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覚悟の時

お正月気分も知らぬ間に無くなって、日常の冬になりました。
ここ数日は雨。アスファルトの濡れた朝は冷たくて、まだ明けぬ
暗闇の散歩はどこまでも静かです。

星はまばらで、空気がピンと張りつめているのが肌で感じるくらい心地よい緊張があります。

今日は知人とご主人が病院に行く日。
それは何とも切なく、どうしようもない焦燥感があり、今 誰もいない小さな公園にいる私には何も手伝えない無力感だけがあります。

去年の夏、ご主人に腫瘍ができていることが分かって、簡単に手術して治るものだと家族は思っていたようです。

それからは見る見るうちにやせていく姿はご家族に覚悟がいることを認めざるを得ない状態にさせたそうです。

「あともって6か月」何とも無慈悲な宣告です。

我が家の場合はそんな辛い時期はありませんでした。
3日で退院の予定。盲腸の手術よりも簡単な胆石の摘出らしい。
そう言われて商売に悩殺されていた主人は、たまの休みをもらったと入院を楽しみにさえしていました。

その一週間後、帰らぬ人になりました。手術の失敗です。
そんなあっけなさすぎる最後と、宣告されて地獄のような日々を過ごすのとを比べることは間違っていることかもしれませんが、さてどちらが家族にとって少しでも胸の痛みが少ないことなのでしょうか?

看病することもなくふっと風に連れ去られたような亡くなり方はその時よりも日がたつにつれじわじわと悲しみが襲ってくるものです。

 彼女の場合は宣告された現実を前にこれからするべきこと、先の事。あまりにもたくさんの事や感情一挙に押し寄せて来ることでしょう。

幸いにも彼女は強い人です。自身の親の介護や仕事、体の不自由な息子さんの世話と自分のことはいつも後回し、頼りになるのはご主人だけだったのに、その後主人も取られてしまうなんて…。

私にできることは何でしょうか?
きっと私の時も身近な人がそう思ってくれたことでしょう。

経験者だから言えます。ありがたいけれどどうしようもないこと。家族で乗り越えるしかありません。ゆっくり現実を受け止める時間が必要なら、静かに見守ることです。

これからの人生は彼女が決めること。どんな道を選んだとしても応援します。

出会いがあれば必ず別れがある。出会った時にもう別れの道を歩き出したということです。

遅かれ早かれその時に出くわすなら、悲しむだけではなく、それまでに思い出を残せたこと、出会えたことを感謝すべきでしょう。

時間薬。こんな時にもこれが一番の治療法。
気丈に笑顔を作る彼女にはもう覚悟の二文字がみえているように思いました。

今日もいい日にしましょう!






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