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社会人4ヶ月目 発達障害に苦しむ

はじめに

画面の前の読者諸兄姉は、前回の記事を読んで頂けただろうか。未読の場合は、この記事を読む前に一読を勧めたい。が、読まずとも理解できるように書いたつもりである。

社会人となり、3ヶ月の月日を経た。今は働き始めて4ヶ月目である。その間、姉から離れ、都内での一人暮らしを始めた。プライバシーの確保された自分だけの空間で、充実したプライベートを送っている。これで仕事が順調……ならば文句はあるまい。しかし、そうは行かぬのが現状である。残念ながら、前回の記事の段階より状況は更に悪化している。発達障害に起因する様々な問題は、仕事量に比例するかのように肥大化し、ますます困難な状況に追い込まれているのだから。今回の記事では、現状抱えている困難と、今後の展望について述べて行こうと思う。

遅い、しかし不正確

一般論であるが、ADHDの仕事は「速い、不正確」と言われている。細かな所に目が行かず、「まぁ良いか」と言わんばかりにスピーディに物事をこなす。だが、その結果は非常にミスが目立つ。何せ、物事を大雑把にしか把握できていないのだから。

では、ASDはどうか? これも一般論ではあるが「遅い、正確」と言われている。細かな所まで目をやり、職人的なこだわりを持って物事をじっくりとこなす。その結果は往々にして瑕瑾無く正確であるが、余りにも細かい所まで注意を向け、通常であれば許容されるような誤差でも許容せずに細かい単位までみっちり仕上げたり、少しでも間違えると全て作り直したりする等、異様なこだわりを持って納得が行くまで行う為、スピードは非常に遅い。

それでは、両者を併発した私はどうなっているか? 両者の特性がぶつかり合って対消滅し、スピードも、正確さも「まあまあ」レベルになって……いれば文句は無い。しかし、そうは行かぬ。両者の特性が合わさり、最悪の発現の仕方をしたのだ。遅い、しかし不正確と。ASDの特性故か、細かな所まで気を配り、何度も見直して長い時間をかけて取り組む。自分の中では「これで完璧」と、納得がいくまでやり直す。しかし、いざ上司によるチェックが入るとあら不思議。自分の中では細かな所まで目を通したつもりが目を通しておらず、夥しい数のミスが発見される。それによって長時間の残業を強いられる事もあった。その様子は、上司からは「ふざけている」或いは「遊んでいる」ように見えるそうだが、私は至って真面目に取り組んでいる。真面目に取り組んだ結果がこの有様なのである。

頭の中がゴッチャゴチャゴッチャゴチャ

と、敢えて大袈裟な擬音で表現させて頂こう。

私の仕事では主に、紙に書いてある内容を元にパソコンにデータとして入力するのだが、紙に書いてある内容の内、どれを既に入力して、どれをまだ入力していないか分からなくなる事が多々ある。メモを取っていれば安心、と言えるかも知れない。しかし、そう甘くは無い。ADHDの特性としてしばしば指摘される、短期記憶の弱さが遺憾なく発揮される。どれをメモすべきか、という事すら忘れてしまう。紙に書かれたデータと、パソコンのデータ。見ているとどれがどれだか分からなくなり、混乱して入力がちぐはぐになってしまう。

また、常にほんのちょっとした拍子で注意が仕事以外の所に向かう。酷いものだと、過去に見たくだらない動画を思い出しては笑ったり、突然物語のアイデアが浮かんでそれに気を取られたりする等、斜め上としか言い様がないものまである。それらは極端な例であるが、クーラーの音などの日常の些細な雑音や、机の上にある消しゴムのクズと言ったどうでも良い情報すらも私の注意力を奪う。四方八方に注意が逸れ、常に注意力散漫である。しかし、そんな状態で良い筈も無い。余計な意識を振り切り、仕事に取り組もうとする。だが、それで仕事に集中できる訳でも無く、仕事の事と余計な事、両者の意識が混淆とした状態となり、何が何だか分からずパニックに陥る。余計な事を考えつつも仕事の事を考え、紙に書かれたデータと「どれがどれだっけ」と格闘する際の脳内はカオスとしか言い様が無い。まさしく、頭の中がゴッチャゴチャゴッチャゴチャしているのである。

