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ホラー短編集『NN4444』の感想~向こうからガーンとは来ないけど、観客が自ら感じ取っていくタイプの恐怖体験

ホラー短編×4がセットになった映画『NN4444』を観ました。
4つの短編からうっすらとと共通点を感じつつも、それぞれに強い個性を感じて、とても面白かったです!

不条理ホラーという触れ込みでしたが、一見不条理でも映像・音・台詞から感じるものがたくさんあって、難解な感じはしませんでした。
いやあ、嫌な気持ちになりましたね~(ホラー的には良い意味で…)

↓オフィシャルサイト



【1】4つの短編からうっすらと感じる共通項

4つの短編の主人公たちは、それぞれの状況下で辛い思い・プレッシャーを食らっていて、物語の共通項に見えます。

そして、4作目の『VOID』で、うさんくさい骨董屋役とかでよく見かける池田良さん(今回はアルカイックスマイルのスーツ男)が色々と語ってくれます。

※一回しか見ていないので、言い回しは正確ではないですが

  • 悲しいとか寂しいとか辛いとかの負の感情が集まってきている

  • 負の感情が集まるには発露があってはならない。発露されない抑圧が必要

  • 抑圧に打ち勝てるのは虚無

(不条理の中の親切パート…?)

【2】それぞれの作品の感想・解釈など

▼犬

パートナーや親や仕事場から与えられる、女性が感じる抑圧がエグイ感じで描写されます。観ていて本当に辛いです…。
あんな男は某映画みたいに斧で一閃すりゃいいのにって見ていると、実際(斧ではないけど)男は成敗されるのですが、それで爽やかには終わってくれません。
倒したのは怪異ではなく人なので代償を払わされるだろうし、結局は抑圧がエンドレスに繰り返されるという…。

犬っぽい女性が出てきたりとかファンタジックな感じがある一方で、抑圧描写のエグいリアル感が際立ってもいて、ファンタジーとリアルの間を振り子のように行き来する恐怖体験でしたね…。

▼Rat Tat Tat

これも女性が抑圧される辛い話…なのですが『犬』に比べると描写が直接的でない感じです。

とはいえ、あのパーティでは男らしさを発露させることや、女性が出産すること(産めよ増やせよ)が良しとされていて、同調圧力をガンガンに効かせてくるのが分かります。そして、主人公が流産する(のを表しているような描写がある)と、人々が興味を失って去っていくという…。

解釈を文章にするとこんな感じにはなるのですが、直接的な語りをせずに映像や音(あの手拍子のリズム…)や会話のやり取りだけで、上記のような裏の意味が伝わってくるの面白いな~怖いな~と思いました。
あと、時代や場所のはっきりしない、不思議な世界観も良かったです。

▼洗浄

4作品の中では一番ストレートなホラーでした。
一番か弱そうに見えた(そして、他の連中はそれが普通と思ってやっているけど、それ一種の抑圧だよねって感じで、そんな空気を吸わされていた)主人公が、むしろ一番ヤバイ、怪異よりもヤバイってのが良かったですね~。
水鉄砲からのバケツが最高です。

そして、4作目のアルカイックスマイルのスーツ男が種明かしをしてくれていて、「抑圧に打ち勝てるのは虚無」と。

これは抑圧に虚無で打ち勝った話でもあるんだなと思いました。

▼VOID

これも辛い…。友達と家族の悪気のない同調圧力が辛い…。

アルカイックスマイルのスーツ男によると、「抑圧に打ち勝てるのは虚無」のようですが…。
『洗浄』の主人公は虚無パワー最強!って感じて打ち勝てましたが、こちらの主人公はどうなのか…。

最終的には抑圧に虚無で打ち勝ったように見えるのですが、それでいいのか…。虚無でしか打ち勝てないなんて悲し過ぎないか…。
みたいな、なんかどどーんとした心地でエンディングを見届けました。

爽快には終わってくれない…。
でも、それもいい。ホラーなので…。

【3】まとめ

ストレートにガーンとくる感じのホラーではない(ジャンプスケア0)のですが、映像や音やセリフから感じ取っていって観客の頭の中で恐怖が完成するみたいな感じがあって、とても好きな映画でした。

次回作(各監督の次回作も、こういう短編集の次の企画も)があれば観たいですね…!

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