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「脳科学から見た、良いボスとは?」

 文芸春秋11月号に、「脳科学から見た、良いボスとは?」との命題で伊藤忠商事代表の岡崎正弘氏、脳科学者の中野信子さん、文芸春秋総局長の新谷学氏の対談が記載されている。副題は、{岸田前首相が知らない「尊敬される条件」}だそうだ。
 
 岡崎氏の話しは大会社トップとしての話しなので私には分かりやすく、残念ながらあまり面白く無い。一方、中野さんの話は脳の働きと人間の意識を結び付け、なかなか興味深い。
 
 中野さんは、1975年生まれだから現在49歳、東大の応用科学科卒業後、医学系に進み、「高次聴覚認知における知覚的範疇化の神経機構 fMRI・TMSによる複合的検討」で博士(医学)の学位を取得、現在は各大学の客員教授、准教授、特任教授などを歴任している。著書は多数あり、いずれも脳を題材とした、いかにも一般人が飛ぶつきそうな題名が並んでいる。昨今はテレビでワイドショーのコメンテーターとして見かけることが多い。明確にこれといった結論を述べるわけではなく、一般受けしないのだが、逆にそれが何となく知性を感じる。加えて相当な(?)美人だ。
 
 中野さんは、「脳科学を含めた科学的な知見として、どういう人間が尊敬されるか」については、既に結論が出ている。その条件には二つあり、一つは「暴力を持っている人」、もう一つは「美しい人」、と言っている。
 
 暴力の方は分かりやすい。私が30代から40代にかけての会社の上司は暴力だけ(?)の人だった。意に沿わないことを言って、激怒して地方に飛ばされた人は限りない。恐ろしいから下の人は誰も逆らわない。私も50前の時、結構なパワハラにやられて、立ち直るのに1週間程かかったことがある。
 
 中野:尊敬されるためには、暴力と美しさ、両方が無いと駄目です。これらを兼ね備えている人は、他の人から攻撃を加えられにくい状況を作ることができるんです。
 脳の中には内側前頭前野という領域があり、ここで美しいかそうでないかを判定していますが、この領域は美しさだけではなく、面白いことに、善悪の判断も行っているんです。・・・小さい子供に、美しい外見の女性とそうでない女性、どちらの言っていることが正しいと思うか尋ねると、美しい女性の方が正しいと判断するというデータがあるんです。
 
リーダーの一番の武器
 新谷:今の時代、リーダーの一番の武器は言葉ですからね。
 岡崎:政治家は特にそうですね。有権者に響くスピーチが必要。ドナルド・トランプさんが大統領選であれだけ事実かどうか分からない極端な事ばかり言って、それでも国民の支持を受けているのを見ると、アメリカは大丈夫かと心配になります。
 中野:人間は本当のことなんか聞きたくないときもあるのでしょうね。嘘でも楽しい話題や、誰がその言葉を発しているかで話しを受け入れてしまう。
 
 「面倒見」には知性が必要
中野:「覇権」と「王権」。この二つがリーダーの条件だと思うんですが、これもどちらか一つではなく、両方持っていないといけない。
 覇権の要件は簡単です。暴力で人をねじ伏せればいいだけですから。一方で、王権の条件は厳しい。自分より弱い頼りない人に対して、どれだけ慈悲をもって接することができるかが求められます。・・・
 人間の前頭前皮質には、短絡的な利益を追求するXシステム、長期的な利益を見据えるCシステムがあるんですが、「長期的な利益を考えると、この弱者を育てておくと得だな」というCシステムによる判断は、一定以上の知性がないとできません。
面倒をみるということは、短期的には損をする行動ですが、長期的に見たら、蒔いた種が大きく育ち、結果的に得をする。・・・第三者から見ると、その面倒見のいいふるまいは美しいと感じるんですよね。
 
 石破首相は正論ばかリ押し出し、面倒見が悪かったと言われているが、今回の総裁選で少しは変わったのではなかろうか。
 
 「良い人」にも違いがある
岡藤:政治家・井上準之助の言葉ね。「人格者を信用するな」と。要するに人格者は常識的で保守的なことしか言わないから、本当に困ったときには役に立たないことがあると。
 中野:人格者だけを尊重する社会は、もしかしたら不健全なのかもしれない。
 
 対談は色々なテーマで長々と続くが、私にはじわっと来ない。最後のテーマで中野さんがしめている。
 
 悲壮感がないリーダー
 中野:一つのきっかけを悪い方向にするのも、良い方向に生かすのも、その人の判断ですから。何か変えられない出来事があったとしても、それを前向きにするためには、結局は明るさが必要なのではないかと思います。それは人として必要な本質的な部分という気がしますね。
 
まさにその通り、我が意を得たり・・・・なのだ。

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