余りにも下手な人間関係

これはASDに起因する問題であろう。私は人間関係が余りにも下手である。

僭越ながら、私の場合は話す事、それ自体にはさほど問題が無いように思える。そればかりか、過去には分かりやすく説明するのが上手い、と言われた事すらあった。だが、話す事に大きな問題が無く、寡黙な職人気質という体でも無いのが余計に人間関係の下手さを際立たせているようにも思える。具体的に言うならば、まず挨拶。これがきちんと出来ておらず、無視されたような感覚を抱いてしまうと指摘された事がある。

また、上下関係の意識ができておらず、年長者に対する敬意に欠いていると指摘された。私の会社は年配の社員が多く、私が最年少の社員である為、特に気になる所であろう。上下関係の意識が難しいのは、ASDに起因する人間関係の下手さ以外にも、部活動や子供会等の経験が欠如しており、単純な経験不足とも言えるかも知れない。但し、部活動や子供会に参加しなかったのも、ASDに起因する単独での行動を好む気質が主な要因である為、結局はASDに帰せられると言って良いだろう。

更には、社会人としての常識の欠如、暗黙の了解に対する理解に欠けているとも指摘された。しかし、私としては「常識」だの「暗黙の了解」だの言われても困る。はっきりと、「○○ができていない」と言って欲しいのである。だが、定型発達者にはそれらが当然のように理解できていると見做されるものである為、それが分からないという感覚が上司には分からないのだろう。互いに話が通じていないという事であり、実に困った事態だ。

常に眠く、身体はカフェインを求める

私が勤務しているのは石材工務店。私の興味のある分野は歴史、文学、人類学、そして鉄道。この興味の領域を見れば分かるように、石に興味は無い

当然の事ながら、誰もが「好き」や「興味」を仕事になどできやしない。それができれば、私はとっくに歴史の研究者か、小説家か、人類学者か、或いは鉄道ライターにでもなっている。必ずしも仕事に「好き」や「興味」が結びつく必要は無い。しかし、私の場合は興味が無い、という事が致命的な結果を招いている。それが仕事中に沸き起こる、猛烈な眠気だ。

こども発達支援協会によれば、発達障害の子供は、興味の無い事に取り組むと脳の報酬系回路が退化し、覚醒度が低下し、眠気に襲われるという。この記事の中で触れられているのは子供に関してであるが、大人でも同様であろう。日中、ずっと興味の無い事をしているものだから、いつも眠気に襲われる。私自身、これと言った自覚は無かったが、上司からは居眠りが目立つと言う指摘を受けた。

ずっと眠いから、それを紛らわす為に大量のカフェインの摂取を必要とする。無論、それで仕事に集中できるかと言えばそうでは無いのだけれども。カフェインの錠剤であるエスタロンモカの摂取が常態化しており、それ以外にもエナジードリンクやコーラ等、カフェインを含む飲料を摂取して眠気を必死に誤魔化している。だが、覚醒効果が切れれば私を襲うのは過剰摂取の副作用だ。過剰摂取の反動により、動悸、息切れなどの症状を起こしている。そのような症状を起こすのならば、カフェインは控えた方が良いのかも知れない。だが、それも無理な話である。カフェインを摂らなければ眠くなるのだから。

今後、どうすべきか?

ここまで不注意や人間関係の下手さが酷いと、会社の方から解雇を言い渡される可能性が考えられる。もしかすると、連休明けにも言い渡されるかも知れない。もし解雇されたら……そう考えると不安で仕方が無い。

現状のままでいれば取り返しのつかない事態を引き起こすのは目に見えている。医師や支援機関の助けを借りつつ、薬物治療の開始や、転職などの対策を考えるべきであろう。私は小学校低学年に発達障害の診断を受けて以来、薬物治療を受けずに療育に頼ってきた為、もし今後開始するとなれば初めての試みとなる。そうなった場合には改めて記事にしてみよう。

発達障害は病気では無く、障害である。一生治す事はできない。が、環境を変える事で困難を軽減する事はできる。ASDの症状として知られる癇癪も、実家にいた頃は親からの干渉に対して怒り、しばしば起こしていたものの、親と別居をした今では起こさずに過ごせている。薬物治療や転職によって取り巻く環境を変え、過ごしやすい環境に身を置く事、それが最も早い問題の解決の糸口であろう。今後、その方向で行動していこうと思う。

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