見出し画像

【後編】思いもつかない商品アイデアを生むマーケティング分析

前編からだいぶ日が空いてしまいましたが、後編を書きます!

前編では、
“本質的な競合”とは?
・本質的な競合の見つけ方
について書きました。

今回の後編では、
・例えば“本質的な競合”ってどんなもの?
・なぜ本質的な競合が大切なのか
について話してゆきます。

おさらい:とらえるべき消費者の2つのニーズとは

まずはおさらいも含めて、“本質的な競合”を見つけるための大事な前提となる、「消費者のニーズ」について図で説明します。

前編に出てきた朝、ミルクシェイクが車で通勤する人に売れているという現象について。

消費者の思考と行動をまとめると、以下のような2つのニーズが存在します。

自分でも意識しているニーズ(顕在ニーズ)は「朝の通勤時間に、車の中でさくっと口にいれられるものが欲しい」です。

だけど、そういう食べものなら何でもいいというわけじゃない。

ミルクシェイクが売れているのは、「自動車を運転しながら手を汚したくない」というインサイト(潜在ニーズ)が存在していたから。

この顕在ニーズと潜在ニーズ両方を満たすものとして、「ミルクシェイクを選ぶ」という行動が起きていたのです。

「じゃあ、このニーズってどうやって発掘するの?」ということも含め、後編の本題に入っていきます。

例えば“本質的な競合”ってどんなもの?

このミルクシェイクを例に、改めて「ニーズの発掘法」や「“本質的な競合”のあぶりだし方」の手順をご紹介しながら、本質的な競合の具体例をあげていきたいと思います。

私たちは、食品メーカーのミルクシェイク商品開発担当者だとします。

1.問いを立てる

「ミルクシェイクはランチ後やおやつの時間に、若い女性が買うことを想定して作っていたが、どうも朝にも売れているようだぞ?」

こんなことが日々の売上データから見えるとします。
すると、こんな問いが立てられます。

「なぜ、朝ミルクシェイクが売れているのか?」

2.ミルクシェイクがもたらす体験価値をあらいだし、ニーズの仮説を立てる

次に、この問いの答えとして考えられる、ミルクシェイクが消費者にもたらす体験価値を思いつくままに出してみます。

①時間をかけずにさっと食せる
②手が汚れない
③ご飯代わりにお腹を満たせる
④持っていると何となくおしゃれな都会人っぽい
⑤インスタ映えする

これらの価値に「朝売れている」という事実をかけ合わせて仮説を立てると、

・時間をかけない&手を汚さずに飲みたい人にニーズがあるのではないか
・朝ごはんの代わりに、出勤時にさくっと飲んでいる人が多いのではないか

といったように、①②③が関与している可能性を見出すことができます。
(これが絶対的な正解!というわけではありません)

3.消費者データ分析によりニーズを深掘る

ここは2.と同時並行でも構わないのですが、店舗売上データ等から、この仮説を裏づけるデータがないか確認します。(なければアンケートや調査で調べるのもあり)

例えば購買データを見て、「朝購入するのは主にビジネスマン」「車移動でドライブスルーでの購入者が多い」という事実があれば、

「朝、車出勤のビジネスマンにミルクシェイクが売れているのは、運転しながら手を汚さず、朝ごはん代わりに飲めるからではないか」

というさらに具体的な仮説を導き出すことができます。

4.本質的な競合を見つける

ここまでくると、あと一歩です。
(しかし、この一歩がとてもとても重要)

「ミルクシェイクはランチ後かおやつの時間に飲むのでは」という一般的な仮説だと、競合はアイスやクレープになりますが、3.の仮説を加味すると、違う考え方になりますね。

「朝、車で出勤するビジネスマンが運転しながら手を汚さず、朝ごはん代わりに口に入れられるもの」とおくと、どんな競合が考えられるでしょうか?ぜひ読者の皆さんも想像してみてください。

(頭に思い浮かべたら、スクロールしてください^^↓↓)







