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【読んだ】去られるためにそこにいる

おすすめ度 ★★★★★

年の瀬になって2023ベスト本に食い込む一冊がきてしまった。
この一年で教育・子育て系の本を20冊以上読んだけど、これがベストかもしれない。めちゃくちゃ良かった。


モヤつきが少ない

子育て系の本って、大抵いいこと書いてるんだけど、どこか必ず「それは違うやろ」とか「現実はそんな上手くいかんわい」と思ってしまうところがある。この本はそういうモヤつきが一番少なかった。
簡単ではないけれど、そうありたい、と思える姿を描いてくれている。

著者も4人の子を持つ親なので、理解がある。
ちょいちょい「難しいのは重々承知しているけれど」、「こうしたい気持ちはやまやまだろうけど」のような寄り添いメッセージがあり、責められてるような気持ちにならずに読める。

うちはまだ本格的な反抗期はきていないけれど、その時がきたらちゃんと心に留めておきたい内容がたくさんあった。

「寝なさいと言っても寝ない」ことの、どこが良いのか

多くの親が、子どもが(親の思うタイミングで)ご飯を食べない、お風呂に入らない、歯を磨かない、着替えない、勉強しない、寝ない、起きない…などと訴える。

あ、そうなんだ。うちだけじゃないんだ、と安心。
反抗期ってもっと「親に俺の何がわかるんだよ!」的なものだと思ってたけど、一番ケンカになるのってこういう超日常の基本事項なのだ。それくらいはやってくれよ、ってことに反発されたら、親はキィイってなるしかない。と思っていた。

著者は「そういう行為に良い面があるとしたらどこだと思うか」と親に尋ねるという。

そのこと自体がよいのではない。これまで親に「寝なさい」といわれて寝ていた子どもが、人から言われるのではなく、寝るか寝ないか、いつ寝るかなどを自分で決めようとしている。それこそが「よいこと」なのだ。

行為そのものではなく、子どもの自己決定プロセスの成長に価値を見る。そしてそれが理解できない、反発する親の特徴をこう述べる。

このような反応をする親は、自分の「正しさ」に迷いがない。子供の為を思って言っているのだから、親の言うことを聞くのは当然だ。なぜうちの子はそれができないのか、などと自分の正しさを確信している。

あーーーー、わかる。自分の親がまさにそのタイプだった。というか多くの親がそうじゃないかと思う。夫も時々そういう態度を取るし、友達を見ていても当てはまるなと思う。
自分のことはわからないもので、そうしないように気をつけているけど…でも、ついやってしまってると思う。自分のことも棚に上げられない。

というか、子育てだけじゃないよね。
自分の正しさに自信を持ちすぎることは、危険だと思う。

反抗期に、教育やしつけをしない

もっと進んで、暴力や暴言が出た時にどうすればいいか。
まず、暴力は絶対に認めない。許してはいけない、受入れてはいけないし、暴力で対抗してもいけない。どうするかというと、警察や外部機関に相談する、それを子どもにも毅然と伝えることが大事らしい。おぉ…

そして、行動の底にある子どもの思いを意識する。泣き叫んだり暴れたりするのは子どもの幼い部分であり、自分の不満を親になんとかしてほしいという甘えだと。

親としては、しつけや、教育的なことが頭に浮かんでも(浮かぶのは当然だが、それは頑張っておいておく)、幼い子どもの心を意識しながら向き合うのである。
(中略)逆に、どうやって子どもを黙らせようか、暴れる子どもをどうやって諭して「いい子」にしようかと、そのような教育的な姿勢で親が向き合うと、子供の怒りはますますエスカレートする。

はぁー、これは難易度高い。めちゃくちゃ高い。
でも、そのとおりだなと思う。自分の子ども時代を振り返っても、我が子の育ち方を見ても、そう思う。
いざその時が来たら、思い出したい。

去られるためにそこにいる

この本はタイトルもすごく良い。
ある心理学者の論文”Mothers have to be there to be left”から取っているそう。(なんでMotherだけやねんってのは時代なので仕方ない。今ならParentsだな)

親が導かなくても、子どもは自分の力で親離れしていく。本来持っている自立しようとする力をサポートすることが親の役目だという話がこの本の根底にある。

送り出す側が、去られることになっても揺るがずどっしりとしていること。必要なときはいつでも温かく手を差し伸べる用意があると伝えること。それこそが親から去ろうとしている子どもを何よりも励ます。

言葉は美しいし、そのとおりだと思うけど、現実にはとっっっても難しい。
これまで12年子育てしてきて、どっしり揺るがず構えられたことが何度あったろう。揺らぎっぱなし。反省しっぱなし。
だけど、いつも考えていたい。理想を持っていたい。

去られるためにここにいられる親に、子どもの成長を笑顔で見守れる親に、そういう人に私はなりたい(突然の宮沢賢治)。

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