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久米島紀行④球美の島、アーサと言ったら久米島

久米島は車エビの生産全国第一位である。
久米島のみならず、沖縄の車エビ養殖は盛んで、毎年11月~3月にかけて、尾っぽの先が虹色に輝く活きの良い車エビを堪能することができる。

車エビはおいしい。
しかし、私は久米島のアーサ(あおさ)ほどうまい海草を食べたことがない。久米島のアーサは旨味が強く、海草一つひとつの繊維がしっかりしているにもかかわらず口に入れると久米島の海そのものを味わっているかのような潮風を感じ、まろやかにホロリととける。
みそ汁、天ぷらはもちろん、スパゲッティーをフライパンで軽く炒め皿に盛り付け、その上にアーサを山盛りに乗せ、軽くかき混ぜるだけで、アーサのコクと風味がこれでもかと主張する一品になる。

久米島のアーサを知ったきっかけは、Facebookの久米島漁業協同組合の投稿だった。
新型コロナウイルス感染拡大の影響が出て、出荷する予定だった乾燥アーサの在庫を大量に抱えてしまい、来年の生産量に影響が出てしまいそうだという。
久米島のアーサは良質で味が良く、ここ数年出荷が好調だったため、コロナの影響が大いに出ている。
在庫解消のために価格を抑え、ある程度まとまった量を販売するので、欲しい方は連絡を下さい。
というようなことが書いてあった。

久米島の人達が困っている。
胸がザワついた。
テレビでは消費応援キャンペーンなどと銘打って、全国で同じような悩みを抱える生産者を支援する取り組みが始まっていることは知っていた。
それなら私も、という気持ちと少しでも久米島を側に感じたいという思いが生まれた。スーパーではおよそ20g程度ずつ売られていることが一般的であるが、ここは思いきって1kg購入だ。

久米島の車エビは何度か食べたことがあったが、アーサを味わった覚えがない。スーパーマーケットの棚に並ぶアーサを想像していた私は、届いた乾燥アーサを水に戻し度肝を抜かれた。
パリパリとした乾燥アーサを一掴みし、ボウルに入れ水を注ぐ。数分後、アーサは見事に膨れ上がり、ボウル一杯に広がった。アーサが湧いて、今にもボウルからこぼれ落ちる勢いだ。
水気を絞ると手のひらで綿あめを思わせるフワフワの弾力である。まるで、両手の中で久米島を包み込んしまったかのようだった。
アーサの緑色は水分を得て光り、鼻を近づけると上品な磯の香りが脳を刺激する。

全部一人占めにしたかったが、年末の挨拶も兼ねて両親や妹、近しい人たちに送ることにした。
皆、一様にアーサの旨味に驚き、「こんなおいしい海藻は食べたことないよ」と好評だった。
1kgのアーサは一瞬でそれぞれの胃袋に納められた。

先日、スーパーマーケットで、ある場所の乾燥アーサを購入しパスタを作ったが久米島のアーサと比べるに価する物ではなかった。

アーサと言ったら久米島。
もはや久米島以外のアーサを私の舌は受け付けない。
罪な味覚を持ってしまったのです。

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