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学習のステップについて

子供達に教えている学習の概念についてのまとめです。
テストで点を取る方法などについてです。

学習には5つのステップがある

まず、学習してそれを定着させるまでの段階を、5つに細分化します。

①知る、②理解する、③覚える、④思い出す、⑤応用する

の5つです。どれも、一つ前のステップなしには前に進めません。全てのステップを経て「学習できた」「会得した」といえる状態になります。
テストで点が取れない、成果が出ないというのは、この5つのステップを把握できていないからだと考えています。
とくに①と②、③と④の違いがあることは、なかなか気づけないものです。以下で詳しく説明します。

ステップ1:知る

これは文字通り「知る」ということであり、学習の最も初歩的な段階です。この段階では意味を理解せずともよいほどで、そういう言葉や事象があるのだなと、さらっと認識する程度でOKとします。

「知る」のステップの知識は、「それなんか聞いたことある」というレベルの知識になります。ただしそれがなんなのかを説明することはできず、うろおぼえの状態です。
惜しい人はこのステップ1を「分かっている」の状態であると勘違いしています。それについて聞くと何も答えられないため、すごく残念な感じになります。NHKのチコちゃんで言うところの「ボーッと生きている」状態です。

ただしこの「知る」の状態が全く役に立たないかといえば、そんなことはなく、現代社会では大いに役立ちます。このステップの知識があれば、それについて詳しい情報が必要になった時に、検索したり誰かに聞いたりすることができますし、問題解決に繋げることができます。知ると知らないでは文字通り大違いです。

この状態になるには、具体的には教科書やワークなどをザッと読んだり、授業を1回きけばOKです。ただしある程度の集中力は必要であり、よそ見をしていたりSNSをしながら映像授業を流し聞きしただけでは「知る」にすら至らないので注意が必要です。

また、知った瞬間は興味も高まっている瞬間でもあるので、ステップ1の知るとステップ2の理解するを同時に行うと効果的です。

ステップ2:理解する

知ったものについて、その内容や仕組みを解釈し、「なるほど!」と自分で腑に落ちたと思える状態にするのがこの「理解する」のステップです。
腑に落ちた感覚というのは本人にしかわかりませんが、それを客観的に推し測ることは容易です。それについて説明してもらえばOKです。
説明できるということは、ほぼちゃんと理解できているということです。
うまく説明できない部分が、理解できていない箇所ですので、都度都度手助けしていけば、理解も深まりますし、学びのつまづきポイントも自然と解消できるでしょう。

説明が苦手な人もいると思います。説明すること自体が一つの重要なスキルですので、説明が苦手そうな場合は、ごく簡単な知識について説明をしてもらい、説明という行為自体に慣れていく必要もあるでしょう。
学校教育でも現代社会でも言語的な説明は重視されていますので、この説明のスキルは少しでも身につけておいた方が良いと思います。

ステップ3:覚える

説明せよという文章題や証明問題など、因果関係などを理解し、それを覚えておかなければならない場合は多いです。
人間の脳はストーリーや因果関係を記憶するのは得意なようなので、説明と覚えるを同時に達成するというのは真の理解と知識の会得につながるでしょう。

単語の意味や書き方など、単純な知識問題についてもこの「覚える」の作業が大事です。いわゆる「まる暗記」であるため、これには苦痛を伴う場合があります。
記憶を自分ごと化するというのも一つの手です。
自分の脳にフィットする把握のしかたや語呂合わせなど、覚え方自体を自分で作るのが最善と考えていますが、それにはクリエーティビティという別のスキルが必要になります。覚え方の自作が向いている人はそれを楽しめばよいですが、そういう作業が苦手な人は、自作が苦手な人は既存のゴロ合わせ本などに頼ってもよいですし、ドリルやワークで繰り返し行うのもよいでしょう。覚えた量を競えるほどよい勉強仲間を作るのも理想的です。

大学受験の時に塾で教えてもらった方法は、たとえば社会科であれば覚えたい範囲の問題について、6〜7冊の問題集を答えを見ながら書いていくという方法でした。同じ内容を手を変え品を変え聞かれるので、3冊目ぐらいからは答えを見ずに解答できるようになっていきます。同じ答えるになる問題でもスポットの当て方がそれぞれ少しずつ違うので、知識が増え理解も深まっています。特に頻出問題については確実に点を取れるようになります。
もちろん大学に合格したいというモチベーションがあったからできた勉強方法ではありますが、知る、理解する、覚える、から次の思い出すまでを1セットで鍛えられるのでとても便利な方法だと思いました。

