[特定社労士試験]第1問(事例)小問(5)の解き方
こんにちは。ににです。(自己紹介はこちら)
今回は、第1問(事例)の小問(5)についてお話しします。
※第15回(令和元年度)~第19回(令和5年度)がすべて同じ問題構成・形式のため、その形式に沿っての解説です。今後の試験において、形式が変わる可能性があることをご承知おきください。
なお、試験全体の問題の構成は、以下の記事でご確認くださいませ。
第1問(事例)小問(5)の内容
小問(5)は以下のような設問文で出題されます。
設問文は、毎回同じです。
この設問の特徴は、「どのような内容を考えますか。」という形式であることです。
一見、何を書いても良いように思うかもしれません。でもそこは試験です。何かしらの解答(採点)の指針のようなものがあって、それに沿った解答をしなければ、点数はもらえません。
中小企業診断士の2次筆記試験で、やってはいけない解答の仕方としてきつく戒められているものに、「ポエム解答」というものがあります。
施策を問われているときに、「これは誰も思いつかないだろう。他の人と違う解答をして高得点ゲットだぜ」と考えて、作問者の意図から外れた突拍子もないことを解答をしてしまうことをいいます。
特定社労士試験においても、この小問(5)においては、ポエム解答に陥る危険性があります。
「誰も思いつかないようなウルトラCの解決策を思いついた!」と舞い上がってしまった場合ですね。
試験の採点においては、上記のとおり、何らかの指針・基準があります。
その基準は、「誰も思いつかない」ようなものではなく、「(ちゃんと勉強している人なら)誰でも思いつく」ものです。
つまり、解答の内容を考えるときは、「誰でも思いつく」普通の解答をするべきです。
書いていて不安になるくらい普通の解答が、いちばん点数をもらえる可能性が高い解答です。
さて、小問(5)に戻ります。
この問題には、制約条件がたくさんあります。
Xの代理人である、特定社会保険労務士として
前記の「法的判断の見通し」を踏まえ
Y社側の主張事実も考慮し
という制約条件のうえで、
「本件紛争の妥当な現実的解決を図っていく」ことになります。
まず、制約条件をひとつずつ見ていきましょう。
制約条件① Xの代理人である、特定社会保険労務士として
1つ目の制約条件は、「Xの代理人として」かつ「特定社会保険労務士として」です。
特定社労士に限らない話ですが、社労士は「公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない。」とされていますよね。社会保険労務士法第1条の2です。
よって、法の下に公正な立場に立つこと、これが前提となります。
とはいえ、もう一つの「Xの代理人として」もあります。公正な立場は守りつつ、その中で最大限依頼人の利益が大きくなるように行動しなければなりません。
ということで、この条件により、基本的にはXが望む方向で(かつ、公正な法的判断をゆがめない範囲で)解決案を考えることになります。
Xが望む方向については、Xの言い分の最終段落に書いてあることが多いです。
令和5年度第19回では、
という記述がありました。
なので、方向性としてはXが復職できるような方向が基本線となります。
制約条件② 前記の「法的判断の見通し」を踏まえ
「前記」とは、小問(4)のことです。そして小問(4)では小問(2)・(3)の内容を踏まえた解答をするので、結局は小問(2)~(5)まで、ひとつながりの一貫した内容となります。
ここまでで、小問(2)~(4)の要素・解答骨子を考えてきているので、その流れに沿って小問(5)を考えましょう。
あるいは、小問(5)を考えることで、それに合わせて小問(2)~(4)の解答を調整する必要があるかもしれません。
いずれにしても、内容につながりを持たせて考えることが大切です。
制約条件③ Y社側の主張事実も考慮し
この制約条件により、ただX側の主張だけをすれば良いというわけではない、ということがわかります。
具体的には、「Xはこう主張しているものの、Y社のこういう主張にも一理あるから」とか、「Y社はこう主張するが、○○という規範によりそれは認められないから」のような形で、Y社の主張も踏まえていることを表現していくことになります。
現実的解決案
上記制約条件を踏まえて、「現実的解決案」を考えます。
ここの「現実的」というのも制約条件です。
意味合いとしては、「相手(Y社)が主張を譲らないときの次善の策」といったところでしょうか。
