素朴な疑問1 なんで消費税減税を訴える政治家はいないの?

最近自民党総裁選、立憲民主党代表選挙が始まり、政策論争なんかも始まるようになりました。
あまり争点になっていませんが、消費税はいま10%か8%となっていますが、不思議なことに減税を主張する政治家って見かけませんよね?
なんでだろう。ということで、今回はどうして消費税減税を訴える政治家がいない(いてもごく少数な)のか考えていきます。

・消費税は個人消費を冷え込ませる効果がある
消費税が個人消費を冷え込ませる税金であることは2014年の増税、新型コロナ騒動のせいで見えにくくくなっていますが、2019年10月の増税後の個人消費の落ち込みから明らかです。しかも回復するまでにはそれなりに時間がかかっています。
個人消費が減れば当然景気に悪影響が出ます。消費が減れば売れなくなるので企業の投資が減り、内需全体が減少することになります。
どうして個人消費を減らす効果がある消費税増税を実施するのか、一国民としてはまったく意味が分かりません。さらにわからないのは、それを財務省や経団連などの財界が訴えていることです。

・企業~輸出払い戻し税で儲かる仕組み~
まず、企業の側から考えてみましょう。日本企業は当然ですが、増税で景気が良くなるわけないんですから、基本的に増税には反対の立場です。特に自分の業界に不利な増税には大反対します。
しかし、日本の大企業は消費税の増税だけは推進の立場に立ちます。
これってよく考えるとおかしいですよね。増税なんて企業は嫌なはずです。個人消費が減る消費税増税なんて、企業の売り上げにもダメージがあるから反対するはずです。
しかし、実際にはそうなっていません。
このからくりが輸出払い戻し税(還付金)です。
ちょっと難しい仕組みですが、消費税は商品を作る製造過程に関わる企業、それを卸し、販売するすべての企業に少しずつ課税されています。
しかし、輸出するときは別です。輸出する際に日本の消費税を支払わせると、その分だけコストが高くなり海外での販売で不利になる(海外の消費者から税金が取れない)のでその分だけ還付するという理屈で導入されたのが輸出払い戻し税です。
問題は、この輸出払戻金で儲けている企業がいるということです。
ちょっと理解しづらいんですけど、計算上実際に儲けている会社があるんだから仕方がない。
 
輸出上位10社で戻し税1兆円
https://www.zenshoren.or.jp/zeikin/shouhi/061106/061106.html#:~:text=%E3%81%93%E3%81%AE%E8%AB%96%E7%90%86%E3%81%AE%E4%B8%80%E7%95%AA,%E5%AD%98%E5%9C%A8%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
 
 
仕組みはごちゃごちゃしていますが、要するに下請けに消費税をしっかり払わせたり、増税分を負担させておいて、親会社が還付金を受け取って丸儲けという構図です。
しかも、この制度の恐ろしいことは消費税の税率が上がれば上がるほど、輸出企業の親会社への還付金の金額が増えていくということです。
要するに、消費税の税率が上がれば上がるほど輸出企業の親会社の利益がなにもせずとも増えていく、これが輸出払い戻し税の恐ろしいとことです。だから企業としては消費税の税率が上がるほど楽に儲かるんです。
消費税は税金だったはずなのに、一部の企業にとっては実質利益になる。まるで魔法みたいですね。

・政治家~政治献金のために消費税増税したい~
次に政治家です。政治家は国会に議席を持っており、税制を決定する立場にあります。
消費税を増税すると一部の企業は儲かる。そして、その下請けたちはその一部の企業から仕事をもらっている立場なので逆らえない。
そのような状況で企業は当然目先の利益、還付金を増やすために消費税の増税をしようとするでしょう。消費税の増税をしても、還付金で戻ってくるとなれば政治家に献金してでもとなるのは当然の考えです。
金のある大企業は、利益を増やすために消費税の増税を政治家に求めます。それを実行してくれる政治家に対して献金をします。
政治家は選挙や事務所の維持などで金がかかるので、当然大企業からの献金が欲しい。そんな政治家たちがどのような政策を掲げるかはもうわかりますよね。
政治家たちはみな企業献金欲しさに消費税の増税を、多くの国民が求めていないにもかかわらず掲げるようになります。
これが民意と政治家の政策が乖離していると思う理由の一つでしょう。
政治家たちは企業献金というあめをぶら下げられて、誰が消費税を増税できるかを競わされているのです。だから自民党総裁選、立憲民主党代表選に出てくる人たちで消費税減税を掲げる人は吉田晴美くらい(唯一江田憲司は減税論者だったが不出馬に追い込まれて吉田が政策を引き継いだ)。せいぜい高市みたいに積極財政が関の山(口だけでしょう)。
もし消費税減税をすれば、輸出払い戻し税(還付金)が減って、企業の利益が減ることになります。そんな政治家に企業献金するはずがありません。
だから、国政政党でもれいわくらいしか消費税減税を掲げる政党がないんですね。れいわの場合、大企業からの献金を最初からあきらめて別の場所から集める戦略なんでしょう。昔山本太郎が個人で3億だか4億だか集めていたので、別の収入源があるんでしょう(知らんけど)。日本共産党も企業団体献金を受け取らない立場なので消費税増税を掲げることはありません(積極的に消費税減税を訴えるわけでもないけど)。
こうしてみると、なんで政治家が消費税増税を掲げるか見えてきますね。

