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Truth Hits Everybody

いくつになっても、自分の好きな作家の新刊が出るのは喜ばしく、胸が弾むものです。これは、そんな浮かれた私が思うままに書き連ねた、ただの妄想です。


銀の本

先日、技術評論社から『 オブジェクト指向 UI デザイン - 使いやすいソフトウェアの原理 』という本が発売された。表紙にはタイトルの他に銀色の文字でこう刻まれている。

 銀の弾丸、OOUI。

OOUI という言葉が、日本のソフトウェア業界に爆発的に広がったのは、 2018 年 10 月の WEB+DB PRESS 特集記事『 速攻改善 UI デザイン 銀の弾丸! オブジェクトベース設計 』( ※1 ) がきっかけだろう。

もちろん、それ以前どころか 80 年代からその思想はあったし、実践している人も数多くいたが、2000 年代以降は現在ほどメジャーではなく、ソフトウェア制作の大規模化、分業化の中で埋もれてしまっていた。

それが、WEB+DB PRESS の特集を読んだエンジニアの間で話題になり、業界に旋風を起こすこととなった。あまりに状況が変わってしまったので、もう遠い昔のことのように思えるが、あれからまだ 2 年もたってない

おそらくそんな経緯もあって、この本は WEB+DB PRESS plus シリーズとして刊行されている。だから、一見してタイトルにある “ UI デザイン ” という言葉でイメージする、デザイン書のようでは形ではなく、同じシリーズで著名な、例えば『 Webを支える技術 』( 山本 陽平 著 ) などと似た風貌をもち、かなり技術書然としている。ソフトウェア業界の世界線を変える、今世紀最大の革命的な本にしては幾分大人しい。特集記事のサブタイトルであり、表紙にも書かれた “ 銀の弾丸 ” を想起させる銀色が少し尖っているくらいで。

おそらくこの本は書店でも図書館でも、デザイン書ではなく、技術書の棚に並ぶだろう。けれど、それはそれで、このフォーマット感あるストイックな装丁は、なかなか良いのではないかと私は思っている。というか、もう著者名が表紙にあるだけで、この世で一番美しい本ではないかという気がしてくる。え、そんなことはないですか、そうですか。

しかし名著はたいてい、特徴的で奇抜なスタイリングがされたものではなく、素っ気ないシリーズもののフォーマットの中に隠れているものだ。ティーンズハート文庫の悪霊シリーズも、理論社のファンタジーと冒険シリーズの『 星の砦 』も、インプレスの辞典シリーズの『 標準ウェブ・ユーザビリティ辞典 』も。

そもそも私がかつて『 標準ウェブ・ユーザビリティ辞典 』を手に取ったのは、辞典シリーズだったからだし。

" ウェブの制作に携わる全てのスタッフは、ユーザー中心の設計思想をもって、ウェブという急速に発展する複雑なメディアのデザインに取り組まなければなりません。それはさまざまなトレードオフに直面しながらデザインの本質を追求していく果敢な挑戦なのです ”
 -『 標準ウェブ・ユーザビリティ辞典 』ソシオメディア 編著


技術書のフリをした続編

『 標準 ウェブユーザビリティ辞典 』というのは、『 CSS 2 スタイルシート大辞典 』とか、『 標準HTML、CSS&JavaScript 辞典 』などを出しているインプレス社の “ インプレスの辞典 ”シリーズの本の一つで、2003 年刊行のソシオメディア社 編著 の書籍だ。

正直、当時私はこの本がどこの会社の誰の手によって書かれたものなのか全く頓着していなかったのだが ( ※ 2 )、私の人生にハイパーテキストとか、ユーザビリティとか、アクセシビリティという言葉をもたらした、それなりに重要な本である。

構成は、ウェブ・ユーザビリティについての 100 のスタンダードと、それについての BEST CASE、BETTER CASE、BAD CASE が具体的に提示された、わゆる「べき・べからず集」がメインになっている。

この「べき・べからず集」はやがて、パターン集へと展開する。オライリーの『 デザイニング・インターフェース 』の監訳、ソシオメディア社の Web サイトで現在も公開されている UI デザインパターン。そしてそこから、一貫性のある原理にたどり着く。そう、書かれてから 10 年経った今も、多くの人々に愛読されているブログ...小説『 Modeless and Modal 』( ※ 3 ) へと。

