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ノスタルジックな風景

今三宮周辺は都市開発の真っ最中で至る所で通行止めだったり地震のような地響き。突貫工事の真っ最中です。

そんな工事現場を囲う塀に昭和の白黒の写真が等間隔で飾られています。
その向こうではダンプカーが、シャベルカーがけたたましくいろんな音を立てながら動いているのですが、その塀のこちら側は腰を曲げたお婆さんや杖を突いたおじいさんが家族と一緒に昔の話に花を咲かせています。

若い人などは不思議そうに「へ―こんな田舎だったんだ!」とか「この風景なんだか懐かしいわ!」と60歳半ばの女性は食い入るように一枚の写真をのぞき込んでいます。

そこにはスーツと表現するよりは背広のおじさん。何やらお店の前で店主らしい長い前掛けをしているご主人らしき人と商談中?の写真。

その前を着物にかっぽう着の母親が買い物かごを下げてわかめチャンスタイルの髪形の女の子と一緒に歩いていてとても活気のある様子の街並みです。

そこだけしばし時間が止まったような、人の行き来は結構早いのですが、映画の一コマようなその写真たちが妙にマッチしていて一時の事でしょうがほっこりとした空間を作っています。

少し前には取り壊されたビルのテナントのそれぞれが写真と店主の一言を載せていました。「長らくお世話になりました。新しい店舗は中山手の…。」先の店舗の場所などを記していて、それを立ち止まってメモを取る人や惜しそうに見ている人がいて、こんなせかせかした町中にノスタルジックな風を吹かせていました。

昔を思い出す。なんてそんな感傷的な気持ちが薄らぐ場所でホッと一息。
人はそれぞれの思い出をこの街かどで作ってそれは何ともない日頃の風景なのに、そこから両親を、友達を、恋人をと心に広げることが出来たようです。

ますます無機質な町になるのは近代的なこと、しゃれたという表現が出来る場所に生まれ変わることは大賛成ですが、その奥深い地中にうずもれようとしている町と人の感傷が新しい町を支えていくのだと思うとちょっぴり寂しくもあり…。

足早に歩いていてもいつも同じところで足を止める一枚の写真は立派な看板で文房具と書かれた小さなお店です。よく似たお店が私の小学校の前にあってユーモラスなおじさんは子供たちと仲良しで…。
「消しゴム2千万円!」「しっかり勉強しいや。」と大きな手でお釣りをくれた、そんな小さな思い出をくれました。

今日もいい日にしましょう!


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