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【読んだ】物理学者のすごい思考法

おすすめ度 ★★★★★

めちゃくちゃ面白い。
科学者が書いてる本なのに、抱腹絶倒の面白さ。
タイトルとか帯の「役に立つマジメ系」に騙されてはいけない。
全力で笑かしにきてる。
橋本幸士さんの文才に、感服。

以下、面白いものを「面白い」としか表現できない語彙力のわたしが「面白」を多用していることをお許しください。

「はじめに」からもう面白い。
読んでみようと思った方は、まずここだけ読んで好みを判断してほしい。

一番面白いのは第一章「物理学者の頭の中」。
ほんとに物理学者ってこんな事考えているのかと驚愕しながら笑える。
どれも3-4ページのコラムなのでどんどん読める。
セリフが全部関西弁なのも良い。

例えば、家族でギョーザを作っていたら、突然ソレは始まる。

明らかに理論物理学者の登場の舞台である。ギョーザの皮と種を、ぴったり、どちらも余らせることなく作り終えるにはどうすればいいだろうか。
僕は瞬時に解法に達した。

そして、画期的なアイデア「UFOギョーザ」を提案し、子どもたちに作らせる。その間に著者は手を洗い、ペンを握り、あーだこーだ考えて「ギョーザの定理」を完成させる。
実際に手書きの証明が書かれたページも載っている。

「定理:具の量と比較してギョーザの皮がn枚足りない時、創るべきUFOギョーザの数はおよそnである」

ここからつづく証明の意味は全くわからないが、そこから漂う狂気は十分に感じ取れる。


ギョーザだけではなく、エスカレーターの乗り方や、徒歩通勤の経路分析、スーパーマーケットの攻略法など、生活のあらゆるところで物理学者の思考法が展開されている。

ちょいちょい家族に白い目でみられている様子も、親近感がわいてくる。
同じ物理学者であるファインマンさんの話にも近いものがあったな。
(この本にもファインマンさんの理論や定理が何度が出てくる)

ただ楽しむためのコラムとして読んでも十分に面白いが、読むうちに物理学の考え方というか、世界の捉え方みたいなものが何となくわかってくる。

科学者というと、なんだかとんでもないインテリで別世界の人だと思いがちだけど、当然ながら彼らも人間なのだ。
好き嫌いもあるし、憧れたり挫折したり悩んだりしている。(ちょっと常人とは観点が違うけど)

第一章でぐぐっと親近感を抱かせておいて、第二章・第三章とすこしずつ専門的な話が織り交ぜられていく。
あいかわらず「にんにくを剥く」とか「歩数計を欺く」とか面白ネタがベースになっているし、毎回オチが面白いので、投げ出さずに読める。

著者なりの科学に対する想いや考えも、おのずと敬意を持って受入れられてしまう。


私はド文系の人間で、数学の微分積分など、受験のためだけにつめこんで1ミリも覚えていない。サインコサインタンジェントも言葉しか覚えてない。

それでも、どこかでそういうものを使って、世界の成り立ちを考えたり、ニンニクの皮を剥くことを考えたりしている奇人変人科学者が、同じ地平にいることに敬意なのか、驚異なのか…とにかく想いをはせてしまう。

そんな本。

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