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つな木 Challenge2 ― 医療×つな木 ―

石澤 英之
日建設計 Nikken Wood Lab
プロジェクトデザイナー

私たちNikken Wood Lab(以下Lab)は、日建設計の木質・木造の開発研究を行うチームで、中規模・大規模の木造プロジェクトを進める傍ら、極小木造の可能性を探る「つな木」の研究開発を進めています。これは、広く木材利用の普及・促進を図ることで森林資源保護と地方創生を両立させると同時に、コロナ禍におけるライフスタイルの変化や医療現場への対応、またパブリックスペースの利活用など、現代社会が抱える諸課題に対して社内外のコラボレーションによりゴールを目指す取り組みです。
今年はそのトライアルフェーズとして多彩な「つな木 Challenges」を実施中です。今回は、2つ目のチャレンジについてご紹介します。

森林が命を守る ~「つな木」仮設医療ブース~

開発
日建設計では、with/afterコロナの医療現場を支援するための社内タスクフォース「Beyond the covid-19 Health Care」を2020年5月にスタートしました。Labも、医療施設建築を担当する設計者らとともに参加し、「つな木」を用いた新型コロナウィルス対応の木質仮設医療ブースを提案しました。
日本の森林資源を活用し、限られた時間とコストの中で、医療従事者やボランティアの方々が簡易に組み立てることができる「医療×つな木」の誕生です。

感染症拡大や大規模災害の発生時には、急増する患者を受け入れるための大規模な医療空間を迅速に確保する必要があります。仮設医療ブースは、講堂やアリーナなどの大空間を迅速に医療空間に転用するためのツールとして、研究開発しています。

足利赤十字病院でのトライアル

仮設医療ブース第一弾は、実際の医療現場で検証を受けブラッシュアップするために、栃木県の足利赤十字病院にて、病院関係者も含めたトライアル(実証実験)を実施しました。足利赤十字病院は、2011年に開院した両毛地域の拠点病院であり、世界でも先進的な次世代型グリーンホスピタルです。目下、地域の相談センター(保健所)や地域医療機関と連携し、新型コロナウイルスの感染拡大防止に取り組んでいます。2020年10月27日のトライアル当日は、感染防止措置を取りつつ、早朝から病院関係者、Lab、共同開発企業が協力して仮設医療ブース4基の組み立てを行いました。

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図1 組立の様子

完成後には様々な立場の医療従事者による検証や意見交換、実際の使い方のシミュレーションが行われました。
このトライアルでは、消毒しやすいようブースを仕切るビニルシートを木のフレームの内側に設けたり、開口部の位置の改善など、使い勝手に配慮をした上で臨み、視察された平野景太副院長からは「医療動線も確保され、清掃のしやすさやプライバシー確保など総合的に優れている」とコメントを頂きました。一方で、シートの施工性など様々な改善点も発見することができ、より医療現場のニーズに沿ったものとするための大変貴重な機会となりました。

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図2 デモンストレーションの様子

― つなぎ変えることで「組み換え」できる無限の可能性 ―

つな木の特徴は、どこでも入手できる木材を使い、扱いが簡単なクランプを用い、誰でも簡単に組み立てができること。さらにキャスターがついているのでどこでも移動できること。加えて組み立ての自由度が高くつなぎ方を変えることで「組み換え」ができること。トライアルでは2基の医療ブースの部材とクランプを用い、日常的に使用できるカフェブース、机、ベンチを組み立てました。これはあくまでも一例に過ぎず、無数の組み換え方法があるのが特徴です。

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図3 カフェブース、机、ベンチ

トライアル後しばらくは2基の医療ブースを発熱外来の診察室、外来待合室として使い、カフェブースと机、ベンチはカフェエリアに置かれることが決まりました。

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図4 小松本悟院長(左から2番目)と石原事務局長(右から2番目)

仮設医療ブースは、医療現場だけでなく、大規模イベントの感染対策にも応用されます。
11月8日、代々木第一体育館にて開催された国際体操競技大会「Friendship and Solidarity Competition」会場では、感染対策への配慮のために競技フィールド内に2基のブースがクリーンエリアとして設置されました。

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図5 体操の国際大会で設営されたブース

このブースは、11月11日~13日に東京ビックサイトで行われた医療・福祉施設のための設備・機器の総合展示会「HOSPEX Japan 2020」にて、再び医療ブースとして展示されました。体操の国際大会では、高さ制限をクリアするためクランプの位置を変え天井を低くしてましたが、HOSPEXでは再び圧迫感のない2.4mに天井の高さを戻しています。
HOSPEX会場では組立から解体、ベンチへの組み換えを実演し、多くの方が興味深く見に来てくださり、様々なご意見をいただきました。病院では2基の医療ブースからカフェブース、ベンチ、テーブルに組み替えましたが、ここでは医療ブース1基分から2脚のベンチへ、より汎用性の高い組み換えを行いました。

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図6 ばらした部材とクランプ

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図7 ホスペックスに設営された医療ブースとベンチ

これら「医療×つな木」は2021年1月末ごろまで東京の日建設計本社ビル1Fギャラリーにて展示しています。近くへお越しの際はぜひお立ち寄りください。

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図8 日建設計本社ビル1Fにて展示中

これまで沢山の関係者の方々のご協力があり、この仮設医療ブースは5月の検討開始から沢山の検証の機会に恵まれました。この場を借りて御礼申し上げます。まだ「医療×つな木」は生まれたばかり。さらなる成長の為にも、ますますのご協力、ご助言の程よろしくお願いいたします。


共同開発チーム
・企画、デザイン:株式会社日建設計(Nikken Wood Lab&タスクフォースチーム「Beyond the covid-19 Health Care」)
・クランプ製作、ユニット販売:三進金属工業株式会社
・木材調達:江間忠木材株式会社、株式会社篠原商店
・協力:日本無機株式会社(HEPAファンユニット)、キョーラク株式会社(外装膜製作)


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石澤 英之
日建設計 設計部門 Nikken Wood Lab
プロジェクトデザイナー
霧島連山の麓、都城市で生まれ育ち、登山、温泉、写真が趣味。
「人と風土と響きあう建築をつくる」をモットーに設計活動に勤しむ。
火山が織りなす南九州の風景に魅了され火山噴出物シラスと地元の木材を組み合わせた建築の設計・研究もライフワークとして行う。



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