実際のあっせんの場でも、そういったことは十分に考えられます。そのときに、法的判断を踏まえつつ、自身の依頼人が納得できるような次善の策を考えるという実践的な設問としたいという意図だと思われます。
ここで、試験の合格発表後に公表される「出題の趣旨」を見てみます。
(過去問を勉強する際には「出題の趣旨」を使う方法がとても有効です。勉強方法の詳細は、後日別記事でご紹介します。)
とあります。
この中の、「Y社がXの復職要求に応じない場合には」以下が、まさに「現実的解決案」を求めている部分です。
具体的な考え方
では、具体的に解答文をどのように作ればよいでしょうか。
何を書くか
書く内容としては、
です。
「何を書くか」を決めるには、上で挙げた制約条件を満たすように考えていくと良いです。
まずは、Xが求めていることを確認します。(制約条件① Xの代理人である、特定社会保険労務士として)
そしてそこに小問(4)の法的判断の見通しを合わせて考える(制約条件② 前記の「法的判断の見通し」を踏まえ)と、解答の方針が定まります。
つまり、法的判断の見通しがX優勢の場合は、Xの希望を最大限叶える方向かつY社にも配慮した内容、Y社優勢の場合は、Y社の主張を受け入れつつできる限り譲歩してもらうことを狙う、ということになります。
いずれにしても、どちらか100%ということにはせず、優勢ではない側の主張もある程度取り入れることとなります。(制約条件③ Y社側の主張事実も考慮し)
そして、現実的解決案を考えるうえで大切なポイントがあります。
この試験は、Xからあっせんの申請があったものとして構成されています。ということは、あっせんという制度を利用することのメリットを結論にも反映させるべきです。
あっせんのメリットについては、中央発信講義で詳しく勉強するところですが、ここで意識すべきものは「迅速性」です。
手続き自体は1日で終わることが多いですし、申請から終了まででも2か月以内で終了するということが特長です。
参考:厚生労働省|労働局あっせん、労働審判及び裁判上の和解における雇用紛争事案の比較分析(概要)
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000088762.pdf
というわけで、あっせんのメリットを活かすべく、迅速な解決に向かうような解決案(および書き方)を意識するのが良いでしょう。
どう書くか
小問(5)も、小問(4)と同じく、自分なりの「型」を作っていくことをおすすめします。
「型」は人それぞれなのでぜひ自分が使いやすいものを見つけていってほしいですが、私の場合、以下のような流れで書くことが多かったです。
(事実および法的判断の見通し)→(Xが求める内容を主張)→(Y社の事情に配慮)→(現実的解決案)
参考までに、実際の試験で書いた内容をご紹介します。(あまり出来がよくないので恥ずかしいですが)
全体的に改善点がたくさんありそうですが、中でも最後の「現実的解決案」のところは、少し言葉足らずだったかもと思っています。
意図としては、Xの名誉と、現実的に仕事を続けていかないと収入が途絶えてしまって生きていけないこと、紛争が長引くことによる負担、さらに、一度パワハラの烙印を押されてしまった社内での人間関係、そういったものを考えたときに、他社での勤務で食い扶持を確保して早々に終結させるのがXのためになるという考えで、上記のような結論にしました。
もう少し、そのニュアンスを出せていれば、もっと点数がもらえていたかもしれません。
なお、私が試験を受けた当時は、「金銭的解決を図る」が鉄板の結論でした。
ところが、この回の出題の趣旨では「Y社がXの復職要求に応じない場合には簡単に「金銭的解決による自己都合退職とする」といった解答では採点上の評価が低くなる。」とされています。
おそらく第20回以降も、単純に金銭的解決を図るという結論はあまり評価されないのでしょう。
それ以外で、いろんな結論を使えるように練習しておく必要があります。
まとめ
第1問(事例)小問(5)の解法を解説しました。
「考えますか」形式の設問なのでとっかかりが難しいですが、制約条件を外さないよう意識しながら、手順を定型化できるように勉強を進めていってください。
#受験
#社労士
#社会保険労務士
#特定社労士
#特定社会保険労務士
#特定社労士試験
#紛争解決手続代理業務試験
#まなび
#資格
#しごと
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?