見出し画像

[ 暗殺された気分 ]毎週ショートショートnote(親切な暗殺)

↑↑コチラの表のお題【親切な暗殺】に参加してみました。
相変わらずの文字数オーバーですが、1000文字以内なので、今週はエントリーしちゃおーっと😊♪カッテナルール


画像:Bing Image Creator

[ 暗殺された気分 ]

 今日は休日だ。
 俺は道端に座って、通りを行き交う奴らを眺めてる。

”カタン!”

 缶の中に、コインが投げ込まれた。
 俺のそばに置かれているお菓子の缶。
 錆びついて、もう、クッキーだかビスケットだか判別できねぇ。
 まぁ、錆びついてなくても、俺には判別不可能だが。

 コレを置いておくと、偽善者がお金を入れていく。
 金なら使い切れないくらい持っている。
 これは偽善者から金を巻き上げる、俺の趣味だ。

 おや?

 缶の中にお札が入った。
 たまにいるんだ、こういう偽善者バカが。

 しかし、このお札は様子がおかしい。
 ピン札の千円札が、三つ折りに……。
 この折り方、遠い記憶にある……、

 ──お年玉?

 正面を向くと、俯いた少年が立っていた。
 黙って見ていると、少年が俯いたまま言った。

「やる」
「ん?」
「やるよ、困ってんだろ?」

 幼さが残る声が聞こえる。

「あー、そうでもないけど」
「ウソつけ、とうさんが言っていた」

 とうさん? イイところのおぼっちゃまか?

「道端で缶を置いて座ってる人がいたらお金を入れてやれ。困ってるはずだから、って」

 ふん、典型的な偽善者バカだな。

 俺は言う、「その親父は、一緒じゃねぇのか?」
「とうさんは、死んだ。──暗殺されたんだって」

 暗殺と聞いてビクッとした。
 最近暗殺されたと言えば………。

「でも、ボクは犯人に感謝してる、とうさんがいなくなって、やっと自由になれたから」

「ほおー」
 俺は聞きたかった「で、自由になれて、お前は何をしたい?」

 少年は、俯いていた顔をコチラに向け、力強く言った。

「人を助ける仕事がしたい!」

 そう言った少年の大きな瞳は、涙で濡れていた。

 俺は、缶の中の千円札を取り出し、少年に見せながら言う。

「いいか坊主。人助けがしたければ、お金は1円たりとも無駄にするな。人を助けるにはお金は必要だ」

 少年は力強く俺を見つめ返す。
 俺も真剣に、少年の目を見据えて言う。

「この缶にお金を入れるような偽善者に、オマエはなるな。──絶対に」

 少年は、視線を外さない。
 俺も、少年の目を離さずに、千円札を目の前に出した。

「分かったよ、約束する」

 少年はそう言うと、千円札を取り、去っていった。

 あー、あ、ガキにあんなこと言うなんて、俺も焼きが回ったな。
 少年に暗殺された気分だぜ。
 まったく。

 少年の父は立派な政治家だった。
 そして、立派な偽善者だった。
 俺は偽善者が嫌いだ。

 俺は使い切れないほど金をもっている。
 偽善者を消して稼いだ価値ある金を。


おしまい。

#毎週ショートショートnote


この物語はコチラの記事に、なんか感化されて作りました。
私の今回のお話とうって変わって、とても、チャーミングなお話です。
口直しにぜひ読んでみて😊♪

そして、ピン札からのお年玉はコチラから、なんか感化されました。
とても愉快なお話です。

※因みに「なんか感化」とはは、映画『耳をすませば』の台詞から、なんか感化され、転じたお気に入りの言葉です😊♪

↓↓今週の裏のお題【新説なピン札】はコチラ↓↓

↓↓先週の表のお題【忍者ラブレター】はコチラ↓↓


サポートしてくださると、ありがたいですー😊♪