ほんの一例ですが、「車での出勤」に限定するなら、日本だとinゼリーやSOYJOY、スムージーなど、栄養価が高い×甘い系のものが考えられますね。

こうした“本質的な競合”から参考になる要素をピックアップして商品の改良に活かすのも手ですが、やはり"新しい価値を生み出す"ことがマーケティングのだいごみ。もう一歩進んでみましょう。

5.ターゲットやシーンを広げて、改良点や新商品を発想する
今回のミルクシェイクなら、消費者ターゲットの範囲を広げてみてはどうでしょうか。

例えば、「電車通勤」まで広げて考えた場合。
2.であげた体験価値に立ち返ると、

①時間をかけずにさっと食せる
②手が汚れない
③ご飯代わりにお腹を満たせる
④持っていると何となくおしゃれな都会人っぽい
⑤インスタ映えする

車よりは電車の方が人の目が気になるので、上記体験価値の中で「④持っていると何となくおしゃれな都会人っぽい」「⑤インスタ映えする」などを重視する人も増えるのではないでしょうか。(特に女性ユーザー)

そう考えると、
・カップをインスタ映えのするデザインにする
・混んだ電車の中でも飲める、変形しにくい容器にする
・飲み途中でもバッグにしまいやすい、漏れにくいフタつき容器にする

といったアイデアも出てきます。

さらに、ミルクシェイクにとらわれずに、「出勤しながら朝ごはんを食べたい」ニーズから女性向けに新商品を開発するなら…

例えば、「栄養価の高い甘いアメをつくる」もひとつの発想です。

メリットは
・人前でいかにも食べてる風に見せなくてよい
・可愛いデザインの小瓶に入ってて持ち運びたくなる
・職場の気になる男性に差し入れできる
などが考えられます。

なぜ“本質的な競合”を見つけることが大切なの?

ここまで読んできた皆さまはお気づきかと思いますが、その理由は2つあります。

1つ目は、
「本質的な競合を見出すことで、思いもつかない商品アイデアが生まれる」可能性が高くなるからです。

ミルクシェイクの例でも、「おやつ」というカテゴリだけで見ていたら既存の延長の発想しか出てきにくかったりします。(私は特に発想を飛ばすのが苦手です…)

しかし、本質的な競合をあぶりだし、そこからシーンやターゲットを拡大して考えることで、全く違う方向への商品の改良案や、新商品アイデアが出てくる可能性が広がります。

2つめは、
「インサイトを発見する」という、商品づくりにおいて一番重要なプロセスをふむことになるからです。

商品を企画する際、大きくは「消費者起点発想」と「プロダクト起点発想」に分かれると思います。

制約がある場合もありますが、やはり愛される(≒長期的に売れる)商品をつくるには、どちらが起点であっても、消費者の視点(使用シーンやその時発生する感情、行動等)での発想は欠かせないと私は考えます。

消費者を置いてきぼりにした商品は、いくらスペックが高くても、売れない時代。

例えば「このTVは史上最強の解像度を実現!」とうたっても、そこにめちゃくちゃこだわるマニアな人でもない限り、「それは絶対買わなきゃ!」となりにくいのが現実だったりしますもんね…。

まとめ

少し長くなってしまいましたが、今回の要点をまとめると

■“本質的な競合”をあぶり出す手順
1.(データ等を見て)問いを立てる
2.商品から得られる体験価値をあらいだし、消費者ニーズの仮説を立てる
3.消費者データ分析をより詳細に行い、ニーズ仮説を深掘る
4.仮説から本質的な競合を見つける
5.ターゲットやシーンを広げて、改良点や新商品を発想する
■“本質的な競合”を見つけるべき理由
1.本質的な競合を見出すことで、思いもつかない商品アイデアが生まれる
2.そのプロセスでインサイトを発見できる

このようになります。

もし分かりづらいとか、もっとこうなんじゃない?などありましたら、Twitter経由でご意見をいただけますととても嬉しいです!

今回もお読みいただき、ありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?