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GAFAからネットは中央集権化するのか?~『ソーシャルメディア四半世紀』イベントレポ

こんにちは、日経電子版の企画やプロモーションをやっております関根と申します。Negiccoとサウナと筋トレとプロレスがあるので、人生どうにかやっています。オフの日は愛されるサービス作りの研究のため、Negiccoの現場に足を運んでおります。

さて、@cosme運営のアイスタイルのCEOグリーのCEOを招いて(!!)12・7に実施したこちらのイベント、自分で言うのもなんですが、「インターネットビジネスとソーシャルメディアのこれから」という難しいテーマながら、登壇者のアツいやり取りが繰り広げられる、素晴らしい仕上がりになりました。うっかり現場に来なかった or 来られなかった人に、少しだけお裾分けをしようと思いますので、以下おつきあいください。

気になった方はぜひ、今回のイベントの元になった佐々木先生の本『ソーシャルメディア四半世紀』をお求め下さい。あと、日経&日経電子版ではこのような、知的にスリリングなイベントを結構やっておりますので、是非ともご参加ください。

もくじ
・豪華な登壇者
・新しいものには名前がない
・集合知を可視化する@cosme
・GAFAとは戦わない、がVTuberへと向かわせた
・独自の価値をどう出していくか
・コミュニケーションだけでは価値が生まれない
・倫理的なプラットフォームの動き
・俺たちの愛するインターネットは終わった
・インフラ化した企業
・あるべきインターネットの規制主体とは
・GAFAとどう付き合うか
・GAFAにゲームチェンジは起きるのか

豪華な登壇者の皆さま

まずは今回のセミナー全体の元になった『ソーシャルメディア四半世紀』を書かれた東京経済大学の佐々木教授

そしてゲストに@cosmeを運営するアイスタイルの吉松CEO。佐々木先生とは長年のお付き合いだそうです。

さらにグリーの田中CEOも!

モデレーターとして日経からはスタートアップなどを専門にする奥平編集委員が参加しました。メルカリを中心に現代日本のスタートアップシーンを詳述した本を出したばかりです。

新しいものには名前がない

まずはアイスタイル(@cosme)、グリーのこれまでについての振り返り。双方ともユーザーコミュニティを生かした新しい市場をつくり、急速に成長してきました。

田中さん:
2003年11月から本気でGREEの開発を始めて、2004年にベータ版をリリースしました。 いつも社員に言っているのは「新しいものには名前はない」ということ。GREEも当初は、SNSではなく「コミュニティサービス」なんて呼ばれてた。今は「ウェブログ」も死語でしょう。

もともとSNSを手がけてきたグリー。その後、事業をゲーム中心のビジネスモデルに変えていきます。現実社会での友人と一緒に遊ぶタイプのゲームをビジネスの中心に据え、次に2012年前後から世界戦を挑むためにアメリカ市場にゲームを投入していきますが、「機能の勝負では米中の巨大な資本力に勝てなかった。日本の会社でも戦えるのは機能と感性の掛け合わせ」(田中さん)と活路を見出します。

集合知を価値化する@cosme


@cosmeは「化粧品のクチコミ」を中心的な価値とするビジネスモデルです。近年はリアル店舗も手がけていますが

吉松さん:
@cosmeは小売り業になりたいわけではない。「集合知を価値化すること」が価値。このユーザデータを"いかに"リアルに反映していくか、がポイント。メディア事業をやりたいわけでもないので、データは量よりも質が重要です。クチコミは一定量を下回らなければ、価値は発揮できます。

佐々木教授からは「ネットの口コミは、他の多くの人のためになるような商品の”評価”というよりも、単なる"自分語り"が増えてきている。これも"集合知"と言えるのか」 との質問が出ましたが、「@cosmeではそれでも機能するように設計している」(吉松さん)とのことでした。

GAFAとは競わない、がVTuberへと向かわせた

直近ではVTuberを新しい事業の柱としているグリー。その理由を田中さんはこう説明されています。

田中さん:
Google,Amazonのやりそうなものには近づかない。これが大原則。VTuberは感性がモノを言う、特に日本的な感性は生きる。さらに、グローバルでスケールする可能性がある。これはビジネスとしても面白くなると思いました

