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日建設計・設備フォーラムから生まれたアイデア⑤「工場×レジリエンス」

日建VUCAエンジニアリング

多良 俊宏、大塲 涼太
日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ 

このVUCAの時代に、企業や工場はどうあるべき?

VUCAとは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことを意味します。昨今の新型コロナウイルス感染拡大防止のために強いられた新しい生活様式、半導体不足を代表とした物流の混乱、海外で発生している戦争等、現代はまさしくVUCAの時代といえます。企業や工場にはこのような時代を生き抜くためのレジリエンス性能が強く求められていくのではないでしょうか。
そこで、単純に工場のレジリエンス性能を高めるだけではなく、他の用途と組み合わせることで更なる付加価値を生み出す「日建VUCAエンジニアリング」を提案します。

工場の抱える不安ってなんだ?

製造業はサプライチェーンと呼ばれる物資の調達から製造、流通、販売、消費までの一連の流れで成り立っています。この流れの寸断は、工場の抱える大きな不安要素であり、確かな生産体制の構築には、サプライチェーンのレジリエンス性能向上が求められます。実際に、災害発生時に施設を継続稼働させることにも増して、社会情勢等による物流の断絶対策が喫緊の課題と考えられています。これはコロナ禍でのマスク不足等、我々も身近に感じることがあった事象といえるでしょう。
物流の断絶対策には資材・部材等の在庫を多く保有できるような仕組みの形成、つまり工場の付近に在庫を多く持つことが必要となります。しかし、都市部においては、拠点を拡充するにも、有用な土地が限られるまたは非常に高価なためその確保は難しいのが現状です。

社会課題も併せて解決!

そこで、都市部に作る生産・物流の拠点として廃校の工場への転用を提案します。廃校というと、過疎化との関係を連想するかもしれませんが、東京都の廃校数は全国で2番目に多く(※1)、都市部を含めた全国的な問題となっています。建築ストックの活用という社会課題に対して、有効な利用方法が見出されていない廃校は、

  1. 都心という消費者に近い好立地でも存在する

  2. 体育館などは倉庫に使いやすく、物資の貯蔵に長けている

  3. 校舎は整形なため、工場の目的に合わせたプランニング・動線形成が容易

  4. 運動場は搬送車両の駐車に利用でき、車両動線の確保が容易

などの特徴を備えており、レジリエンス性能の高い工場へのコンバージョンに好適な条件を備えているといえないでしょうか。

更なる付加価値を

工場は製造・流通の拠点となる建物という性質上、どうしてもそこで従事される方の利用に限定されているのが現状です。設計者としては、工場を一定の安全性に配慮した上で一般に開放することで、製造品のアピールや地域交流・貢献につながる、都市における魅力ある拠点になる可能性があると考えます。
廃校を工場に転用する本提案を例にすると、学校施設は敷地が広く、太陽光発電パネルを広い面積で計画しやすいことに加えて、消費地の近くに工場を設けることによる運輸部門のCO2排出量の削減など低炭素社会の実現にも寄与します。また、有事の際には地域住民の避難施設として地域に貢献することも可能です。
さらに、廃校は、その土地の文化に根差したレトロな魅力があり観光・宿泊施設としてのポテンシャルも秘めています。単に工場に転用するのではなく、工場機能を有する複合施設として計画することができれば、企業の製品アピールや、社員と地域住民との交流の場としても活用できるのではないでしょうか。
VUCAの時代を生き抜く提案に、自由な発想を掛け合わせ、新しい価値を創造するような挑戦していきたいと思います。

※1 文部科学省「令和3年度公立小中学校等における廃校施設及び余裕教室の活用状況について」より引用


多良 俊宏
日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ
2017 年入社。主にエネルギーセンターの設計を担当。

大塲 涼太
日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ
2020年入社。データセンターの設計を担当。



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