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日建グループオープン社内報|“O3”って?リニューアルした日建設計コンストラクション・マネジメント大阪オフィスの試み

佐々木康貴、大澤雄二、関口理絵
日建設計コンストラクション・マネジメント
マネジメントコンサルティング部門 

子供たちが描いた壁面アート、働きやすさを提案するコミュニティーマネージャー、プライベートも相談できるパーソナルコンシェルジュ…
~新しいワーク・ライフのあり方への挑戦~
※これは、2023年8月に社内報(日建グループ報)に掲載した記事を元に再編集したものです。

“O3”(オースリー)とは?

”Osaka Osekkai Office”の通称で、令和5年5月17日にリニューアルオープンした日建設計コンストラクション・マネジメント(以下NCM)の大阪オフィス。「行きたくなる、おせっかいを」をテーマに、働く人を孤立から救い出し、元来大阪に根付いている“おせっかい”の力で人の活力をオフィスに呼び戻そうというプロジェクトです。プロジェクトの中心となるお三方とO3の魅力的な仕掛けや活用のアイデアに触れて、その全貌を解き明かします。

<メンバー紹介

佐々木康貴
“O3”の企画戦略の立案と総合ディレクションを担当。
大澤雄二
“O3”のプロジェクトマネージャー。デザイン、コスト、スケジュールのマネジメントを一手に担い、稼働後は“おせっかいメンバー”のリーダーも務めています。
関口理絵
“O3”最大の目玉であるコミュニティーマネージャー。O3をどのように使っていくのか、社員目線のフィルターを通して皆さんに提案します。

座談会 行きたくなるオフィス

佐々木:“O3”は「まずは自分たちから変わっていこう」という私たちの意志表示です。オフィス環境の“変革”には、まずは自分たちが“変わってみせる”必要を感じていました。“未来の働く場とは何か”を口頭で説明するのはとても難しいですが、“O3”の空間やサービスを実際に体験していただく事を考えました。しかしながら、いざ自分達の働き方を実際に変革するのは簡単なことではありませんでした。コロナ後の世界にいよいよ入ってきて、オフィスに人を戻そうとする企業の動きが目立ってきています。我々は、たとえば「北風と太陽」の北風のように強制的にオフィスに人を呼び戻すことはしたくない。太陽のように自分から来たくなる環境を用意することで社員がオフィスに戻ってこられる仕掛けを作ろうとしています。“O3”という場は、コロナ禍で一度切れてしまった人と人との繋がりを新しい方法で繋ぎ直し、新たなコミュニティが生まれる場として期待しています。

写真1 社員もゲストもおもてなしする、開放的でホスピタリティに富んだゲストエリア
社員のコラボレーションの場を中心としたゾーニング・レイアウト

大澤:“O3”プロジェクト自体は2019年2月頃に発足し、2020年から動きが本格化しました。しかしコロナの影響で一時中断、2021年初めに再開となりました。私は当初プロジェクトメンバーの一員でしたが、会社からプロジェクト再開のGOサインが出た時点で現地側のリーダーに立つことを決めました。コンセプトワークは会社のスローガンや中期経営計画であるVISION2021を振り返りながら働き方を再考し、大分苦労しましたが、2021年6月頃にようやく「いきたくなるオフィス」というコンセプトに辿り着きました。

佐々木:我々のチームはプロデューサーの立場として オフィスの検討プロセスも含めてプロジェクトと捉えていましたので、「プロセスをしっかり踏んで」という要望を、企画の視点からワークプレイス戦略チームに投げ続けていたので、大変だったのではないかと思います(笑)。

写真2 協働、共創を促すフレキシビリティの高い執務空間(ピッチエリア)

大澤:内装デザインを手がけたグループ会社の日建スペースデザイン(以下NSD)の設計者にはコンセプトワークから参画頂いていましたので、常に、右手にNSD、左手に佐々木チームがいて、さらに私自身は早くスケジュールを組んでプロジェクトを前に進めたいという、二刀流ならぬ三刀流状態でした(笑)。会社を説得しながら、社会的に良い事例に発展できるように組み立てていく工程が一番大変だったかもしれません。