背景には米国進出で大きな損失を出した過去があります。法体系、雇用制度・・・さまざまな点で競争環境の違いを認識したということ。そこから得た学びが今に繋がっています。

田中さん:
日本の会社であることが有利になるようなビジネスをしないといけない。Netflixなどのプラットフォーマーの影響で、日本製コンテンツの需要が拡大しており、この市場は決して小さくない。ゲームにしてもローカライズをする必要は必ずしもない。例えば米国ではゾンビが人気だが、日本ではこれをキャラにしたゲームが難しい。土葬じゃないから(笑)

ビジネス面でも手ごたえを感じているとのことでしたが、ここで強調されているのが技術よりもユーザー行動の変化

田中さん:
自分で配信して、その反応がお金になる、という感覚は一般的になってきた。"慣れ"がビジネスに大きく関わってくる
『アナ雪』『君の名は。』のヒットはショックを受けた。映画業界においては実写かアニメかはもう問題ない。VTuberも同じではないでしょうか

独自の価値をどう出していくか

「GAFAと争わない」は吉松さんも同意見。では、どのように独自の価値を出していくのか。例えば、@cosmeは「化粧品」という「世界中のメーカーから、様々な製品が出ている」商品を扱うという点において、Amazonの祖業である書籍と似たところがあります。では違いは?吉松さんはこう説明します

吉松さん:
仮にGoogleコスメ、Amazonコスメがあったとして、@cosmeとアルゴリズムはどう異なるか?いつも考えている。僕らがリアル店舗をやる理由もここにある。手間のかかるリアル店舗も含め、むしろ彼らが手を組みたい相手になっていく

コミュニケーションだけでは価値が生まれない


吉松さんが意識しているのはコミュニケーションとコミュニティの違い。漠然としたコミュニケーションは価値を生みにくいとの指摘がありました。

吉松さん:
「何が価値があるのか」を最初からきちんと定め、ユーザーから集める、という初期設定のないビッグデータは分析コストばかりかかって価値を生まない。@cosmeはそこではなくコミュニティが集合知を産むように気をつけている

とはいえメディアの発達・普及とともにコミュニケーションが増えていくのは当然の流れのようです。佐々木先生は以下のように指摘しています

佐々木先生:
電話も同じ。当初はパブリックなもの、オフィシャルなものだったのが、普及とともにパーソナルになり、用件を伝えるものからおしゃべりが増えていった。


倫理的なプラットフォームの動き

米欧ではGAFAのような株式会社によるプラットフォームへの警戒感、アンチテーゼが出ています。課題は利益配分。強力な力を持ったプラットフォーマーが、参加者から搾取をする構造になっているのではないか・・・・。批判が強まるにつれ、様々な動きが出てきます。代表的なものがプラットフォーム協同組合です。

Facebookを中心にプラットフォーマーの公益性への批判や見直す動きが出てきています。こうした動きを経営者は意識されたことはあるのでしょうか。吉松さんはこういいます

吉松さん:
@cosme設立当時からコミュニティバイアウトなどの構想はあった。メーカー各社が共同出資する形にするなどのアイデアもあり、もう10年以上議論してきた。だが、技術革新への対応など投資を考えれば株式会社がベストだと思います

「俺たちの愛するインターネットは終わった」

田中さんは「課題はプラットフォーマーが巨大化しすぎていること。これと協同組合化というのはイコールではない」と指摘します。

ここから話はインターネットそのものの問題に移ります。

僕は冗談半分ですが、「俺たちの愛するインターネットは去年(2017年)で終わった!」と言っています。理由は2つ。 フェイクニュースと過度のSEOです。 FacebookもGoogleも、とんでもなく頭のいい人たちが運営しているはずなのに、アルゴリズムでフェイクニュースをはじく事はできなかった。

「集合知によってより良いものをつくる」はずが、人間はフェイクニュースが好きだった、ということです。インターネットの集合知は、実は人間を破滅させるものかもしれないという自己矛盾が出てきている。このアルゴリズムは政治的な意味を持つようになってしまった。これはすべてのインターネット企業が直面していることだと思います。「インターネットは自由でいい」という牧歌的な時代は終わり、何らかの規制がないと人類が耐えられない時代になっているのではないでしょうか

