社会人になって1ヶ月 大人のADHDに悩む
就職はできたけど
新卒での就職に失敗した後、私は実家に戻り、1年コースのCADの職業訓練を受けた。それから1年を経た先月、学んだ技能を活かし、都内の会社にクローズ、則ち一般枠で就職する事ができた。現在はさいたま市にて姉と二人暮らし(一時的に、近い内に一人暮らしを始める予定)である。このご時世、解雇や雇い止めの話も多く聞く中、正社員として就職できたのは快挙であった。しかも、既卒扱いで入った為、既卒分の給与を得る事ができる。これは至れり尽くせり……とは行かないのが現状である。社会人になって1ヶ月、私の抱える大問題が首をもたげ、大いに悩ませている。そう、ADHDに起因する、不注意だ。
嘗ての悩み、現在の悩み
就職する前、私が最も悩み、心配していたのは癇癪だった。これは私が抱えるもう一つの発達障害、ASDに起因するもので、自分の思い通りに行かない時、自分のやり方を否定された時、自分のプライベートの領域に侵入された時……。そんな時に起こしていた。小学一年生の頃から療育を受けていた私は、ある程度コントロールする事が可能になっていたが、それでも全く抑制する事はできず、実家に住んでいた頃は母親に対して頻繁に癇癪を起こしていた。過干渉気味な人で、しばしば私の領域に侵入してきた事がその原因だったかと思う。入社前は、会社で癇癪を起こしてしまわないか恐怖に怯えていた。
現在は母親と別居した事で癇癪は収まり、精神的な落ち着きを取り戻し、会社でもプライベートでも今の所、癇癪を起こす事無く無事にやって行けている。癇癪に関しては一応は警戒はしつつも、これまでと同じように対処して行ければ良く、さほど悩む事では無いと思う。中学、高校、大学でも、一度も起こしていなかったのだから。
しかし、社会人になって1ヶ月。もはや問題では無くなった癇癪に替わり、別の問題が噴出し、私を悩ませている。大事な事なのでもう一度言おう。ADHDに起因する、不注意である。
とにかくミスだらけ
不注意優勢型、俗に言うのび太タイプのADHDである私は、子供の頃から細かなミスが非常に多かった。例を挙げるなら? 多すぎて具体例を挙げる事などできない。自分の中で完璧に出来たと思っていても、何かにつけて詰めが甘く、画竜点睛を欠く事態が多かった。それは現在に至るまで変わっておらず、社会人となれば子供の頃とは比べものにならぬ程、致命的な問題として降りかかる事になった。
私はAutoCADとExcel、その2つを駆使して発注伝票を作成する仕事をしているのだが、それが非常に困難を伴う。技能的にはさしたる問題は無い。AutoCADに関しては、まだ「未熟」と言える部分も多いとは言え。しかし、細かなミスが非常に多いのだ。しかも、そのミスは単純なものが殆どである。具体例を挙げるならばタイプミスで、数値の入力ミスで何度もやり直し、完成させるまでに非常に長い時間を要した。これでは仕事を円滑に遂行するのは非常に困難である。
どれがどれだっけ?
私の仕事では、入力すべき数値や通し番号が別のものに更新される事が多く、それらの指示をまとめた、謂わば「バージョン違い」の紙が手渡される……のであるが、沢山の紙があるとどの紙が最新のバージョンであるか分からずに混乱してしまう。古いバージョンの紙と気付かずに数値や図を入力しており、それが原因で入力し直しになる事も多い。「どれがどれだっけ」と、正しい紙を探して四苦八苦。余計な時間をかけ、作業量も増えてしまう。結果、長時間の残業をせざるを得なくなってしまう事もあった。
気付けば他の事、続かない集中力
ADHDでしばしば問題とされるのが集中力の無さで、仕事をしていても集中力が続かず、気が付けば他の事を考えている事が多い。それも斜め上の事ばかり。例えばこんな事があった。仕事に関する話の中で「キャビネット」と言う言葉が出てきた時、私は斜め上としか言い様のない事を思い浮かべていた。それはドイツの古典映画「カリガリ博士」である。
「カリガリ博士」の原題は"Das Cabinet des Dr.Caligari"
ついこの前観て、実に深い感銘を受けた映画であるが……。「キャビネット」と言う言葉が出た途端に、「カリガリ博士」の事を思い浮かべて、頭が一杯になってしまい、仕事の事が頭に入らないという大失態を犯した。自分が興味のある事に結びつく単語が関係無い所で出ると、興味のある事を思い浮かべて心ここにあらず。これも具体例を挙げるとなると多すぎて困難だ。過去に何度もあった事だ。
更に言うなら、仕事中はノイズだらけで、救急車のサイレン、職場の人達が交わす会話、虫が飛ぶ様子やその音……視覚、聴覚として入るあらゆる情報がノイズとなり得る。これが実に厄介で、それに気を取られて意識がそちらの方に向いてしまい、意識が仕事に向いていない事がある。そしてそれが、ミスを誘発する原因ともなっている。
にも関わらず完璧主義
これだけミスが多く、集中力に欠けているにも関わらず、ASDのこだわりの特性が出た為だろうか、変に完璧主義な所がある。これが仕事の遂行を妨げている。1つミスが見付かっただけで、全てデータを破棄して、最初からやり直す事もあった。やり直してはミスをして、やり直してはミスをして……と、何度も同じ作業を繰り返し行い、何時間もかけてようやく完成させる事がある。ADHDとASDは不注意と完璧主義に代表されるように、矛盾する所が多く、併発している私は片方の問題がもう片方の問題を更に大きくしてしまう事がしばしばある。また、ADHDにもASDにも長所と呼べる所もあるが、それをもう片方が打ち消してしまう事も多い。
対処法は?
これ程までに不注意が酷いと、今後、仕事の進行に大幅な支障を来し、解雇されるリスクが考えられる。絶対に避けたい所だ。
障害者枠、と言う手段もある。しかし、私としてはそれは極力避けたい所だ。障害者枠の給与は低く、実家暮らしで無いと生活がままならない場合が多いが、実家暮らしとなれば母親に対して癇癪を起こす事が多くなり、精神的な不安定に陥る。更には、現在は就職状況が非常に厳しく、現在の仕事を辞めても障害者枠で転職できる保証など無い。私の務める会社は中小企業である為、障害者雇用の義務は無く、現在の会社で発達障害を明かして障害者枠に切り替えるのも困難であろう。
そこで、私が現在考えている対処法はコンサータの服用である。ADHDの治療薬で、注意力等、ADHDに起因する問題を改善させる薬だ。勿論、万能薬では無い事も、副作用等のリスクもある事も承知だ。が、この状態が続けば取り返しのつかない事態を引き起こすのは目に見えている。同じくADHDを抱える姉もコンサータを服用し、特に問題無く仕事を行えているそうであるから、私も処方を受けて、服用する事を検討している。まずは、最も身近な人で、既にコンサータを服用している姉に相談する事から始めてみようと思う。
おわりに
ADHDは決して治る事は無く、一生向き合って行かなければならない。私は厳しい状況の中、やっとの思いで就職できた身だ。不注意でそれを台無しにしたくは無い。手にした仕事は続けていきたいのだ。その為には、やはり今の所はコンサータの服用が最善の策であると考えている。しかし、それでも改善しなかった場合にも備え、次善の策も考え、用意していきたい。大人の発達障害、そんな困難な問題に立ち向かい、乗り越えて行きたいと思う。
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