関口:おつかれさまです(笑)。私は途中から参加し「あれがあったほうが良い」とか「受付はここで良いの?」などの意見を述べていたのですが(笑)、そういった意見を取り込んで実際の設計に落とし込むのはとても大変だったと思います…。

大澤:関口さんから頂く意見は、建築の専門的な目線ではなく本当の意味でのユーザー目線だったので、新鮮で大変ありがたかったです。おかげさまで、“O3”には隅から隅まで思いを巡らせることができたので、妥協したところは一切ないと言い切れる仕事ができました。

写真3 インスタントに使えるフォンブース
男女別のリラクゼーションルーム

佐々木:そう言い切れる大澤さん、素晴らしいです。大澤さんは、社員やNSD設計者、役員、クリエイティブディレクターなど、様々な関係者からの意見に一つずつ丁寧に応えていらっしゃいましたね。

大澤:私は、設計者の頭の中で出来上がった図面がそのまま出来上がる必要は全くないと思っているんです。様々な人の意見を広く聞いて、それを妥協なく反映できたことは、これからの仕事に対する自信にもなりました。コストとスケジュールに配慮しながら、クオリティを担保するのには苦労しましたが、創意工夫を積み重ね、自分自身も勉強しながら取り組めたのは貴重な経験でした。

佐々木:ある論文によるとプロジェクトマネジメントの成功、つまり時間・コスト・品質マネジメントの成功が、実施されたプロジェクトの価値評価と必ずしも結びつかないそうです。身銭を切った時に、投資しただけの価値が返って来ているかどうかが成功の判断基準になる。実際に自分が発注者の立場になってみて肌身に沁みました。決められた予算・期日に納めることだけを目標にしてはいけない、という目線を学ぶ貴重な機会になりました。

大澤:苦労したほうが愛情も湧きますよね。特にアート分野に関しては関係者が一気に増えて大変でしたが、完成したアートを見た時に発生するコミュニケーションがとても印象的に思えました。アートは感性で見るものなので良い悪いという意見で量れないという点でも勉強になりました。

佐々木:アートはロジカルに収まりがつかなかったり、想像を超えてはみ出したりするところが面白いですよね。NCMの主な業務はデザインではなくマネジメントなので、“O3”では、直接に右脳に働きかけるような作品をつくるアーティストに依頼しました。社員のコラボエリアでは、アーティストの井上純さんと社員の子供達との共作でウォールアートを制作しました。子供たちが巨大なキャンバスに自由に描いたり、走り回ったり、とてもほのぼのとした場となり忘れられない光景です。

NCMのValue “挑戦” “共感” “創造”を表現したアート


写真4
左「認知的侵入#4」國分莉佐子  中央「Dialogue with the City」安藤瑠美
右「MOON」山本 努

関口:子どもたちが絵を描いている様子は、東京オフィスでも配信されていましたよね。アートは個人の感覚で見るものだからこそ、こうした機会があるのはとても素敵で効果的だと思いました。

子供たちとアーティスト(井上純さん)による社員のモチベーションをテーマにした壁画アート
社員の子供たちによる、ウォールアート製作風景

“O3”の魅力

大澤:“シーンごとに場を選択できる”のが、“O3”一番の魅力だと思います。全体を視認できるちょうどいい広さも気に入っていますね。集中ゾーンやコーヒーマシーン、野菜ジュースの提供は、特に社員から好評を得ているように思います。それからやはり、コミュニティーマネージャーの存在は大きいと思いますね。

