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断る勇気と高札のおふれ

買った覚えのない大根が5本、冷蔵庫に入っていた。見事な葉っぱ付きである。
さほどデカくない実家の冷蔵庫に存在感ハンパなく横たわるその大根5本は、他の食材が入るのを邪魔する。

もう、もらわないでくれよ!
わたしの心の叫びだ。


わたしは夫が単身で暮らす関西と
一人暮らしの高齢実母がいる四国の実家を数ヶ月ごとに行ったり来たりの二重生活をしている。

実家では母とふたりだけだ。
みごとな大根5本を葉っぱ付きでもらっても食べきれない。
料理するのはわたしだから母に丸投げされる。

「断る勇気って大事なんちゃいます…?」

と、わたしが言うがはやいか言葉を荒げた母が
「断れるわけないわ、アホ!」と続ける。

〈だ、誰がアホやねん、

わたしはアホちゃいまんねん、パーで……〉

母はいつも、ひとこと多い。

田舎の付き合いって想像を超える。
ここ、1〜2年思い出せるだけでも
お歳暮がわりに米が14kg、
カボス20個?かぶ8個くらい?うどんのつゆ(手作り2ℓ)、うどん麺20食?太ったさつま芋10本ってか?ゴジラみたいなゴーヤも…
など、どれも日持ちに気を使う食材をもらっていたことがあった。

ありがたいよ、ありがたいけど、
気持ちだけでええ、と思うのはわたしだけだろうか。


そうやってわたしが関西にいるあいだにもらったであろうもので、お米なんか食べきれないから、米にムシがわいた。小さな白い幼虫は、紙製の米袋からブニョブニョ這い出し、壁に張り付き、カーテンに張り付き、さなぎになる。やがて小さな蛾みたいになるんだわ。そして巣立ちを迎える。感動で不快な物語。(ノシメマダラメイガというらしい)

うどんなんて、よもぎ入りですか?
抹茶うどんですか?
みたいにマダラ緑色なってる。
この世ではそれをカビと称すらしいが母はきっとその言葉を知らない。

ペットボトルに入ったうどんつゆには、なんか浮いてる。
キラキラ光る浮遊物。とてもきれいだ。がしかし、ビュジュアルきれいでもその正体はたぶん腰抜かすほど恐ろしいものだと思う。

カボスなんか20個くらいずつ、定期的にもらっては冷凍する母。母は全く料理しないのでそれが積み重なって50〜60個ぐらい冷凍してあった。しばらくぶりに実家に行くと鉄球みたいに硬く凍った大量のカボスに〈もう勘弁してくれ〉という気持ちになるのだ。
仕方ないからカボス風呂にでもしてみようと、そのままお風呂に入れたら、せっかくのあったかい風呂はぬるま湯になった。

もらったかぶがかろうじて使えそうだったので小さめのかぶを丸ごとトロットロになるまで白だしで煮込み、八宝菜のあんかけみたいな仕上がりにした。白身魚を加えて料亭みたいにしたかった。白身魚の名前は、忘れた…というかなんでもいいわという気持ちの一品。


話しは大根5本に戻る。
わたしには子どもが4人いて皆それぞれひとりぐらし(三男は同棲中)だからひとりひとりにいるかどうか聞いてみた。いるなら送るよ、と。
いる!と言った子は料理好きでキャンプ好きな二男だけだった。
でも2本だけもらうと付け足された。
皆、いらんもんはいらんと言う。

なら、二男だけでもと思って大根をダンボールに詰め込むその横で母がぼそっと言う。
「送料の方がもったいない。」
けっ、またいらん一言。
けど食べきれず腐らせたり、冷蔵庫を大根のやかたにするよりずっといいじゃねぇか。

世の中の皆様はどう思うのか気になる。

わたしは、やんわり断る。(ドヤ顔)

ちょっとしらべてみたら、いい感じのものがあった!(サイト:メモっとこさんを読んで)

まず、
1番大切なのは感謝の気持ち。


「ありがとう」と言葉をいう。くれた物が何であろうと、物は関係ない。
その行為そのものに感謝する。

そして次は断る理由をいう。

例えば、「食べきれず余らせて腐らせたりしたら申し訳ないです。」てな具合。

最後は代替案。

例えば「他の方にあげてください」
他の人ならきっと喜ぶ!と言うことを忘れない。

これらをいい感じに組み合わせて断るのがベストよ、と書いてある。

最後の代替案は忘れがちだったけど感謝と理由は、実践すみだった。ほっ。

そして食材じゃなくても明らかに自分じゃもったいなくて捨てられないからくれた、みたいなものだった場合は、
《相手の代わりに捨ててあげた》
ということでいいんだそう。
相手の好意である運気だけをもらって、あとは捨てる。

なるほど。

しかし、たぶんこれを母に言っても改善は見込めない。
鬼のような豪傑な思考でアホを連呼するだろう。
外面そとづらがいい母は自分が他人からどう思われるかが最重要ポイントだ。
嬉しくもないのに、へこへこする。
演技派女優、レッドカーペットもんだ。
家族にだけよく思われていたならそれでよくないか?と考えるわたしの思考も母からすれば間違いなく間違っているらしい。
間違いなく間違っているらしい。
(じぶんでもナイスな言葉だと思ったので2回いった)
だから、何も解決はしないだろう。
自分は常に正しいと信じて疑わない母は自分以外の意見など頭に入れる隙間がないのだ。


そんな母、昔からけったいな家ルールを押し付けてくる。


最近、堂々とたてられた高札(立札)の法令は、


「二階のトイレでうんこするな。」



今年2月に改装した新品のトイレをうんこで汚染されたくないらしい。
うんこは一階でまとめろ。ということ。

今更、思い出したように言ってきた言葉が

「お前、まさか二階でうんこしてないよな?」


〈してますけど何か?〉
はわたしの心のつぶやき。 

わたしが若い時に買った陶器でできたトイレの置物。かわいいでしょ。
お気に入り。

トイレでうんこしなきゃ、どこでうんこをするんだろ?

まったくもって
けったいな親である。

#断る勇気
#うんこ
#毒親
#けったいな親

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