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高校生のインターンシップ。

さて、高校生のムスメのインターンシップ。夏休み中、私の友人である産婦人科医のオフィスで受付をやった。高校生だから無給の可能性もあったのに、一応最低賃金 ($12/hour)とはいえ、お小遣い稼ぎになっただけでなく、ひっきりなしに鳴る3本のラインを操って患者の予約をとり、看護師と患者と製薬会社のセールス、検査担当のラボテクニシャンのいろんなミニドラマを観察、体験。

高校生が仕事を覚えるまでにどのくらいかかるか、覚えた後にどのくらい効率的に働けるか、どのくらい真面目に働くか、どんなミスをするかを考えた時、できるだけ仕事を教えない、させないようにするタイプと、なんでもやらせてみるタイプの上司に分かれる。どんな仕事をさせればいいのか判断がつかない上司もいるだろう。

ムスメを最初に指導した小ボスは、何もさせないタイプで、何時間もムスメは椅子に座ったまま、彼女がやる仕事を見ているだけだった。気の利くムスメは二日目から「それ、やりましょうか?」「これ、したらいいですか?」と自分から申し出たが、何もさせてもらえなかった。何もしないでもお金は稼いでるわけだが、お金そのものよりも働く経験が欲しいわけだから、時間のムダだとムスメはため息をついていた。

小ボスが出勤しない日があり、その日は大ボスが面倒を見てくれた。この人は、なんでもやらせてみてくれるタイプで、電話に出て予約をとり、検査結果などのわからないことはすぐに横に座っている彼女に代わるようにと、指示した。

わずか二日足らずで、ムスメはみるみるうちに仕事を覚え、使えると思われたらしい。そして大ボスが、小ボスにもっと彼女を使うようにと言ってくれる手筈になっていたのだが、そのタイミングで小ボスが自宅勤務に変わり、ムスメは大喜び。後でわかったことだが、どうも自分の仕事が取られると思ったらしく(ムスメの方が賃金安いし)、自分とどっちをとるかみたいな脅しをかけた挙句、数週間後に辞職したそうだ。高校生なんて、夏休みくらいしか働けないし、あと2年もすれば大学に進むというのに、何を「恐れて」高校生とそんなふうに張り合うのか、さっぱりわからない。そんなに自信がないのだろうか。

予約を取るだけで、いろんなドラマがあった。

「男性のS先生の予約をお願いします」
「S先生は女性ですが。男性はこのオフィスにはH先生しかいませんが」
「うふふ、あなたわかってないわね。S先生は私が知ってる10年以上男性よ」
「......S先生が性転換したという話は聞いてませんけど、今は紛れもなく女性ですよ」

このムスメの機転のよさは札付きであるから、看護師さん達は大ウケにウケた。

そして、このS先生、やる気があるのかないのか、週に一度しかオフィスに来ないだけでなく、10時3時しか働かない上に、当日の朝突然12時で帰ると言い出すから、ムスメは午後の予約を取り消す電話をかけまくることになる。

「S先生の予約お願いします。一番遅い予約、夕方5時くらいじゃないと伺えません」
「S先生は水曜しかオフィスに来られませんし、一番遅い予約は3時で、次に空いてる予約は1ヶ月先になります」
「私、5時の予約にしかいけないって言ったでしょう?」
「はい、伺いましたが、先生は3時が一番遅い予約です」
「アナタ、私のいうことわかってるの?ちょっとマネージャーに代わってちょうだい」

大ボスに代わっても、もちろん大ボスも同じことしか言わない。

年取ったH先生は、看護師やテクニシャンを大事にしないどころか見下すので、皆に嫌われている。15分おきに予約が入っているというのに、一人の患者につき30分以上かけるから、予約がズレまくる。にもかかわらず、15分おきに予約を入れろと譲らない。

「だいたい隣の診察室までヨタヨタと10分もかけて移動するだけで、もう次の予約の時間分遅れてるのよっ!」
「自分が遅いくせに、早く患者を診察室にチェックインさせろって。電話してから、駐車場からエレベーター乗ってくるんだから1分後に来れるわけないでしょう!」

もちろんH先生の前ではにこやかにしているが、彼が背を向けた瞬間に、皆で呆れ顔をする。

大学は看護学校に絞り、看護師資格試験の合格率が95%を超えた大学しか考慮しないムスメにとって、このインターンシップはとてもいい経験になった。話を聞いていると、よくもそこまで機転を利かせた対応が即座にできると驚嘆する。

私の友人がこのオフィスを出て、独立することになったので、ムスメもそちらに移動する。高校3年生(Junior)の今年は週に数時間しか働けないけれど、次の夏休みと4年生(Senior)の春は学校が認可するインターンシップ先として高校生最後の夏も含めてまた働かせてもらえることになっている。その頃にはもう進学先も決まってることだろう。









ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。