写真5 自然と人が集うNCMカウンター

貸出アイテム


ポータブルバッテリー
貸出PCスタンド
どこでも働ける、を可能にする Wellnessに配慮した体幹鍛え器具

関口:“O3”に入った瞬間に、今日誰が来ているか分かるのが良いですよね。コミュニティーマネージャーの仕事を一言で表すと、寮母さんが近いのかなと思います。いつもそこにいて「おはよう」「おかえり」を言ってくれるような。大澤さんから「コミュニティーマネージャーがいることでオフィスが家庭的になっていますね」と言っていただけたことがとても嬉しかったです。コミュニティーチームは、設計やデザインをしません。「つくっていただいた素敵なスペースをどう活かすか」は私たちの腕にかかっています。例えばランチマップを製作してコミュニケーションを図ってみたり、最後に“味付け”をするのがコミュニティーマネージャーの役割だと思っています。O3に限らずリニューアルに対して、「新しい環境に慣れない」「以前のオフィスの方が良かった」という人も当然いらっしゃると思うんです。人間は変化を嫌う生き物なので、環境が変わることで自然に動けなくなってしまう傾向もあるそうです。そうした人たちに「こんな使い方ができるんだよ」ということを、自身が身をもって伝えていかなくてはと思っています。仕事には余白が必要です。利害関係を一切気にせず、リラックスして本音を話せる存在がコミュニティーマネージャーなので、気軽に「話しに行ってみようかな」と思っていただけたら嬉しいです。

左から:笑顔が素敵なコミュニティーマネージャー(東原さん)と大阪NCMメンバー(深井さん、藤原さん、新谷さん)

佐々木:専任のコミュニティーマネージャーだからできることですね。新しい環境をどう使いこなすかというのは、実は誰に相談していいかよくわからない問題でもあります。ぜひコミュニティーマネージャーという存在を活用していただきたいと思います。“O3”リニューアルオープン以降、社員のコミュニティーマネージャーに対する捉え方が徐々に変わってきているのを感じますね。「コミュニティーマネージャーの仕事って何なんですか?」と良く周りから聞かれるのですが、私のコミュニティーマネージャー像は関口さんで、初めてお会いした日から態度や仕草でコミュニティーマネージャーという仕事を体現されていて、なる程これか、と思えました。“O3”が無事にオープンし、皆はつい一息つきたくなってしまう、でも関口さんは「ここからが始まりだ」というテンションでいらっしゃいます。

NCM大阪版ランチ&手土産マップ

関口:空間を完璧につくっていただいたからこそ、ここからの運営の部分がプレッシャーです(笑)。会社の大きな投資に対するリターンを証明するための動きがどのくらいできるかが大きな課題ですね。せっかく素敵な空間ができたのに、結局活用されずに閑散としてしまっては失敗です。そうならないように、社員の皆さんのマインドを変えて、“O3”を一緒に盛り上げていこうと旗を振っていくことが大事だと考えています。そのために、まずは約80名の大阪の皆さん全員と、少しの時間でも良いので個別に話をするところから始めたいと思っています。

様々な工夫でコミュニティーマネージャー浸透を図っています

“O3”に来ていない人の声も大事にして、アプローチを考えて、皆がハッピーになる取り組みをしていきたいです。定期的に小さなイベントを行うのも効果的かなと画策しています。私一人だけで達成できることではないので、社員の皆さんに協力していただきつつ、“楽しい”を発信していければと思っています。

佐々木:社員のなかのインフルエンサー的な役割を担っていただく人材を“おせっかいメンバー”として7~8人程度組織しています。次第に“おせっかい”の輪が広がって、約80人の社員全員が“おせっかい”になるというプログラムです。時間がかかるかもしれませんが、これによって社員の孤立をなくすことができればと考えています。Barに例えると分かりやすいのですが、常連さんばかりだとなんとなく入りにくいですよね。かと言って、一見さんだらけだとコミュニティを感じることができません。そこの調整をするのがバーテンダーであり、コミュニティマネージャーなんです。コミュニティマーネージャー、おせっかいメンバーと一緒に成功させて行きたいと思っています。

大澤:私は “おせっかいメンバー”のリーダーになりました。大阪という土地には元々“おせっかい”の文化があり、言わずとも“おせっかい”を焼いてくれる‟隠れおせっかいメンバー”も大阪には既にいるんです。(笑)。

関口:でも内輪ノリだと変化が生まれにくいんですよね(笑)。大澤さんのような、普段冷静沈着な人が“おせっかい”をするからこそ、シャイな人も巻き込んでいけると思っています。

