進めていると思います。

海外のレースは長い歴史があり地域を挙げてのお祭りになっています。
Mt.FUJI100がそんなレースになることを願っています。

トレーニング

3%理論

2018年の6月。トレイルランニングのトレーニングを何も知らない私はたまたま鏑木さん著書の発売記念イベントが湘南の本屋であることを知ります。
事前登録制で締め切りは過ぎてましたが、書籍の購入とトレランコーナーが設置されてトレイルバターという中々手に入る店舗が少なかった補給食が手に入るということでとりあえず向買うことにしました。
そして、2席くらい空きがあって当日の書籍購入者も受け付けてくれました。

より遠くのフィールドまで楽しむ為にトレーニングをするんだって言う考えに感銘を受けます。

山に入るのはあまり気が引けてトレランはレースで管理されてるもののみ楽しもうと思っていましたが、このときにトレイルランナーのマナーに関する冊子も頂き、何となくトレランが身近になってきて近所の公園や鎌倉トレイルに徐々に出掛けるようになりました。

鏑木メソッドによって私も今では伊豆半島を稲取から沼津まで1日で楽しめるまでになりました。


レース経験

UTMFをはじめとするロングディスタンスのトレランレースは参加資格としてITRAポイントが必要なものやミドルディスタンスのトレランレースの完走経験などが問われます。

UTMFではITRAポイントを獲得するためにITRAポイントが獲得できるある程度の距離のレースに出ることにより段階的に体力やトレイルを走る知識を身につけるようになっています。

実際、私も段階的にレースで走れる距離を延ばし知識を学んできました。

初めて参加したのは忍野高原トレイル21kmでした。会場についたら皆んなリュックを背負って後ろから管みたいなの出していてビビりました。
私は補給食はおろか水分も持たず、シューズはフルマラソンを走ったときに使ったものでした。

クロカンの延長で考えていたのでレース中は驚く事ばかり。足が攣るのも初体験で二度と走るものかと思ったものです。

その後、道志村トレイルレース41kmに参加してDNFになりフルマラソンとは違うトレーニングが必要だと洗礼を受けました。その後は30km、43km、70kmと完走できるようになります。
70kmレースで初めて必携品が細かくあることを知り気温が0度になるレースなのでウェアリングなど勉強しました。

現在では装備品も性能が上がり、トレイルランニングを楽しむ方も多くなり、初心者向けのイベントも多くはじめやすい状況にはなっていると思います。

ただ、世の中には何となくレースを完走してITRAポイントを獲得してしまう凄い方も居るようで、ロングディスタンスのトレランレースには様々なルールがありますが全く知らないでレースに参加しようという方も居ます。

2019年のUTMFの受付ボランティアをしましたが、必携品の意味を知らずに適当に会場に来られる方が多く驚きました。

私はUTMFである程度納得の行く結果が欲しかったので、2019年に彩の国100Kを経てグランドレイドレユニオンで100マイル完走、UTMFで勝負という流れの予定でした。
彩の国を仕事でDNSしてしまい70km経験のみで100マイル挑戦になりました。
レユニオンは制限時間が63時間と長いので耐えに耐えて57時間で完走はしましたが長い距離にならばなるほど走ることよりも大事なことがあり経験不足はレース結果に直結するのを感じます。

試走

試走に行くメリットは、実際のコースを走ることによって完走できるかどうかの確認を含め途方もない長い距離では知っているコースに出ると安心感も得られる効果もあります。トップランナーなら猛スピードで走り抜けるのでサーフェスの確認や勝負どころの確認などあるでしょう。

コース形状の予測などは等高線を見たりして想定出来ます。

試走に行けない場合、私は高低差のコースマップから分割して似ているコースを近場で見つけて走りにいきますが、等高線を見ると大分変ると思います。スタートから富士宮、本栖湖から精進湖など試走に行けない区間やタイムを稼ぐ区間を安易に考えてしまい失敗しました。

ウルトラディスタンスは長時間走るが故にメンタル面の影響も大きいです。想定以上がレースであると心構えがないと疲れたところに階段があってメンタルをやられたりします:-p

