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「無関心化」する消費者、「無表情化」する企業 アクセンチュア調査

6月3日、アクセンチュアが東京都内でグローバル消費者調査記者発表を開きました。2005年から毎年実施しているこの調査は消費者からみて企業がどんなふうに見えているのかという視点からアンケートしています。
まず、アクセンチュアの戦略コンサルティング本部の顧客戦略マネジング・ディレクター、小林正寿氏がグローバル消費者調査の結果を発表しました。

最近の先進国のトレンドは「無関心化」と「低ロイヤリティ化」。消費者が製品・サービスを買う際への興味や関心が薄れているといいます。日本の消費者は特にそのトレンドが顕著だそうです。2019年度の調査でもほぼ同様の結果が出ました。先進国では3~4割の消費者が情報探索をしないまま製品やサービスを購入。「無関心トレンドは依然として継続している」(小林氏)。消費者の70%以上が重要な社会問題に対して企業が明確な態度を示すことを期待しています。この傾向は若い世代ほど強く18~24歳の回答者は80%を超えています。

 ■消費者の価値観

無関心な消費者はどのような価値観を持っているのでしょうか。調査では消費者の70%以上、若い世代の80%以上が社会的問題への態度に期待しています。

社会的問題とはわかりやすくいえば環境問題や文化的な問題など社会が抱える課題や問題です。これについて企業がどういった対応をとっているのかを消費者は気にしています。小林氏は「消費者自身の価値観が社会的課題に向いてきている。だから企業に対しても『自分たちの問題意識に共感してほしいし、企業についても同じような課題意識を持ってほしい』と思っている。そういったことが読み取れる」と説明しました。
最終的に消費者は何をもってモノを買う意思決定をしているのしょうか。何を重要視してモノを買っているのしょうか。一番消費者が重要視しているのは「企業が示すビジョン」でした。日本では52%の消費者が重視しています。消費者からみて、いかにパーパス(企業の理念、ビジョン)・ドリブンな企業になるかが、カギとなりそうです。

            調査結果まとめ
① 消費者の無関心化トレンドに変化はあったか
■無関心化の傾向は昨年に引き続き先進国で顕著
■新興国ではいまだ無関心化の潮流は限定的

② 無関心な消費者はどのような価値観を持っているのか
■重要な社会的問題に対して企業が明確な態度を示すことを期待
⇒消費者の70%以上、若い世代の80%以上が社会的問題への態度に期待
■社会的問題への態度に失望した企業の製品は購入せず、二度と検討対象にも上らない

③ グローバル・日本共に「企業が示すビジョン」を最も重視
⇒「企業が与える印象」「企業が持つ行動指針」よりも「企業が示すビジョン」を重視
⇒特に日本は52%の消費者が「企業が示すビジョン」を重視

■社会的課題解決を志向し企業価値成長

続いて顧客戦略グループ アジア・パシフィック統括マネジング・ディレクターの石川雅崇氏が調査結果をもとにした考察を示します。社会変革や社会課題解決を志向した経営を実践する企業のことを「パーパス・ドリブン企業」と呼びます。パーパス・ドリブン企業は企業価値の成長率が高い。「パーパス・ドリブンは企業経営にとっては重要な視点の一つだ」(石川氏)

日雑品(消費財)とヘルスケア・保健の業界で無関心化が進んでいます。日本では35%が無関心でしたが、消費財は67%が無関心、ヘルスケアは52%が比較検討しないと回答しています。
石川氏は消費財とヘルスケアの両業界でパーパス・ドリブンを推進している企業を取り上げて説明しました。消費財メーカーの例として取り上げたのがユニ・リーバです。

2010年に自社の課題としてサスティナビリティを取り上げてパーパスを再定義・実践し企業価値成長を加速しています。グラフで分かるように定義した以降、企業価値を高めています。
どんなことしたのでしょうか。「サスティナビリティを暮らしのあたりまえに」を企業のビジョンとして掲げています。
ユニリーバ サスティナビリティ・リビング・プラン(USLP)の柱は2つ。一つが事業ドメインの再定義です。ホームケアや飲料という既存事業の垣根を超え、これをサスティナビリティでくくりなおして事業を再定義しました。

もう一つは使う原材料の調達から製造・販売などバリューチェーンの再構築です。バリューチェーンの再構築に伴うコスト削減効果はUSLPを導入後5年間で6億ユーロ(約750億円)になりました。一方、売上額の伸びは41億ユーロ(約5125億円)。石川氏は「成果という意味ではコスト削減よりも成長効果に大きく寄与している。パーパスを再定義することで顧客からの賛同を得て、成長を達成していくことで企業価値向上につなげたことが読み取れる」と解説します。

ヘルスケア業界からロシュも題材に取り上げました。組織の能力のうち不足する部分を補完する戦略をとりました。2007年以降の投資額は累計で約110億ドル(1兆2000億円)。ここ数年はデータを保有するサービス提供者の買収を積極的に進めています。

■日本企業はどうすべきか

「日本企業も改めてパーパスの意義と意味を再認識して将来像を作っていくことが重要なポイントだ。ユニリーバもロシュもしていたが、事業ドメインを再定義するとともに、ビジネスモデルを再構築するのが必要になってくると考えている」(石川氏)。
ただ、しっかり儲かる形で事業ドメインを再定義できるかが一番難しそうです。ロシュの例でいうとプロフィットプール(利益が出る場所)が薬から予防や診断といったより上流のところに移っています。うまくシフトできるかが勝負になるのでしょうね。

マーケティング手法はどう変えたらいいのでしょうか。質疑応答で小林氏が答えました。

■若い世代にリーチを

「社会問題に関わる企業への期待は年代が下がると高まる傾向だ。18~24歳の若い世代はソーシャルメディアで情報収集しながら発信していく世代。この層に対して、いかにリーチしながら発信して共感をとっていくか。マーケティング手法のひとつの道筋ではないか」「次の日経を考えるチーム」の展開を考えるヒントにもなりそうです。

パーパス・ドリブン・ビジネスへの転換 4つのポイント
①未来志向のビジョン策定
②事業ドメインの再定義
③ビジネスモデル転換
④チャレンジの明確化・変革の確実な遂行する

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