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Smart Operation Building ~withコロナのオフィスビル 5つのキーワード~

後藤 悠
日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ
アソシエイト

非常事態宣言から3か月。現在でも、ほとんどの日は在宅勤務をしていますが、やってみれば意外とできるものだと感じています。

では、オフィスはもういらないのでしょうか。その答えは様々です。完全テレワークに切り替えてオフィスを解約した企業もあれば、ソーシャルディスタンスを確保するために、オフィスを拡張する企業もあるようです。

個人的には、オフィスは必要だと思います。家とは違う居場所、偶発的な刺激、腰の痛くならないオフィスチェアとフリーズしない通信環境。そのほかにもうまく言葉にできない、創造性ややる気に関係する「何か」が、同僚とともに過ごす空間にはあるのではないかと思います。

ですが、これまでのオフィスと同じというわけにはいきません。少なくとも、人と人との接触を減らし、室内をきれいに保つことは、これまで以上に配慮しなければなりません。

そんなwithコロナのオフィスビルのアイデアとして、日建設計が提案するSmart Operation Buildingを紹介します。まずは、こちらのコンセプト動画をご覧ください。

Smart Operation Buildingは、LESS、EASY、ROBOT、CLOUD、ON DEMAND の5つをキーワードとしたオフィスビルのコンセプトです。このコンセプトはもともと、新型コロナより以前に、「労働人口の減少」という社会課題に対して作られました。

少子高齢化の影響で、国内では2030年に640万人もの労働力が不足するという予測もあります。ビル管理に関連する清掃や配送、設備保守などの職種はその傾向が顕著で、人材確保がすでに難しくなりつつあると言われています。そこで、建築的な工夫とロボットなどのテクノロジーでビル管理の手間を70%削減し、人材不足を解消するオフィスビルとしてSmart Operation Buildingを提案しました。

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そしてSmart Operation Buildingに含まれるアイデアは、withコロナのオフィスビルにおいて、人と人との接触を減らし、室内をきれいに保つために有効なアイデアでもありました。

それでは、LESS、EASY、ROBOT、CLOUD、ON DEMAND の5つのキーワードについて具体例を挙げながら説明します。

1. LESS ~モノを減らす~

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オフィスの壁にある照明や空調のスイッチ、エレベーターの押ボタンなどは、汚れやすく、壊れやすく、接触感染のリスクがあります。これらを、個人のスマートフォン、スマートウォッチ、センサーで代替したのがタッチレスオフィスです。
窓のブラインドは、ほこりが溜まりやすいスポットです。このブラインドの代わりにスマートガラスを利用します。スマートガラスは、陽が当たるとサングラスのようにガラスの色の濃さを自動調整します。

2. EASY ~ラクをする~

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清掃には多くの人手を要します。また、人からの飛沫に触れる可能性の高い作業でもあります。そこで清掃作業をどのように安全に、簡単に、少なくするかを考えました。
窓ガラスは、特殊なコーティングをすることで、雨が降るたびにガラスがきれいになり、雨粒の跡も残らないため、屋上から吊り下げたゴンドラで清掃員が行う拭き掃除を軽減することができます。
また、トイレブース内の清掃をロボットで行い、トイレットペーパーをブースの外から補充することで、作業の効率化、安全性の向上を図ります。

3. ROBOT ~ロボットと働く~

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清掃ロボットは家庭だけでなく、オフィスでも少しずつ普及しはじめました。そして、エレベーターに乗って館内を移動する配送ロボットも開発され、ビル管理の手間や人と人との接触を減らすことに貢献することでしょう。
そのようなロボットが働きやすく、動き回りやすいように、段差、隙間、ドアなどに配慮したロボットバリアフリー建築が、新しいオフィスの標準形になってくると考えています。

4. CLOUD ~データを生かす~

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ロボットで代替できない作業は、クラウドを活用したリモート作業により、管理を効率化し、ビル内での人の密集を抑制します。
例えば設備の点検。建物の中には空調や電気、給排水のための様々な設備機器があり、ビル管理者さんが五感を駆使して日常点検を行っています。この五感に代わるカメラ、温度計、音や匂いのセンサーを利用することで、現地に行かずに遠隔で設備点検をすることができます。
また、地震発生時には建物の安全確認を自動化・リモート化し、非常時における復旧作業を迅速にします。

5. ON DEMAND ~不要不急を控える~

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現地に行かなければならない場合も、その頻度を適切に保ちます。例えば、ゴミの収集は曜日や時間が決められた定期便となりますが、ゴミの量は日によって違います。ゴミの量やにおいをモニタリングして、必要なときにだけゴミ収集が行われるようにします。

おわりに

withコロナのオフィスビルのアイデアとして、LESS、EASY、ROBOT、CLOUD、ON DEMANDの5つをキーワードとしたSmart Operation Buildingをご紹介しました。ここで紹介したアイデアの中には、技術開発が必要なものもあれば、すぐに建物に実装できるものもあります。ご興味がある方は是非弊社までお問い合わせください。

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後藤 悠
エンジニアリング部門 設備設計グループ
アソシエイト
グランフロント大阪における超高層オフィスの自然換気、日本生命保険相互会社東館における層流放射空調、京都市役所分庁舎での地下水・太陽熱利用空調、阿南市役所でのシーリングファンなどを担当し、空気調和・衛生工学会学会賞等を受賞。







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