マガジンのカバー画像

かごめ

16
運営しているクリエイター

2020年10月の記事一覧

脚本 「かごめ」 第八場

■第八場
  前前場から10日後。昼すぎ、曇り空。美羽のアパート。美羽、玲奈、良玄、トキオ、洋一郎がいる。部屋は前より整然としている。青い花(造花)が、飾られている。
  美羽は、家族の事、特に父の事について語り終えた。
  美羽は布団から半身を起こしている。淡々とした表情。玲奈は呆然とした表情で美羽の傍にいる。良玄は美羽と正対の位置にいて、まっすぐに美羽を見て冷静を装う。トキオは良玄の隣にいる。

もっとみる

脚本 「かごめ」 第七場

  美羽、良玄、トキオ、玲奈、洋一郎、紅葉、裕次が、「かごめかごめ」で遊んでいる。真ん中の鬼は美羽。他は美羽を囲んで笑顔で踊り、歌う。
全員「かごめ、かごめ。かごの中の鳥は、いついつ出会う。夜明けの晩に、鶴と亀がすべった。後ろの正面、だあれ?」
美羽「お父さん?」
裕次「あたり!(その位置にいない場合は『お父さんはここ!』)」
  裕次が話した途端、良玄、トキオ、玲奈、洋一郎、紅葉は裕次をにらむ。

脚本 「かごめ」 第六場

  前々場の翌日、美羽のアパート、深夜。小雨。
  美羽は浅い眠りから覚めて、半身を起こす。じめじめした部屋の空気に顔をしかめる。布団の脇に置いてあるペットボトルの水を少し飲む。
  そこに、美羽の空想上の玲奈があらわれる。
玲奈(空想)「美羽。」
  美羽は、少し寝ぼけている。
美羽「あ、玲奈。お弁当買ってきてくれたの? 」
  玲奈は、おごそかな口調で語る。
玲奈(空想)「私は来たくてお前のと

もっとみる

脚本 「かごめ」 第五場

■第五場
  内山洋一郎の自宅。家族で夕食。テーブルにいるのは、洋一郎と、母の美千代、妹の紅葉。父の鉄幹は少し離れたところの小机で、一人で夕食のおかずをつまみに酒を飲んでいる。
  全員黙々と下を向いて食べている。
  鉄幹はテーブルの方を見ずに言う。
鉄幹「ごはん! 」
  美千代がお茶碗にご飯を入れて、鉄幹のもとに歩み、茶碗を差し出す。
美千代「はいお父さん。一杯でいい? 」
  鉄幹は答えな

もっとみる

脚本 「かごめ」 第四場

■第四場
  美羽が8歳の頃。冬、昼過ぎ、快晴。父の裕次が務める健康食品会社のオフィス内。5人ほど従業員がいる。部長用の大きな机がオフィス奥にある。机上には赤い花(造花)が飾られている。部下の粗末な机と椅子が並ぶ。
  部長が、手に持っていたコーヒーカップを、裕次に投げつける。陶器製のカップは床に落ちて割れ、激しい音がなる。

部長「アポイントメントをキャンセルされましたじゃないよ!! これで何回

もっとみる