そして今回、その魂を受け継ぎ、確かな理論と実践を備えた新刊『 オブジェクト指向 UI デザイン - 使いやすいソフトウェアの原理 』が登場した。

つまり、オライリーの『 デザイニング・インターフェース 』が『 Modeless and Modal 』のスピンオフと捉えるなら ( ※ 4 ) 、今回刊行された新刊は、『 Modeless and Modal 』の実質続編といえるだろう。

待望の、続編である

“ 監訳注:モーダル:モードがある状態。ユーザーインターフェースにおいて、ある操作の意味が状況によって変化する場合、そこにはモードがあるといえる。いつも使える機能が、ある状況下では使えなくなるといった場合でもモーダルな状態といえる。逆はモードレス ”
-『 デザイニング・インターフェース 』ジェニファー・ティドウェル 著 浅野紀予 訳 ソシオメディア株式会社 監訳


目当て( オブジェクト )をどう現すか

水を打ったように静かなホールに最初の一音が響くような “ はじめに ” の荘厳な出だしについてはさておき、この本では「 Object 」の日本語訳としてしばしば「目当て」という言葉を当てており、これは『 Modeless and Modal 』にはなかった表現だ。

たしか、WEB+DB PRESS の特集記事後に行われた 2019 年 2 月のWorld IA Day TOKIO での講演、『 OOUI の目当て』 が初出ではないか ( ※ 5 ) と思う。この「目当て」という、小学生の頃にやたら聞いたごく身近な表現の登場は、少し不思議な感じがするかもしれない。

すごい孫引きで恐縮だが、『 脱近代宣言 』という鼎談集 ( ※ 6 )に、『近代数学史談』高木貞治 著では「 Object 」を「目当て」と訳しており、それが “ 検討をつけて制作するという含みがある ” ので面白い、という話が出てくる。

確かに「オブジェクト」というとその時によって、物とか対象とか色々な風に訳されており、それがこの言葉に何か誤解や、掴み所のなさを与えてしまっているように思う。しかし「目当て」という言葉がそれを幾分明確にした。これはかなり重要なのではないか。

この言葉選びが『近代数学史談』の影響かどうかは判然としないが、しかし明治生まれの数学者の本で採用された訳が、この本の主題として出てくるのは面白いと思った。『 Modeless and Modal 』以降の言葉として興味深い。

ところで、技術書や思想書のまえがきや序文は、読み始めた時はそれほどでもなくても、読み終わった後、実践する中で何度も読み返したりする、かなり重要なものだ。

UI デザインの本で 300万年前まで歴史を翻ってその原理を説くものは珍しい気がするが、どこか詩情溢れるこの “ はじめに ” は、この先何度も読み返され、引用され、実践者の心の支えになることだろう。人類はじめての道具である石器のイメージと共に。

しかしこの “ はじめに ” にある、筆者のタスク指向の UI に対する言葉に、『 Modeless and Modal 』を知らない読者は、少し面食らうかもしれない。特にこの本を、何か自分の仕事に役立てようと思って読み始めた人は、そこまでいう必要があるのか、と感じるだろう。

けれど、これは最初からイデオロギーについての本なのだ。いや、別に仕事の役立ててもいいんだけどさ。ともかく、著者の真意は分からないけれど、私はそう思っている。だって『 Modeless and Modal 』の続編なのだから。 “ はじめに ” だって、Afterword の後に読めば、何の違和感もない。

“ だから極端に言えば、タスク指向=従属的に行動するだけのシステムに、UIはないのです。そこにあるのは一方的な徴用性だけです。” 
-『 オブジェクト指向UIデザイン - 使いやすいソフトウェアの原理 (WEB+DB PRESS plus) 』 上野 学、藤井 幸多、ソシオメディア株式会社 著


タスク指向とオブジェクト指向

この本ではまず、タスク指向とオブジェクト指向について、具体的な例を用いて丁寧に解説している。基本的には『 Modeless and Modal 』およびそれ以降、ソシオメディア 社の Web サイトやセミナー等で語られていた内容をアップデートしたものだ。ちょっと続編が出るまでに数年たってしまった小説に「前回までのあらすじ」と称して概要の説明があったりするが、それのような。

