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【読書記録】児童書 かわいい子ランキング

おすすめ度 ★★★★☆

タイトルと表紙のポップさに似合わず、ルッキズムをテーマにした深い内容の小説。読んで良かった!
児童書ではあるけど、ヤングアダルト向けかな。
容姿に悩みだす思春期の子や、その親にもおすすめできる良い作品。


あらすじ

中学校の生徒たちにいっせいにメールで送られてきた、学年のかわいい女の子ランキング。みんなのあこがれだったソフィーが2位で、1位は地味なイヴだった。イヴは注目をあびることに苦痛を感じ、ソフィーは1位じゃなかったことに屈辱を感じ、そして他の女の子たちも、それぞれに傷ついていた。イヴ、ソフィー、それにイヴの親友のネッサの3人は、ランキングを書いた「犯人」を見つけようとするが……。

Amazonの紹介文

こんな感じでAmazonで紹介されているとおりのお話なんだけど、単純に「ルッキズムはくだらない」というストーリーではない。
ルッキズムはくだらないと思いつつ、じゃあ自分の「可愛くなりたい」「認められたい」という気持ちはなんなのか。何のために化粧するのか。などなど、理想と現実との葛藤がうまく表現されている。
アメリカの作品なので文化も違うんだけど(ダンスパーティーってほんとにやるんや)、それを差し引いても、思春期の心理がうまく描かれていると思う。

親の視点で読む

私が思春期のときは、こんなこと議論すらされていなくて、男子も女子もお互いにランク付けしあってた記憶がある。今でもそうなのかな。
今ならその愚かさ、というより加害性が理解できるけど、未だに「え?そんなのよくあることでしょ?大げさじゃない?」という大人も多いと思う。

もし我が子がそんな風に言われたら、どう声をかけてあげれば良いのか。親の視点で想像しながら読むのも学びがあって良い。

例えば、図らずも1位にされたイヴに、兄のエイブは「そんなクソみたいなもん、無視しろ」というが、父親が「どうして無視しなきゃいけないんだ、イヴは一番なんだぞ!」と嬉しそうにいう。
理解している兄と理解できない父とのコントラストが良い。っていうか兄がいい奴。

「そして、父さんはそれをどうでもいいと思ってる。(中略)それはな、誰かがイヴのことをただの物として扱ったってことだ。イヴをランク付けしたんだ。ゲームのランキングみたいに(中略)イヴが人間だってことを無視して

エイブのセリフ

「でもさ、それって褒められてると思うんだけど」ハンナははしゃいだ声でいった。
「そうさ!」(中略)「パパは、ランキングなんかなくても娘たちが世界一美しいってことは知ってるがな」
パパはにっこり微笑んだけど、イヴは胃が締め付けられるような気がした。どうしてだろう?

妹ハンナと父の会話

日常の中のルッキズム

イヴは、同級生からひどくセクシャルなメッセージを送りつけられたり、「自分でランキング作ったんじゃないの?」と心無いことを言われたりして、疲弊していく。そのひとつひとつが痛々しくてリアルだ。
それでもイヴはソフィーやネッサ、他の子達と関わりながら変化していく。それぞれに「何が問題なのか、なぜこんな思いをしなきゃいけないのか」考え、自分なりの答えを出していく。

イヴだけでなく、高飛車だったソフィーにも、演劇の才能があるネッサにもコンプレックスがあり、悪者の(マジで嫌なヤツ)ブロディにも多分なにかある。何も抱えていない人はいない。良いところも悪いところもある。一つの基準でランク付けなんてするべきじゃない。その人の価値は測れない。
結論、ルッキズムはくだらない、なんだけど、それを物語を通して実感できるようになる。

ラストの爽やかさ

最後は、とても美しくて爽やかな終わり方をする。
悪いやつをぶっ倒すでもなく、ソフィーとイヴがうちらマブダチ!になるわけでもないが、愛のあるとても良いラストだった。

ランキングをつくるバカな奴らは消えないけど、彼女たちはきっともう大丈夫、という気持ちになれる。
思春期にもし、子どもたちが悩んでいたら、そっと置いておこう。

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