“O3”が生んだ効果

写真6
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大澤:今年新たに入社してきた人たちが例年に比べて早くコミュニティに馴染んでいたり、今まで話していなかった人同士が仲良くなっていたりするのを目にします。オフィスの真ん中に座っていたら、自然と知り合いが出来る環境ですね。先ほども言いましたが“おせっかい”の素質がある方がたくさんいらっしゃるので、話が弾みすぎて仕事にならないなんてこともあるかもしれません(笑)。

関口:大阪オフィスでは「皆が話しかけてくる!」という印象です。大阪人の“おせっかい”の素質を引き出す、というのが正しい表現かもしれません。“O3”オープンからこれまでを見ていると「まだお行儀よく使われているな」と感じます。もっと枠から外れて良いので、家具を動かしたりして自由に使ってほしいなと思います。もちろん仕事とのメリハリはつけることを前提として、1時間限定でプチ飲み会を開いたり、社員同士でお誕生日をお祝いしたりするのも良いコミュニケーションを生み出すきっかけになると思います。

写真8 ゲストエリアから見た図。ピッチエリア(執務空間)の雰囲気が垣間見える

大澤:言ってしまえば、自分の家だと思ってほしいです。ちょっとかっこよすぎるかもしれませんが(笑)、アイデア次第で色々なことができると思います。どんどん自由に活用してほしいですね。

佐々木:それはこれから“おせっかいメンバー”のリーダーである大澤さんが実際にやって見せてくれますよね(笑)。発想さえあればいろんな事ができる場になったので、わくわくしています。

関口:「日本を元気にする」というのが、私たちの大きなテーマです。社会課題解決のための一歩として、まずは私たちが楽しく元気に仕事ができるようにしたいと考えています。

ゲストエリアのソファコーナーは小物やアートでアットホームな雰囲気を演出

佐々木:ワークとライフはどちらかが崩れるともう一方も崩れます。社員の皆さんには、集中して働いて、たくさん遊んでいただきたいんです。そのために、プライベートを充実させるための支援こそが大事だと考えて導入したのがパーソナルコンシェルジュサービスです。例えば海外のお客様と会食する時にどんな店のどんな食事が良いかといったことは、今までは先輩から聞いたり自分で調べたりして対応していました。そこをプロに任せることでその時間を本来の業務に使う事ができる。もちろん、プライベートでお勧めの観光スポットを調査するなど様々な事を外注できます。仕事を効率化し、プライベートを充実させるためのこのサービスを、ぜひ社員の皆さんには使いこなしていただきたいですね。使う側も使い慣れていく事が必要なので、皆さんの体験をシェアしながら、使いこなして頂くための仕組みづくりも考案中です。だんだん、コンシェルジュって敷居が高いものじゃないんだ、と思っていただけると思います。

佐々木康貴
日建設計コンストラクション・マネジメント
マネジメント・コンサルティング部門 
Strategy & Design Management “Domain”/ドメイン統括・シニアディレクター
外資系クライアントのプロジェクトマネジメントを数多く経験。2018年国際プロジェクト部門のマネジャーを経て、2020年からWorkstyle Solution推進チームを主宰。企業のイノベーション環境の構築やワークスタイル変革を支援するコンサルティングサービスの事業化を推進し、Strategy &Design management 事業部の発起人となる。2023年から同部門で活動。

大澤雄二
日建設計コンストラクション・マネジメント
Educational Institution “Domain”/ ディレクター
2016年に意匠設計者からコンストラクションマネージャーに転身。オフィスビル、文化施設、アミューズメントパーク、交通系施設、病院、教育機関と国内を中心に幅広いマネジメント業務に従事。2019年にオフィスリニューアル計画に参画、リーダーに就任する。

関口理絵
日建設計コンストラクション・マネジメント
Strategy & Design Management “Domain”/ ディレクター
外資系コワーキングスペースの日本立ち上げやコミュニティづくりを担当。日本の文化にあったワークスペース運営計画をゼロから作成し、運営する経験を経て2022年にWorkstyle Solution推進チームに参加。2023年からStrategy & Design Management部門で活動。

<クレジット情報>
写真1~3:Adhoc 志摩大輔
写真4~8:KAWARA

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