エビングハウスの忘却曲線でも有名なように、それぞれの暗記項目について、繰り返し行って短期記憶から長期記憶へと脳の回路を強化していく必要があります。記憶をするには睡眠の回数が欠かせないので、テスト対策としては早めにとりかかることもとても大切です。

ステップ4:思い出す

「覚える」までがインプットであるとすると、「思い出す」からがアウトプットです。「覚える」と「思い出す」を明確に別のスキルであると仮定しているところがポイントです。
イメージとしては「覚える」が頭の中の引き出しに知識をしまい込む作業。「思い出す」がその知識の引き出しを開けて中の知識を取り出す作業です。

聞いたことはあるし確かに一度は覚えたはずだがどうしても思い出せない、、、というのはこの引き出しがまだゴゴゴゴ…と重い状態です。
「思い出す」の訓練をステップとしていれることで、引き出しの開け閉めがスッ、スッっと軽くなり、知識を自由自在に使えるようになるわけです。

思い出すのステップの訓練として効果覿面なのが、理解するのステップでも触れましたが「何も見ずに人に説明する」という学習法です。
慣れてくると相手がいなくても仮想の相手を想定して説明できるようになります。説明をすると用語を含めて曖昧なところが浮き彫りになり、そのあいまいな箇所については課題意識を持って調べるようになるので、理解も自然と深くなります。
独り言でも構わないので、とにかく声に出して説明するというのは効果的な勉強方法だと思います。

テストで点が取れなかったり、一問一答で答えられなかったりする時、結果はできた、できなかったのゼロイチであり、解答を間違えれば子供はがっかりしたり自信を失ったりします。これは記述式のテストがはらんでいる課題です。「わかってたのに答えられなくて悔しい!」とか「知っているのに問題の出し方がおかしかったから答えられなかった!」というような反応になり、負の感情が先立って勉強から離れてしまいます。
しかし、これまでの1〜4のステップがあることを知っていれば、どの段階ができていなかったのかが明白になり、それに納得すれば「理解する」や「覚える」のステップにも取り組んでくれるようになると期待できます。

ステップ5:応用する

ステップ4までができるようなるとはじめて、この「応用する」に挑戦できるようになります。理解し覚えた知識を使って、工夫して問題を解決していく段階です。
大事なのはこれが一番面白い、オイシイ部分であると気づき、実感できるようになることです。
応用というのは、学校教育で言えばテストの後半にある大問などがわかりやすい例です。

手が届きそうで届かない高いところに、赤い木の実がなっているとします。
人類は、これを取りたいと思うようにできていて、取れたらハッピーになるようになっています。
木の棒を使ってもいいし、石を投げて当ててもいい。どんな方法でもよいので、実際に取れたら、最高に嬉しいと思います。
嬉しさというのは、物理的には脳内物質の放出です。
我々は、なるほどよい難易度のタスクを与えられると、思わず挑戦したくなり、そして達成することで脳内報酬を得られるようになっています。

テレビゲームが夢中になるほど面白い理由の一つがここにあります。
優良ゲームではあるタスクに対し、達成に必要な知識の学習ステップ1〜4までがストレスなく進行できるようにデザインされており、ちょっと大変な「思い出す」のステップについても解説ボタンなどでしっかり補助されています。「応用する」という知識のパズルや操作スキルという楽しいタスクの醍醐味の部分にすぐに挑戦できるようになっているわけです。そこでクリアした!達成した!勝った!というドーパミンがドバッと出て快楽を感じるようになっています。

テスト問題も本質は同じで、向き不向きはあるものの、ステップ1〜4までをクリアしていれば、ステップ5についてはゲームと同じです。ある程度勉強ができるようになると、テストを受けるのが楽しみになってくる場合がありますが、まさにテストというタスクが、高得点を達成するゲームになっている状態なわけです。
学んで楽しい、というのは、人類としてかなり建設的な脳内報酬の出し方ではないでしょうか。

さいごに

多くが一般論的な話になりましたが、「知る」と「理解する」、「覚える」と「思い出す」をしっかりと分けて捉えましょうというのが今回の記事のポイントです。

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