アップデートされている物としては、例えば Human Interface Guidelines からの引用がある。Pandora では、アジソン・ウェスレイ・パブリッシャーズ・ジャパンにより発行され、新紀元社が再発行した日本語訳を引用している。しかし新刊では引用元として原書が記載されており、刊行されている日本語訳とは別の訳がついている。確かに日本語版における該当箇所の訳は少し意味がわかりづらかった。この本の新訳は上野 氏によるものかもしれない。

他には、オブジェクト指向 UI の原則について。これは、 Counterpart の方法論をより精鋭化させたものになっている。また Business logic にある “ モードを作らざるを得ない状況 ” については、例に合わせて券売機が ATM になっていたり、トランザクションの話がなくなっていたりしている。

しかし、全体的な流れは大きく変わっておらず、Conscious 以降の内容が主になっている。中でも、自動販売機は『 Modeless and Modal 』の最後に出てくる象徴的なタスク指向の UI だ。Afterword での書きっぷりからすると、随分マイルドになってはいるが。

“ 僕はよく自動販売機で缶コーヒーを買うのですが、あの釣銭返却レバーを見るたびに、そこに無反省なブルジョアジーを感じて気分が悪くなるのです。なぜ自販機というのは硬貨投入が先で商品選択が後なのでしょうか。”
- Afterword 『 Modeless and Modal 』上野 学 著


ソフトウェアの原理

実践のためのプロセスについて、その原理と共に詳細に書かれているのも本書の特徴だ。基本的には前述にある雑誌の特集をアップデートしたものだが、風刺のきいた漫画イラストとともに、分かりやすい言葉で順を追って解説されている。

そう、この漫画。この漫画ですよ。

10 年くらい前から Web 業界にいた人で、この漫画の絵を知らない人はいないだろう。あの頃の Web デザイナーは IE とかspacer.gif と格闘しながら、みんなブログ『 あとちょっと良いサイト 』( ※ 7 ) を読んでいたのだ。読んでなかった人がいたらその人はもぐりだ。つまりこの本は、天才作家と巨匠漫画家の共著でもあるわけだ。なお IE との闘いはまだ続いている。

そんなプロセスの説明の中で、ISO9241210 人間中心設計活動プロセスについてあげ、オブジェクト指向 のモデリングが、その「 ユーザーの要求事項 」から「 ユーザーの要求事項を満たす設計による解決策の作成 」をつなぐミッシングリンクだと語られていることに、私は注目したい。

「ユーザーの要求に従うのではなくオブジェクトに従うべき 」つまり「ユーザに合わせたデザインではなく、ユーザーが合わせられるデザイン」という主張は、『 Modeless and Modal 』が執筆された当時、標準的に語られていたユーザー中心設計の方法論を否定するものでもあった。 だから、あのブログは、強い思いと勇気を持って書かれている ( ※ 8 ) 。

その、10 年前の “ かいしんのいちげき ” である “ 原理 ”が、いま現在、書籍の形になって鮮やかに語られるというのは、実に感動的だ。

“ レストランに例えれば、顧客を調査した結果として「おいしいハンバーグが食べたい」という要求がわかったとしても、そのことと「おいしいハンバーグの作り方」との間に直接の関係はないのです。”
-『 オブジェクト指向UIデザイン - 使いやすいソフトウェアの原理 (WEB+DB PRESS plus) 』 上野 学、藤井 幸多、ソシオメディア株式会社 著


ストライダー

表紙にあるように、この本には「 18 の実践演習 」がある。プロセスや哲学を語るだけでなく、手を動かして実践し、理解を深められるのだ。

この「 ワークアウト 」と呼ばれる演習は、やったことがある人は分かると思うが、それ自身が非常に楽しいものだ。それでは目的と手段を取り違えていると言われそうだが、特に UI の見た目だけを手掛かりに、何とか形にしようと煮詰っていたデザイナーは、モデルとインタラクション、プレゼンテーションを行き来しながら作っていくのが楽しくてしょうがないと思う。

オブジェクト指向 UI デザインの実践は、いわば補助輪なしの自転車に乗るようなものだ。自転車の乗り方についていくら詳細な解説を聞いても、自転車に乗れるようにならない。結局は自分でペダルを漕ぎ始めなければならない。何度も横転して怪我をしながら自転車に乗れるようになった記憶がある人も多いだろう。