なお、大会では私有地や管理された林道、周辺地域の協力で通れるコースがあります。
普段は通れない箇所、周辺地域に注意しないとならない箇所などなど様々あります。
UTMF(現Mt.FUJI100)も同様で試走できるコースが決まっており、注意事項もあります。大会側のサイトに公開されますので必ず確認してください。

また、試走する方はレースが近づいた3月あたりから考えるランナーが多いと思います。積雪の可能性があるため、雪山の装備の準備も必要になります。2019年は4月でも雪が降り、レースも雨から次第に雪に変わりショートコースで終了となり殆どのランナーは100マイルではなく100km程度のレースとなりました。

レース

レース前


レース3日前にギックリ腰になりました。
DNSが過ぎりましたが、ありとあらゆる対策を駆使して何とか曲がった腰も見た感じ真っ直ぐになり走っても痛みがなくなりました。

前日にコース変更で天子山地が迂回路に変更になったのもプラス材料でした。

とにかく、UTMFの舞台で鏑木さんと走りたいという思いのみで参加しました。

テーピングガチガチにして、試走できない粟倉パートの経験と麓まで行ければ満足、最高で富士急ハイランドまで行ければリタイアも楽だなとスタート地点に立ちます。

完走できるなら24時間以内でのゴールを目指して突き進みます。

スタートから富士宮


鏑木さんと同じウェーブだったので一緒のスタートかと思いきや鏑木さんは全てのスタートを見送ってからの最後尾スタートでした。

粟倉まで下り基調でオーバーペースにならないように気をつけていましたが、気持ちは鏑木さんにどこまで逃げられるかチャレンジになってました。

粟倉付近で渋滞にハマるのは想定外で、オーバーペースになる区間なのでスムーズだと思っていたので慌てます。
こういう時にトップランナーはどうするかわからず、広めのところに出るタイミングで声を掛けて抜かさせて貰ってました。
ここで無理せずに渋滞に身を任せていれば良かったです。かなり、心拍数が上がってました。

富士宮から麓


天子山地の迂回路で田貫湖に出て猪之頭に入ったところでトイレに寄ってのんびりしてたら鏑木さんに抜かれました。既に夜になって真っ暗だったので危なく見逃すところでした。無理して追いかけるのを止めようかと思ったんですが1人後ろに喰らいつくランナーがいて、ここで諦めるとズルズルと行きそうだったのと何より鏑木さんと走ることを目標にしていたので追い掛けます。

麓まで鏑木さんの後ろを走って勉強させてもらいます。
麓に付くと鏑木さんは名物の焼きそばを手に取って、あっという間に食べてエイドを後にします。
私は座って焼きそば食べようとか場所を探してましたw

麓から本栖湖

鏑木さんに置いていかれ、目標はとにかく行けるところまで頑張るに変わります。
麓でたまたま知り合いに会い少し話をしてエイドを後にします。
ヘッドライトと険しい所ではハンドライトのダブルで進んでいたのですが、麓のエイドから離れて暗闇がキツくなったりハンドライトも付けようと思ったところで落としたことに気が付きます。
慌てて戻ると焼きそばを食べたいたところに忘れていました。

ここで力尽きた気もします。

試走のときふもとっぱらから端足峠までで藪漕ぎコースにばかり行って通らなかったところにまさかの階段があり登り切ったところで全身が攣り脇に転げます。
メンタルもあったかなぁと思います。

暗闇で前のランナーについて行って端足峠の手前で登るコースを間違えるし、峠を登り終えて本栖湖への下りの細い下りで足を踏み外しそうになって踏ん張ると全身が攣って滑落しそうになります。

本栖湖から精進湖

本栖湖エイドでしばらく休むことにしますが、休むなら麓が良かったですね。
身延まんじゅうしかエイドにはなく湖畔のせいか寒さも厳しい。お湯をサービスで提供してくれましたが、ボランティアの方に本来提供予定のないものを貰うのも気が引けて遠慮してしまいました。2杯くらい遠慮なく貰ってスープの素を持っていたので飲めば良かったです。

本栖湖から中ノ倉峠まで一回も行ったことがなく、どちらかと言うと獲得標高のない区間なので油断していました。休みながら登れるだろうと思いきや階段にメンタルをやられます。
また、中ノ倉峠からは1回だけ走ったことがありましたが夜ということもあり余計に登りが長く感じてしまいました。
また、下貴重な所では先にどうぞと譲ってくれたを断りゆっくり行って休もうと思ったのですが人のペースに合わせる方がキツかったかも知れません。

