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「nendo × サントリー美術館 information or inspiration?展」を見たほうがいい理由

現在、サントリー美術館で開催中の展示会「 information or inspiration?展」。
佐藤オオキ率いるデザインオフィスnendoが新しい日本美術作品の鑑賞方法を提案している本展示会は、単に日本美術の捉え方をアップデートするだけにとどまらない示唆を与えてくれる展示会だ。

1粒で2度美味しい「展示会構成」

「1つの展示会のようで2つの楽しみ方ができる」というコンセプトになぞらい、会場構成は、大きくinformation(左脳)エリアとinspiration(右脳)エリアの2つに分かれる。そして、同じ展示物を異なる2つの方法で読み解く。

informationエリアは、キャプションがメインの展示になる。展示物の成り立ちや構造が文字情報で記されている。inspirationエリアは、作品名さえもなく、展示品が様々な方法で展示されている。あるものは視界が狭められて隙間から鑑賞したり、またあるものは実際に手で触ることでその食感を感じることができたりする。

この展示会は順路が2通りある。informationエリアを鑑賞後にinspirationエリアを見るか、もしくはその逆か、である。どちらを選ぶかは鑑賞者に委ねられる。
こうやって1つのものを2つの視点で鑑賞させることで、日本美術に新しい視点を与えようとするのが本展示会である。

「左脳と右脳でたのしむ」って、結局なんなの?

この展示会のコピーでもある「左脳と右脳でたのしむ」。分かりやすく書けば、"information or inspiration"とは、Twitter とInstagramのことではないだろうか。

つまり、ビジュアル先行型のInstagramは、先に写真が目に入り、「これはなんだろう?」という疑問からキャプションを読むinspiration型の捉え方をするSNS。一方、Twitterは文字情報から入るinformation型のSNSだ。

つまり、簡単に言えば、「information or inspiration?展」は、同じものを「インスタ的な捉え方」と「Twitter的な捉え方」で表現した展示会なのだ。

情報との向き合い方を考える

「世の中には情報が溢れすぎている」

こんな当たり前のこともう誰も言わなくなってきた。そして、みんながうっすらと情報をすべて追うことを諦め、欲しい情報だけを見る時代が到来している。タイムラインで管理されて自分がフォローした情報しか流れてこない。それが最悪な形で現れているのはフェイクニュース。

では、正しい形で情報を求めるにはどうしたらいいだろうか?

佐藤オオキによれば、本展示会の目的は、左脳的な捉え方と右脳的な捉え方を一度意識的に切り離すことで、そこで抜け落ちた情報や要素、重複した価値に気づかせることらしい。

この展示を見た人は、右脳からも左脳からも抜け落ちた情報を必ず気がつくはずだ。つまり、"information or inspiration展"とは、同じ情報であってもInstagramとTwitterでは明らかに捉え方が異なり、その間に両者では表現できない情報の存在に気がつかされる展示会なのだ。
nendoの日本美術に対する鑑賞方法の提案は、切断によってこの問いを浮き上がらせる、かなり刺激的な試みである。そういう意味でこの展示会はめちゃくちゃ面白い。

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