ウェブをその黎明期から使ってきた佐々木先生もこう続けます。

「プラットフォーム協同組合」の可能性を語るロンドンのイベントに夏に参加しました。すると協同組合という組織形態とは別に、価値あるコンテンツを作った人に直接、ブロックチェーンを使う仮想通貨で支払えるというような 分散化への期待も彼らは語っていた。でも分散化というのは自分で責任をとらないといけないということ。これだけ利用者が増えて、悪い奴も多い現在のインターネットで、普通の利用者がそのような分散型の自己責任をすんなりと受け容れることは考えづらい。若い人たち中心のそういった希望に満ちた理想論を見て、自分もネット界で年をとったと思った。若い人にはどんどんやって欲しい。でも25年以上前よりも分の悪い戦いであるという認識は持った方が良いと思う。

90年代半ばのとがった雑誌では、インターネットは政府の力の及ばない「サイバースペース」であって、 そこへの参加者は誰でも対等にコミュニケーションできて、直接知財を取引して、国もそれが発行する通貨もやがて消えるというような議論が展開されていた時期がありました。けれども、そのような夢とその後起きた現実をよく知る人は90年代半ばからネットを使い続けてきた少数の人たちなんですね。そういう時代になったのです。

しかし現実では、テクノロジー企業にメディア色が強まり、様々な規制、特に国による規制なども強まりつつあります。

インフラ化した企業

吉松さんはこうした現状を「グローバル規模での社会課題を解決する主役は、政治から企業に移っているのではないか」と考えます。企業の側から見ればどうでしょうか。大きな影響力を持つに至りましたが、社会インフラ化すればするほど、責任も増してきています。

田中さん:
例えばいち企業が設定をミスすれば通信網が止まる時代です。社会インフラ化が進むにしたがって、いち企業が負える責任という範囲をこえてくるのではないでしょうか。国防とメガプラットフォーマーの間に衝突がおきてくる。

国防とプラットフォームの問題。吉松さんは「現実的に、コストと能力を考えるとひとつの国ではできることは限られる」と指摘します。田中さんからは「データ、知的財産権、関税を一緒にしたブロック経済圏ができていくのではないか」との声が上がりました。

あるべきインターネットの規制主体とは

巨大化した企業への規制はどうなるべきか。佐々木先生は「インターネットの基本的な思想は中央集権的なものと対極。だが、インターネットは巨大化しすぎて、規制が必要になってきた」と考えます。 

GAFAとどう付き合うか

「巨大化したプラットフォーム」の代名詞であるGAFA。インターネット企業の経営者は、彼らとの付き合い方をどう考えているのでしょうか。

吉松さん:
GAFAは昔でいうOS。ハードの上にのっかているのがGAFAが、それだけではユーザーの需要全てを解決できない。@cosmeは言わばアプリケーションレイヤだと思っている。今後はリアルなプラットフォームとどこで繋がっていくのかが気になる
田中さん:
とにかく戦わない。実際取引先でもあります。加えてGAFAの話は政治的な要素が強まっている

GAFAにゲームチェンジは起きるのか

最後に日経・奥平編集委員より「GAFA=OS論。OSはゲームチェンジが起きるが、GAFAの今後に大きなゲームチェンジは?」との質問が 

吉松さん:
中国勢の伸張、5Gによる環境の変化...GAFAから抜け出そう、という動きはきっと出てくるでしょう。
田中さん:
これまでは大きなひとつのプラットフォームが全世界に広まってきたが、今後はコントロール可能な範囲でのブロック化が進むのでは。ワンプラットフォーム・グローバル化は難しくなる。そうなると同じようなものが並存するので企業レベルではチャンスではないかと思います


以上、イベントからごく一部を紹介しただけでもかなりのボリュームになってしまいました・・・。”いちばん新しいインターネットの歴史書”である『ソーシャルメディア四半世紀』をもとにしたイベントは今回でおしまいです。

もはや当たり前の存在として根付いたインターネットですが、時にはこのように来し方行く先を考えることも重要ではないでしょうか?興味を持った方はぜひ、本も読んでくださいね。

その他、日経電子版では今後も皆さんに新しい視点を提供するイベントを提供して参ります(しかも、有料会員だとお安いという・・・)。今後もお付き合いのほど、よろしくお願い致します。

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