ユリウス・カエサルの「ガリア戦記」
この数か月、塩野七生さんの「ローマ人の物語」を読んでいる。先日Ⅳまで読み終えて、現在Ⅴを読み始めている。
最初に(前に描いたことと重複するが)「ローマ人の物語」を簡単に紹介すると・・・・
「ローマ人の物語」は塩野七生さんの歴史小説。「なぜローマは普遍帝国を実現できたのか」という視点のもと、紀元前のローマ建国から西ローマ帝国の滅亡までを描いている。1992年、塩野七生さん55歳の時に、新潮社から第1巻が刊行され、以降毎年に1冊ずつ刊行され、2006年12月刊行の15作目で完結している。
当方は「ローマ人の物語Ⅰ」が刊行されて以来、毎年続編が刊行されるのを楽しみに読んだものだった。昨今、我ながら何を思ったのか、もう一度「ローマ人の物語」を読もうと思い、アマゾンで単行本を取り寄せて読み始めた。単行本では15冊、文庫で45冊だから、先は長い、適当に他の本も読みながらだから、いつ読み終えるのか見当つかないが、取り敢えず、Ⅳまで読み終えた。
「Ⅰローマは一日にして成らず」は、地方の都市国家ローマが、イタリア半島を統一するまでの約500年間を駆け足で記述している。
「Ⅱハンニバル戦記」では、紀元前264年からのローマ対カルタゴの地中海覇権争いを詳しく書いている。紀元前146年にローマは、地中海の東はギリシャ・・小アジアから、西はスペイン迄、更に北アフリカの一部も傘下に収めて属州として支配するに至った。
「Ⅲ勝者の混迷」はポンペイウスが登場して、紀元前62年に地中海全域の支配を成し遂げる。彼は政治力も軍事力も、大衆の指示も、何もかも持っていたように見えたが、実際には、ローマはまだ混迷期から抜け出していなかったらしく、ローマ史上の「偉大なる個人」にはポンペイウスではなく、別の人物がなることになる・・・・と結ばれている。
先日読み終えたのが「Ⅳユリウス・カエサル ルビコン以前」、いよいよカエサルの登場だ。
カエサルは幼年期から少年期、青年前期までは目だつ存在ではなかったが、青年後期にローマの属州スペインの属州総督で台頭し、元老院に対抗して密かにポンペイウス、クラッソスと共に三頭政治を確立する。40代に入り執政官に就任して、元老院の抵抗を押し切って次々と政治的改革を進める。
執政官任期の終了後、ガリア属州総督に就任する。三党体制を堅持してローマ支配を維持しながらの就任だった。以降、紀元前58年から紀元前51年まで、8年間にわたり、今のフランス、ドイツ、イギリスなど、ヨーロッパの中央部を転戦し、ローマの勢力範囲を大幅に拡充した。この8年間のガリア戦についてカエサル自らが「ガリア戦記」を書いており、資料としても文学作品としても、第一級の記録書・・・・だそうだ。
小林秀雄さんが、以下の如く述べている。
ジュリアス・シイザアに、「ガリア戦記」というものがあることは承知していたが、最近、近山金次氏の翻訳が出たので、初めて、この有名な戦記が通読できた。少しばかり読み進むと、もう一切を忘れ、一気呵成に読み終えた。それほど面白かった。というより、もっと正確に言うと、ただ単にロオマの軍隊が、中途で休んでくれなかったがためである。勿論、別して読後感というような小うるさい物も浮かばず、満ち足りた気持ちになった。近頃、珍しく理想的な文学鑑賞をしたわけである。・・・
古今、洋の東西を問わず、人々に激賞されている「ガリア戦記」は是非読まねばならないと、アマゾンで検索すると、小林秀雄訳があったので、直ぐポチした。それにしれも、なんと2000年あまり前に書かれた物語だ。
カエサル率いるローマ軍は、8年間、ガリアで戦い続け、ライン川を何度かわたり、ブリタニア(今の英国)にまで足を延ばし、全ての戦いを勝ち抜き、今のヨーロッパのほぼ全域をローマの傘下に収めた。
しかし、ローマの元老院を中心としたグループはカエサルの権力を排除しようと動き、ポンペイウスの抱き込みに成功して、目論見通りに進んだ。これに対し、カエサルは、軍隊を率いたままにルビコン川を渡り、武力でイタリア半島を制圧した。対するポンペイウス一派はイタリア半島から東に脱出し、ローマを大きく囲む地中海一帯を支配してカエサルに対抗する。地中海を舞台とするローマ内戦の始まりだ。
この後はカエサルが「内戦記」を書いているが、こちらはそれほど評価されていない。今は、「Ⅴユリウス・カエサル ルビコン以降」を読みつつある。
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