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朝井リョウ「死にがいを求めて生きているの」…死にがい、生きがい、承認欲求

こんにちは、占い師の桃生ににこです。今回は先日読了した朝井リョウさんの「死にがいを求めて生きているの」について感じたことを書いていきます。

朝井さんの本は「何者」「正欲」に続いて、3冊目です。
この「死にがいを求めて生きているの」は、伊坂幸太郎さんが主催する螺旋プロジェクトのうちの一冊です。螺旋プロジェクトは共通のテーマで複数の小説家さんたちがそれぞれの物語を書いていきます。

海族と山族と言われる人たちの争いの歴史を各時代ごとに様々な作家さんが物語を作っているのですが、朝井リョウさんは平成の時代の海族と山族の争いを書いています。

最後のあとがきによると、小説を書くにあたり平成の争いってなんだろう、と考えると…
平成って目立った争いはなく、ゆとり教育が代表するように争わないことを徹底していた時代だったのでは?

その中での争いは…多くの人の中で自分の存在をどうやって感じたらいいのか?自分って生きてる価値あるの?何が生きてる価値なの?そういう葛藤との争いなのではないか?ということで、書籍のタイトルにもあるように「死にがい」その反対の「生きがい」それらに奔走する若者たちについて描かれていて、非常に面白かったです。

ここ数年鬼滅の刃から始まって、しばらく触れてなかった漫画との繋がりが私の中で復活しました。チェンソーマンも読み、今更ながら進撃の巨人も読破して、80年生まれの私よりも少し若い世代の創作物に触れたい!と思って、朝井さんの小説を読みました。

鬼滅の刃もチェンソーマンも進撃の巨人も人が死にまくるけど、その理由が「死にがいを求めてい生きているの」を読むとわかるような気がします。
私の時代の漫画ってなんだろう…幽遊白書?ドラゴンボール?スラムダンク?その辺りだと思うけど、そこまで人は死なないし、死んでしまったとしたら、一大事でした。

争い(戦争?)はほぼない。(平成の時点では)
個人間の激しい競争はしない。
けど、注目を浴びる人、そうじゃない人はいて、何に「やったー」と思ってい生きるのか。

「生きがい」との争いが平成の争いなんだよね。
承認欲求、自己肯定感って言葉が一気に広がったのが平成。

本書の中でも出てくる「生産性」って言葉も広まって、生産性をアピールしないと社会から抹消されてしまう!っていう恐怖に怯える人たちもいる。

あえて競争に突っ込んで順位で自分の存在をアピールする。
奇を衒った主張で自分の存在をアピールする。
誰かに対する反抗心で自分の存在をアピールする。

けど、報われない…苦しい…

生きがいとの決着は「身近な人たちとの何気ない時間を愛すること」ということに落ち着くのかな。

中村一義さんの「君の声」って曲がすごく好きで、その歌詞の中に、

君の眼に映る僕を、僕は知れない。
そう、だから、君に会うのは、自分と会うみたい。

中村一義/君の声

という歌詞があるんですけど

↑この曲ですね。

この歌詞にあるように。自分以外の人の中に自分の存在を見つけられることが、争いのない世の中で自分の生きがいを見つけられることになるのだろうな、と。

小説の中に出てくる生きがい追求しまくる男の子も、誰かの中に自分を見つけて一緒に生きられたら、楽だしいいよね。って言っていました。

ただ、その子はそれがわかっていても、自分はそれに満足できない!ってなって、生きがいを追求しまくるんだけど。彼の場合、まだ若いこともあるからか、本人はその状態にそこまで辛い思いをしてない!?むしろ周りが「え、え、ちょっと待って」ってなっちゃってるだけで。

その彼の生き様に好意的な感情でない場合もあれど、目が釘付けになって魅せられてしまっている人たちもいて。

狂おしいほど生きがいを追求して、それがその後の死を誰かが連想するよううなものだったとしても、それはそれでありだと思う。

大事なのはそれぞれが自分が何かの行為をどういう意図で何を求めてやっているのか、朧げにわかっていることかなぁ、と思います。

小説を読んでいると最初の章のやりとりで「え、これって失礼じゃない?」「この人怒らないのかな?」って感じる部分があったんですけど、最後まで読むと「ああ、なるほど。それは怒らないわ」って思ったり。

小学校、中学校、高校、大学までの流れが描かれているんだけど、大学時代の葛藤はすごくリアルにわかるな〜って思ったり。
与志樹という男の子のサークル内でのゴタゴタについて書いている部分も、私が最近関わったコミュニティでも同じようなことがあったな、と思ったり。

承認欲求強めだな、と感じている人にとっては、かなり痛いところをついてくる内容なんですけど、自分の欲求がどこからきているのか?を考えるいい機会を与えてくれる小説だと思います。

ではでは!

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