・財務省~なぜ増税するのか? 増税が好きだから~
最後は財務省です。第二次安倍政権時代は経済産業省に主導権を握られていたものの、巧みな立ち回りで安倍政権の任期中に消費税を5~10%に引き上げさせることに成功しています。
なぜ財務省が消費税増税をしたいのか? 理屈はいろいろありますが、根本的には彼らが増税大好きだからです。
財務省の事務次官は東大法学部が多く、霞が関全体のトップともいえる省庁です。ここにやってくるキャリア官僚は権力が欲しいと思っている連中と言い切っていいでしょう。
政府最大の権力は徴税権です(本当は徴兵もあるけど、日本では憲法9条があるので)。財務省は徴税権を日々行使しており、より強い徴税権を行使したいと思っています。増税は彼らの権力ゲーム最大の目標であり、この省庁では増税すればするほど出世する仕組みになっているようです。
しかし、増税はほかにいくらでもあるのにどうして消費税に執着するのでしょうか?
それは増税しやすいからです。
増税でもやりやすい増税とやりづらい増税があります。
1番難しいのは新規の増税です。それまでなかった新しい税金を導入させるのは大変です。新しい税金の導入は国民、政治家から強い反発を受けて、まず成立しません。せいぜい、東日本大震災の復興特別増税を別の増税で穴埋めするくらいしかできません(最近は社会保険料に上乗せするという小技を思いついたようです)。
それに対して、比較的やりやすいのは税率の引き上げです。引き下げは財務省にとって最もやりたくない減税です。逆に、税率の引き上げは最も容易な増税手段となります。
とはいっても、所得税や法人税を引き上げることは容易ではありません。法人税引き上げを主張する政治家は間違いなく企業献金がもらえなくなります。所得税も富裕層からの反発があるだけでなく、政治家たちも所得が多い人がいます。
その逆に、消費税増税だけは推進する企業がいます。しかも、日本を代表する企業たちです。消費税増税なら政治家も企業献金がもらえます。還付金は彼らを消費税増税の味方にするための政策なんですね。
財界、政治家が味方になってくれる消費税ほど引き上げやすい税金はほかにないわけです。しかも、税率引き上げるによる税収増は1%で2兆円といわれており、膨大です。
(財務省にとって)唯一の欠点は、消費税の税率が上がるほど未払い、不払いが増加することです。
税の公平性の観点から、消費税はしっかりと全員に払ってほしいのですが、法人税と違い利益が出ていない企業にも課税されるためどうしても払えない企業が出てきます。
まあ、そんな些細なことさえ気にしなければ財務省にとって消費税ほど税率を引き上げやすい税金はありません。消費税を引き上げるためには財務省は何でもします。実際には社会保険の充実などに使われていなくても使われているというし(そもそも消費税は一般会計で、特定の目的があって科せられる税金ではない)。

まとめると、
輸出企業 →消費税を増税すると輸出払い戻し税(還付金)が増えて何もしなくても利益がお手軽に増える
政治家 →消費税増税を訴えると企業から献金がもらえる。財務省の支援を得られる。
財務省 →企業、政治家が味方なので増税しやすい! やったね!

 
このように、財界、財務省、政治家三者の利害が強力に一致しているのが消費税という特殊な税金であり、その増税は財界、財務省、政治家たちがタッグを組んで強行されます。
一般国民は完全に蚊帳の外。
唯一、輸出大企業に勤めている労働者(連合内の旧総評系の一部)だけは企業が儲かって、その分ボーナスが増えて戻ってくるくらいです。
野党第1党が連合を支持母体にしているので、政権交代したところでどうあがいても消費税増税から逃げることはできません。
それにしてもよくできた増税プログラムですね。財務省はやっぱり頭がいい! ただ、彼らが頭いいせいでこの国は失われた30年なんですけどね。
能力の悪用。本当に困ったもんです。

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