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【読んだ】ルポ 特殊詐欺

おすすめ度 ★★★★☆

めちゃくちゃ怖い話だった。
特殊詐欺を犯人側の目線でみたルポタージュで、事件に関わるまでの経緯や手口が事細かに描かれている。
ルポタージュを読んだ経験があまり無いので、その取材力と量に驚かされた。

まず敵を知る

末端のいわゆる「出し子」「受け子」の生い立ちから、犯罪にどうやって手を染めてしまったか、家族を殺すと脅されて追い詰められていく様子は読んでいて胸が痛む。
ニュースで見聞きしたことはあるが、何十倍も重い。
何も知らない中高生が気軽なバイト感覚でやったことが、取り返しがつかなくなる。
こ、これは子どもたちにもちゃんと伝えなければ…!ってなる。

また、事件の手口も細かすぎるほど細かく載っている。
捕まらないようにあの手この手が考え抜かれていて、末端の人間をモノのように扱って金を集めていく。
さらに複数の事件を同時並行で回すから、24時間スマホで指示を出しっぱなしだという。
1件の被害額が少ない+関与している人員が多い(人件費がかさむ)ので、たくさん売上(被害額)をあげないといけないんだそうな。
詐欺の世界も世知辛い。

詐欺から強盗にシフトしている事例も複数載っている。
最近、高級時計店の強盗事件があってにわかに注目されているが、数年前から同じ仕組みの強盗事件は増えていたらしい。
大抵は消防点検などを装って家に押し入り、現金とキャッシュカードを奪う。これも手口から何から細かく書いてある。
めちゃくちゃ怖いけど、すごい勉強になる。
絶対こういう時ドア開けんとこ、ってなる。

富める高齢層と貧困の若年層

後半は、特殊詐欺を生む背景にも言及している。
以前、ケーキの切れない非行少年たちで知ったが、犯罪の末端になる人は認知機能や知的障害を持っている場合が多い。
これをやったらこの先どうなるか、という将来の予測や善悪の判断ができず、いいように使われてしまう。

また、日本の家計の金融資産の7割を60歳以上の世帯が保有していること、更にその半分が現金と預金という事実も大きい。
一方で20代の25%は貯蓄が無く、貯蓄割合も低い。
現金と預金をたくさん持っている豊かな高齢層を若年層が狙う構図は、社会構造と切っても切り離せない。

確か、似た話を格差と分断の社会地図で読んだ。
犯罪という形ではなくても社会構造として高齢者の財産が狙われていると。
かんぽ生命で悪質な手口で高齢者に契約を結ばせていた事件が紹介されていた。
日本全体がそうやって高齢層の富を当てにするしか無いというのは、決して正当化されることでは無いけれど現実なんだと思う。

はぁ、重い。
だけど、こういう現実を知らないと対策も取れないし、危機感を抱くこともできない。
私の場合は、子どもにスマホを持たせる頃にしっかり教えること、親世代にせっせと注意喚起することくらいか。


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