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Keyless Entryの落とし穴。

娘の水泳大会(swim meet)でノースキャロライナ(North Carolina) 州に五泊の遠征に行ってきた。レンタカーの鍵は、keyless entryタイプ("fob")。

大会初日、会場にいる娘から悲壮なトーンで連絡が入り、入賞したチームメートに渡す花束が急遽必要だという。「誰も教えてくれなかったのに、友達の私がやらなきゃいけないんだって、先輩に怒鳴られた。」と半泣きである。どうも意地悪な先輩自身が忘れたのを、娘になすりつけたらしい。アメリカ人女子高校生にはこういう恥を知らない根性の悪さがある。

私は近くのお店に車で向かった。店内を走り、生花がなかったので偽花の紫陽花を2本と赤いリボンを引っつかんで、車に戻り、会場へと車を走らせた。

半泣きの娘は会場の外で待っていた。助手席のドアを開けて「ママ、ごめんなさい。ありがとう」といいながら買い物袋をつかんだ娘に「いいから早く持っていきなさい」と声をかけ、とりあえず駐車してからホテルに戻ろうと、50メートルほど移動して停めた。

暑かったのでエンジンは切らず、ホテルへのGPS(カーナビ)をセットして、さて帰ろうとギアを入れた。.......のに、ギアが入らない。...?!?!?!

フォードのSUV。円形のダイヤルを左右に回して、D, R, N, Pにセットする。こんなギアは見たこともない。は?とモニタを見ると、"No key inside"という警告が赤々と出ている。は?だって、今、車動かしてここまで来たんだよ?!

お店からここまで運転してきたのだから、鍵は車内にあった。カップホルダーに入れたのをはっきりと覚えている。それがない。バッグをひっくり返し、シート座席の周囲を目を皿のようにして探し、ありとあらゆる隙間に手を差し入れても、ない。娘に買い物袋を渡してから、車は動いたのに?

買い物袋にひっかかった鍵が、駐車場に落ちたのか?fobがまだ起動する範囲内だったから車は動いたのか?それなら鍵はこの辺に落ちてるはず。車を降りて探すけれど、影も形もない。娘を呼び出す。チームメートの車でホテルに戻るところだった彼女はぎりぎり間に合って、やってきた。買い物袋にも水泳リュックにも鍵は見当たらない。リュックごと車に入れてもダメ。

..........

わからない。こういう時、私の脳の半分は凄まじいスピードで回転し、もう半分は減速してどうすべきかの分析に入る。心拍数は上がらない。

娘に、買い物袋を渡した地点からプールまでたどるように指示。その間、レンタカー会社に電話して予備の鍵を持ってきてもらうしかないかと考える。となると、ムスメをまずホテルに戻さないと。ランチの後、泳ぐ数時間前は何も食べない彼女は、泳いで空腹状態。すぐに食べさせないと餓死する、明日のレースに響く。...と、ムスメが手を振りながら戻ってきた。「ママー、あったー!」

駐車場のど真ん中に落ちていた鍵を、フロントデスクに届けてくれた人がいたそうだ。いやー、助かった。

そして、私の怒りが爆発した。私の愛車、柳生十兵衛ことAcura MDXは、エンジンが入っていても、fobが車から離れたらすぐにピーピーと警報音が鳴る。このFordは鳴らなかった。あのまま運転してホテルに戻っていたら一体どういうことになったかと想像しただけでも恐ろしい。

A fucking piece of shit!!!! 

これだからアメリカ産は嫌なのだ。デザインの詰めが甘い。甘すぎる。円形のギアなんかである必要ないのに、そういうどうでもいいところでユニークさを主張し、そのくせfobが車から離れても警告音を出さない。車に何が必要なのか何が重要なのか、という視点で作られてないとしか言いようがない。

Ford, a fucking piece of shit!!! 

アメリカに来たばかりの頃、似たようなことを何度も経験した。アイデアはいいし聞こえはいいけれど、現実にはデザイン通りに機能しない。そういうものが数限りなくある。このフォード車は、それ以前の問題だ。

アメリカ人に発案させ、ドイツ人に作らせ、日本人に改良させるのが一番いい。

言い古されたことかもしれないけれど、アメリカで25年以上暮らした私は心からそう信じている。





ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。