精進湖パノラマ台に着いたときに月が富士山に近づき幻想的でした。
ここからキツい降りなので足の攣りが治るまで月と富士山を眺めて癒されます。

精進湖から富士急ハイランド

精進湖エイドではお粥で冷えた体を温めます。
胃腸の調子が悪くなるロングトレイルで塩おにぎりはとても食べやすくありがたい補給食ですがここでしか貰えないのを直前で知って(忍野か山中湖でも貰えるというのを何処かで見た気がして勘違いしていました)ここぞというときように大事にザックにしまいます。

紅葉台のトレイルに入り走らないと行けない区間ですが足が動きません。何とかたどり着いた足和田山で朝焼けの富士山を眺め、貴重な塩むすびを食べて回復を図ります。
あとは緩めの下りと元気が出ます。
階段の下りを勢いよく下っていると道を譲ってくれたランナーがで知り合いでした。
ここは抜かさず一緒に会はしながら疲労を忘れる作戦で進みます。

富士急ハイランドでは1時間以上リタイアするか悩みながらのんびりとします。
エイドに補給食が菓子パンしかなく、ドロップバックエイドなので殆どのランナーが持参したカップ麺を食べてます。
私も迷ったんですけど、スタート地点に向かう途中でコンビニで念のためとピザパンを買ってドロップバックにおいたので少しマシでした。
しかし、カップ麺でガッツリ補給したほうが良かったと思います。

腰のテーピングも剥がれかけて、このあとダメージがもっと出てくるかもという不安もあり、リタイアしようかなと思ったら、別のランナーにボランティアの方が「リタイアなんてさせないよ、あとは歩き倒しても完走できるんだから頑張ろう」と言っているのが聞こえました。
正直、ウザって思いましたw
でもエイドをでる決心が付きます。

富士急ハイランドから忍野

エイドを出たところで、ちょうど立花さんがエイドに移動して来てグータッチ。元気が出ます。

なんか抜かれるのも応援の方々に歩いてるのが見られるのが嫌でロードは極力走るのですが、腰のテーピングが弱まって臀部の支えが無くなり変な歩様になっていたのでしょう。徐々に股関節の動きに痛みが出てきて、烏帽子山の手前で歩いたり止まったりで全く前に進みません。
忍野への下りは足を着くと足裏に痛み。

走らないと行けない平坦な忍野エイドまでも歩いたり止まったり。
何となく、同じウェーブスタートの人に抜かれたらリタイアしようと思っていたら烏帽子山で抜かれました。

二十曲エイドではリタイアできないので、忍野エイドか山中湖エイドでリタイアを決めないと行けません。

山中湖エイドに他のランナーのサポーターをしている知り合いが待っていてくれたのと、山中湖エイドにはテーピングサービスがあります。走れないまでも歩けるようになるかも知れません。
しかし、なんか自分の装備以外の助けを貰うのも私の中では微妙でした。
行くか迷いましたが、「リタイアバス、出まーす!」という案内に「待って、私も乗ります〜」とリタイアを決めました。

とりあえず、トレランでは下山できないような無理はしては行けません。二十曲から杓子を越えられないとならば忍野でリタイアも山中湖でリタイアも変わらんです。

ゴールからはサポーターの合間に友人が駆けつけてくれて、こどもの国の駐車場まで送ってくれました。

UTMFではスタート地点までのバスを予約するか、スタート地点まで自家用車で移動しゴールからスタート地点までのバスの予約をするか2択でした。
私は、スタート地点で余裕が欲しかったので自家用車で移動にしましたが、リスクとして予定通りにゴールしないとスタート地点までのバスに乗れないという制約があります。

予約したバスには28時間でゴールしないと乗れませんでした。
リタイアを決めたのもその制約がありました。

バスの予約は数時間前なら解約できるので、速攻で解約します。

ほんとに感謝ですね。

動画

リタイア動画ですが、富士山が終始綺麗に見えるのも貴重ですし、鏑木さんとこのレースを走るのは最後かもしれないので動画を上げておきます。



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