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新宿で。眼鏡市場との出会い。

羽田に着いた翌日の夜、中学の同期会があった。全員、今年56歳だから、健康に関して共通の悩みがある。

老眼。笑。

私はコンタクトで monovision 。右目で近くを左目で遠くを見るように微妙な調整をしている。これでこの年まで一切老眼鏡なしにやってきて皆に驚かれている。

さて。さすがの私も、一日を読書で終えようとすると、疲れ目と照明の具合次第では辛くなってきた。一応コンタクトの上からかける老眼鏡はもっている。でも、夜寝る前に読む時はコンタクトを外した後のこと。

本や Kindle は遠くをみるメガネをかけて、本を遠ざけて読むしかない。
なのに。携帯の画面は裸眼で見るほうがいい。

遠近両用。コンタクトもメガネも、いい話を聞いたり聞かなかったり。
すると、同級生の一人が言った。

「しばらく日本にいるんだったら、すぐに作ってもらえるから Zoff とか眼鏡市場で作ってみればいい。安いし。」

それなら。夜コンタクトを外した後にかける遠近両用のメガネをつくってみるか…?

私は超ド近眼なので、絶対にその日のうちに作ってもらうのは無理だとわかっていたから、行くなら早めに行ったほうがいいだろうと思い、翌日有楽町の丸井にある ATAO で米ドルパワーをフル全開した後で、新宿東口の紀伊國屋書店の向かい側にある眼鏡市場を訪れた。

まず。一階で、カウンターの30代後半くらいのおにいさん、に長々と事情を説明する。

私を「おかあさん」と呼んだ羽田の係員に笑ったけど、「奥さん」だっておかしい。それと同じで、30代後半から40代半ばくらいの男性のことはなんと呼べばいいんだろう。「おじさん」「おとうさん」じゃないし、「おにいさん」でもないんだろうけど。

羽田に到着してホテルにチェックイン。おかあさんとSweetie。」
日本到着してすぐに書いた記事。

終始にこやかなおにいさんは、私の話に真剣に耳を傾け、私の質問に対して適切で丁寧な説明をしてくれる。どうも視力検査してみないと、monovision の私が遠近両用メガネを使えるかどうかはわからない、らしい。

「でも、視力検査してダメってなってメガネ作れないってなったら?」
「あ、別に大丈夫ですよ。検査は無料です」
「メガネ、作らなくても、無料なの?」
「はい〜」
「あら、じゃあ検査する」
「ありがとうございます〜」

やっぱり私の度数ではメガネが出来上がるのに1週間はかかる。が、それなら実家に送ってもらえばいい。送料は600円程度。おっけー。

そして。切符みたいなのを渡されて、二階へ。


視力検査用の器械の前にすわった年配の男性の相手を、若いおねえさんがやっぱりにこやかに相手している。時間はあるので、のんびり椅子にすわってきょろきょろしながら順番を待つ。

さて。また事情を長々と説明する。で、このおねえさんの知識と説明力が素晴らしかった。なんてわかりやすいんだ。さすが日本人である。どんな仕事も自分のモノにし、常に向上を目指すのが日本人だ。

私が遠近両用を使えるかどうかは、コンタクトを外してメガネをかけて、クラクラするかしないかにかかっていた。視力を合わせて、模擬メガネを渡され、少し歩いてきょろきょろするようにと、にこやかに言われる。

「大丈夫みたい!くらくらしない!」

おねえさんはにっこり。

「ここ、いいわねー。下のおにいさんもよかったけど、あなたの知識も素晴らしいし、来てよかったわー。」

おねえさんはにっこり。

次はフレームを選ぶ。おねえさんによると、5階が国産ブランド、4階が輸入ブランド、3階が眼鏡市場ブランド、と下にいくにつれて安くなる。

うーん、と考えた私は、
「じゃあ、4階から始めて、そこから上にいくか下にいくか決めるわ」

また切符をもって、4階へ。エレベーターの前まで送ってくれたおねえさんはドアが閉まり始めると、深々とお辞儀をした。


できるだけ縦長で丸めのフレームにするといい、という具体的な指示を視力検査のおねえさんから受けていたので、そういうのを探す。

こういう具体的な指示も日本的。アメリカにはいろんな人がいて、それぞれの好みがあるから、あれしろとかこれがいいとかは言われないし、アドバイス受けても聞かない人ばかりだから、そもそも店員はアドバイスしない傾向にある。

店員は勝手にすればいいという態度か、
アドバイスして逆ギレされたらたまらんからと口をつぐむ。

輸入ブランドの価格帯は、2万円前後から3万円前後らしい。ざっと見ながら、上限を決める。5階へも3階へも行く必要はない。

そろそろアドバイス欲しいかも、と思って、目で合図を送ると、20代後半のおねえさんが飛んできた。

「下のおねえさんに、こういうのがいいって言われたの」
と、いくつか、かけて見せる。

「嘘つかないでね、似合わなかったら似合わないって言ってね」
「もちろんです」

おねえさんが、私の上限超えるフレームを手に取ったので、
「あ、ダメ。23000円くらいまでにしたいの」
「はい、わかりました」

そして。
いよいよ、コレかアレか、と2つのフレームが候補に残った。私はコッチが似合うと思いながら、彼女にかけてみせた。
「コチラの方がお似合いですね。眉毛の形にも合ってます」
「やっぱり?私もそう思う。じゃあ、コレにする」


また見送られて、1階へ。エレベーターを降りると、最初のおにいさんとその同僚が笑顔で迎えてくれる。

「いかがでした?」
「大丈夫、クラクラしなかったから買いました!実家に送ってもらうことにした!」
「それはよかったです〜」

ここ、すごくよくてびっくりしたわ。視力検査のおねえさん、あの子いいわねぇ。フレーム売り場のおねえさんも、もちろんアナタも。最初から最後までこんなに丁寧に面倒みていただいて。友達に宣伝しておくからね!

ありがとうございます〜、と二人とも深く頭を下げて、見送ってくれた。


それからというもの、研究者や編集者や友達や、会う人会う人にこの話をして眼鏡市場の宣伝をしている。

すると。そういえば、このメガネも眼鏡市場だったわ、っていう友達が少なくない。買ってから何年たっても、鼻のパーツを取り替えてもらえるらしい。

母の年代は白内障の手術をする人が多く、そうすると近眼か老眼かを選んでそれを完璧に治すことができる。普通に考えたら、近眼を治して老眼鏡を使うと思うのだけど、そうじゃないらしい。老眼を治して近くを見えるようにし、運転するときはメガネをかけるってほうが絶対にいいんだそうだ。

白内障の手術という話じゃない場合でも、コンタクトで近眼をそこそこ調整し老眼鏡を使わなくていいようにして、運転するくらい遠くを見る時にはメガネをかける、という方法があるという。

なんかソレっていいかも。また今度帰った時、眼鏡市場で相談してみよう。

新宿東口の眼鏡市場。一階の受付カウンターのおにいさんに
「10月の半ば頃にアメリカからきたロングなグレイヘアの元気のいい女性に勧められて来ました」って言ってね〜。


ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。