しかし最近ではペダルなしの自転車として「ストライダー」というものが出現している。このペダルなし自転車にしばらく乗るだけで、ほとんど苦労することなくスムーズに補助輪なしの自転車が乗れるようになる。そして、「ストライダー」は単なる自転車に乗るための補助的な道具ではなく、それ自体が乗っていて楽しいものなのだ。そもそも自転車には最初ペダルがなかったらしい。

この本で紹介されている「 ワークアウト 」は、このストライダーのような発見だと思う。それに取り組むこと自体がとても楽しくて、実践への橋渡しにもなっている。そして実践を重ねたあとでも、楽しんでやることができる ( ※ 9 ) 。どちらかがどちらかの劣化版ではないのだ。

WEB+DB PRESS plus シリーズの本ということもあって、購入者はエンジニア、もしくはコードもかけるデザイナーが多いかもしれないが、このワークアウトは、グラフィックが得意だけど、コードは苦手、みたいなデザイナーにこそ実践して欲しいと思う。

演習では付箋に書かれているタスクからオブジェクトを抽出する基礎編と、タスク指向のデザインの UI からオブジェクトを抽出して改善する応用編がある。演習に加えて、レイアウトやコレクションビューの表現、CRUD についてのパターン集や、実践する上で誰しも疑問になるような、メインオブジェクトの選び方や、ルートナビゲーションについて、タスクの扱い方についても解説されている。

中でも『 Modeless and Modal 』の読者として気になるのは、応用編の課題だろう。Complexity“ 全体の 1 %ぐらい ” しか到達できないと書かれている実習の内容が、ものすごく丁寧に解説されており、読んでいてちょっとニヤニヤしてしまうのだった。

“ こういうモードレスなデザインができる人は、全体の 1% 未満です。”
- Complexity 『 Modeless and Modal 』上野 学 著


フィロソフィー

オブジェクト指向 UI の哲学について記された 6 章は圧巻である。Conscious にあった懐中電灯、GestureUser-Side にあったジェスチャについてなどの『 Modeless and Modal 』でも取り上げられていたものに加えて、前述の World IA Day TOKIO での講演「 OOUI の目当て 」でも言及されていたプラトンの洞窟の比喩から、ハイデガーやグレアム・ハーマンの存在論まで。

この古くて新しいオブジェクト指向 UI について、筆者と共に改めて発掘していくような構成に、好奇心がかき立てられる。“ はじめに ” にあった石器の写真。あの石器を土の中から丁寧に掘り起こしていくような。特に歴史的に CUI よりも GUI が先だった、というのがとても面白い。もちろんモードレスについても多くの文献を引用しながらその歴史について順を追って解説されている。

そして、オブジェクト指向UI に関する文献の紹介と巻末のブックリスト。デザイン思想、パーソナルコンピューター思想、ユーザーインターフェース設計、OOUI、哲学のジャンルについて 30 冊もの参考文献が提示されている。当然といえば当然だが、そこには『 Modeless and Modal 』もある。

この中で個人的におすすめなのは『 Modeless and Modal 』にも登場する、ある本だろうか。それを読んだあとまた “ はじめに ” を読み返したら、きっとニヤリとしてしまうだろう。どの本なのかは秘密である。

“ 主体から客体を見るという膠着したパースペクティブを転回し、統合的な「主体である客体」の視点を持つことは、これまでの物理世界では困難でした。しかしソフトウェアからのフィードバックによって我々の認識が脱構築していくこれからの世界では、各々がクラス=真存在の制作者になれるのです。”
-『 オブジェクト指向UIデザイン - 使いやすいソフトウェアの原理 (WEB+DB PRESS plus) 』 上野 学、藤井 幸多、ソシオメディア株式会社 著


SF ですか?それとも予言書?

実は、私が最もエモーショナルだと思ったのは “ あとがき ” である。これまた引用したくなるような文体での本書の締めくくりと共に、ごく簡潔に謝辞が述べられたこの “ あとがき ” にはこんな一文がある。

“ 特に、20年近くも私のデザイン言論を評価いただき、書籍化に繋げてくださった、編集者の久保田祐真さんに深く御礼申し上げます。”
 -『 オブジェクト指向UIデザイン - 使いやすいソフトウェアの原理 (WEB+DB PRESS plus) 』 上野 学、藤井 幸多、ソシオメディア株式会社 著

久保田さん...?

