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日建設計・設備フォーラムから生まれたアイデア②「データセンター✕地球環境」

新技術の力を結集し脱建築へ期待

小上 佳子、北川 大輔
日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ 

データセンターのニーズ

内閣府はSociety5.0を日本が目指すべき未来社会の姿として提唱しました。サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させた社会の実現のためにはAIやIoTなどのデジタル技術の更なる革新が期待されています。
日本は国際的にみると未だデジタル後進国であり、国内DX化は今後更に拡大していくと考えられます。そのため、国内のデータセンター需要はますます大きくなっていくことが必然です。データセンターの延べ床面積予測は2025年には現状の2倍を超えるといわれており(※1)、私たちの生活が快適になっていく一方で消費エネルギーの増加、それに伴う地球環境への負荷増大が懸念されます。
「データセンター✕地球環境」という2つのテーマは、一見すると対極に位置する関係のように見えますが、この難題を建築・都市に関わる設計事務所の視点を活かしたアプローチで近い将来、さらにその先という2つの時間軸でデータセンターの在り方を提案することにしました。

データセンターを中心としたスマートシティ

データセンター単体での取り組みとしては液浸冷却技術、直流給電、電圧昇圧化、寒冷地建設による外気冷却など最新技術の導入が図られています。
大手IT企業などは再エネ100%を掲げるなどグリーンデータセンターとして脱炭素の取り組みも盛んです。しかし、消費の削減を狙った個の取り組みだけでは限界があります。
個から街全体に視野を広げることでマイナスをプラスに転じさせる仕組みとして、データセンターを中心としたまちづくりを実現させることがエネルギーのサイクルを促し、都市の発展にもつながると考えました。
具体的には地域マイクログリッドの視点で、再エネ発電の地産地消、データセンターからの排熱を回収し、都市へ熱供給するといった方法が挙げられます。こういった取組みはすでに他国では事例(※2)があり、今後日本でも同様の取り組みが増えてくるのではないかと考えられます。

脱建築✕宇宙✕将来2030~

ここで2030年以降の近未来を想定した時に、活用が期待できる新たな技術が様々な分野で芽吹いています。サーバーが小型軽量化され、現在の常識を覆すサイズ感となれば、建物の中に据え置く必要がありません。サーバーの入れ物を脱建築化させて宇宙に設置できれば、天変地異の脅威から解放され、安定した太陽光ネルギーを受けることができ、可動+多拠点とすることで通信速度が改善されるという利点も得られます。他方で、宇宙開発も同時並行で予定通り進んでいれば、2030年頃には2分野の新技術を融合させた「スペースデーターセンター」が実現できるのではないかと考えました。
宇宙なので太陽光発電を付けて、メンテナンスや研究開発のための有人化を可能にしたり、アームをつけて宇宙ゴミを回収し宇宙環境にまで貢献できたり、脱建築化したデータセンターの可能性は無限に広がりそうです。
設計者としては宇宙での快適な居室空間提案の場に期待したいと思います。

※1 IDC Japan 2021年5月「国内データセンター延べ床面積予測」より引用
※2 ノルウェー Bergenデータセンターの廃熱で暮らす都市計画「The Spark」、スウェーデンStockholm再エネで稼働するデータセンターの廃熱を暖房に利用する「The Data parks」等


小上 佳子
日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ
アソシエイト
2007 年入社 主に国内外の研究所、工場などの設計を担当。
主な担当プロジェクト:京都リサーチパーク、住友金属工業総合技術研究所、微生物科学研究所、化血研合志事業所、日野インドネシア・マレーシア工場、延世大重粒子線がん治療施設、香港AMCなど。

北川 大輔
日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ 
組織系建築設計事務所を経て2016年に入社。オフィス、ホテル、教育施設、生産施設、商業施設、官庁施設と幅広い分野のプロジェクトを担当。
主な担当プロジェクト:大阪大学箕面キャンパス、ミズノ新研究開発拠点、リゾートトラスト琵琶湖高島ホテルなど。



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