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【読書記録】JK、インドで常識ぶっ壊される

おすすめ度 ★★★★☆

タイトルとイラストで「あーハイハイ、高校生を売りにしたエッセイね」と舐めてかかっていたら、全然違った。

親の仕事で15歳でインドに引っ越すことになった著者が、常識をぶっ壊されていく話。といえばタイトルのまんまなんだけど、まず文章がうまい。
高校生にしては上手いとかではなく、普通に表現力があるし、リズム感がいいので気持ちよく読める。
タピオカとかインスタとか高校生っぽい用語もあるのに、文章全体に品があって嫌な感じがない。


前半は、食べ物や文化の違い、家族や友達との交流が中心。宗教感覚や価値観について、考えさせられる内容になっている。
私も、タイに1年間住んでいた時に近い経験をしたので、かなり共感した。
とはいえ、まぁ高校生の常識ってこの程度よね、フフンなどと大人ぶった視点で読んでいた。


後半は、テーマがぐっと深まる。
インドのスラムに行ったり、NGOを通してストリートチルドレンのことを学んだり、重い社会問題と向き合っていく。
モヤモヤも罪悪感も、理不尽への憤りも、変に誇張せず等身大で書いている。

スラムの子どもたちと交流して、子どもたちに「将来の夢」を聞いたとき、自分にはそんな夢がないことを後ろめたく感じてしまうシーン。

女性の就業率が3割以下だというこの地域で、目を輝かせながら「なりたい仕事」を語る女の子たちは、きらきらしていた。
それに対して、「ハルカディディはなにになりたいの?」と聞かれないように願ってしまった自分が情けなかった。就きたい仕事まだわかんないの…と言ったら、この子達には贅沢だと思われるだろうか。

著者が、この本を書こうと思ったのは、パンデミックの最中に帰国して、「なにかしなきゃ」という焦燥感に駆られたためだと、あとがきにあった。

高校生で心動かされたことも、高校生のうちに書いておかないと、出会ったことも感じたこともないことになってしまう。青いなら、青いままで残しておくというのも、大切であると思うし、自分が青かったから、そして今もなお青いから、この作品があります。

こんなに真っ直ぐ、自分の言葉で伝えられるのが素敵だなと思う。私はもうすっかり大人だけれど、いやー若いっていいねぇ、なんて知ったかぶらず、素直に尊敬したい。
彼女は「青い」から書けた、というけれど、若さだけではなくて、彼女の感性が素晴らしいから感じられたことだと思うし、年齢問わず響いてくるものがあった。
良いものは良い。

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