ここで『 Modeless and Modal 』の Afterword にコメントを今一度確認してみる。

くぼた says:
January 9, 2010 at 12:41 am
堪能しました。
いや、正直、私にはむずかしくてよくわからなかったんですが、ただごと(もの)じゃないってのだけは、よ〜くわかりました。
にしても、小説だったとは……。SFですか? それとも予言書?
ueno says:
January 9, 2010 at 12:57 am
あ、いつもありがとうございます。
これはあれです。大衆小説です。「てんやわんや」みたいなのを目指したんですけどね。ってこの前言いませんでしたっけ?
言ってないか。

そう、“ あとがき ” に登場する “ 久保田さん ” と、 Afterword の “ くぼた ” さんは同一人物なのだ。( ※ 10 )

タイムスタンプを見れば分かる通り、このコメントが書かれたのは、『 Modeless and Modal 』脱稿当初、つまり 10 年前である。10 年前の伏線を、この “ あとがき ” で回収しているのだ。

いや『 Modeless and Modal 』の方がもともと、この革命的な本、『 オブジェクト指向UIデザイン - 使いやすいソフトウェアの原理 』の誕生を、予言するものだったのかもしれない。


銀の弾丸に撃たれて消えるのは?

WEB+DB PRESS 特集記事 の時もそうだったが、フレデリック・ブルックスの『 人月の神話 』 に出てくる「 銀の弾丸 」という言葉が表紙に刻まれていることは、少し物議をよんでいた。要するに「OOUI は銀の弾丸だ」「いや OOUI は銀の弾丸ではない」みたいな話なのだが、私はあまりそれについて興味がない。

私としては、タスク指向かオブジェクト指向かという話は、どのように在るかで、かつどのようにしか在ることができないかに他ならず、それが良いとか悪いとかいう話ではない。思想だから。まあ、弾丸って要するに拳銃だし、拳銃ってどちらかというとタスク指向な権力の象徴な気がするし、OOUI のコンセプトと合わないのでは?という風には少し思う。デザインとか開発に拳銃を持ち出すのは何だか物騒だから。

それはともかく、いま、この本を手にした人々が次々にその感想を述べている。そして会社で輪読会を企画したり、ワークアウトをやろうという話がいくつも立ち上がっている。これにはソフトウェアデザインが、GUI が本来の姿を取り戻していく可能性を感じる。いまの状況に私はとてもワクワクしている。

オブジェクト指向 UI デザインの実践のためには、仕事のやり方を、開発のための組織を変革しなくてはならないこともあるだろう。これまでの知識や経験では歯が立たないと自覚し、危機感を覚える人もいるだろう。そしてそのために会社を変わる人も出てくるだろう。混乱もあるかもしれない。

OOUI が銀の弾丸かどうかは分からない。けれど少なくとも、この本に書かれた真実によって、デザインとエンジニアリングで分断され、膠着したソフトウェアデザインのプロセスは撃ち抜かれてしまったのではないだろうか。もうこの本がなかった世界線には戻れないのだ。

“ 機は熟していると思います。我らが歩武の先頭には、すでに先人の掲げた反旗が翻っているのです。 ”
- Manifesto of the Modelessist Party - Complexity 『 Modeless and Modal 』上野 学 著

* * *

追記
“ 銀の弾丸 ” について筆者のブログ
...なんだこれストレートにかっこいい。必読です!
https://modelessdesign.com/backdrop/544

※ 1

※ 2
実は私がこの本がソシオメディア社 編著だということに気づいたのごく最近である。すみません。

※ 3
まさか知らない人がいるわけないと思いますが、今回の新刊はこの続編です。

※ 4
『 デザイニング・インターフェース 』は、それ自体が『 Modeless and Modal 』のエピソードとして出てくる。だけでなく、序章にある最初の監訳注では引用にもあるとおり、文中の「モーダルウインドウ」の「モーダル」にかこつけて、いささか強引にモードレスとモーダルについての解説がされている。

※ 5

※ 6

※ 7

※ 8
電子書籍版のあとがき『 AFTER 10 YEARS 』で言及されているので、未読の方はぜひ電子書籍版を。え、まさか『 Modeless and Modal 』自体は未読ではないですよね。

※ 9

※ 10
本人確認済み。

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