見出し画像

高騰するイカを、朝ご飯に買うか買わなイカ

私のささやかな楽しみは八戸市の日曜朝市です。朝のねむたさや渋滞があっても行きたくなる不思議な場所です。

普段は何もない広大な岸壁に、毎週日曜日の早朝にだけ出現する巨大朝市・館鼻岸壁朝市(たてはながんぺきあさいち)。全長約800メートルにわたって300店程が立ち並び、毎週数万人もの人出を誇る、青森県内・東北はもちろんのこと、国内でも最大級の朝市です。特に、連休やお盆には観光客や帰省客などが通路にあふれ、歩くのが困難なほどのにぎわい。八戸で最もホットな場所と言っても過言ではありません。

 ホームページ VISIT HACHINOHE より

揚げたての唐揚げには、人が列をなして並びます。焼きたての焼鳥、蒸したての小籠包、大釜で似たキムチ鍋、朝から食べられるあっさりとしたラーメン、外で食べるてんぷらうどんやそば…もうどれをとっても最高なのです。

中でも私が最近楽しみにしているのは、夕獲れのイカです。昨日の夕方に水揚げされたイカを、朝から売るのですからまだ半日もたっていない新鮮で美味しいイカです。これを、朝のうちにさばいてしまい、お刺身にして朝ご飯として食べます。これが最高です。夕方までとっておくと、鮮度が落ちて、おいしさが半減します。それくらい、おいしさは時間と関係しているのだと感じます。

八戸は言わずもがな、巨大な水産基地ともなっている漁港です。倉庫が立ち並び、各地の漁船がさばをとっては、八戸港に水揚げします。たくさんの工場が立ち並び、加工もされていくわけです。おじいちゃんたちから話を聞くと、
「イカ、サバは水揚げされたトラックから落ちるくらい山積みされていたよ。それが落ちたのを、すぐに拾って夕ご飯のおかずにしたこともあったなあ。」
というほど、大漁だったそうです。

しかし、今、サバもイカも水揚げされなくなってきました。価値が上がって値段も高騰しています。かつて、イカはスーパーでも100円もしませんでしたが、今は300円というのもざらです。

安いものがならぶ朝市でも、イカは高いのです。今日もイカ2杯で700円でした。となりで一緒に見ていたおじさんは、「イカが高いなあ。」とつぶやいて去っていきました。

私は迷いましたが、購入することにしました。最高の朝ご飯を食べる幸せを700円で購入できると考えれば、安いものです。新鮮なイカをさばき、ぷりぷりのイカゴロや、コリコリした刺身を、ほかほかの御飯にのせて食べる、という自分の幸せを考えれば、安いものなのです。

最高の朝ご飯を手に入れる、という価値よりも、過去のイカの価値を重視するのであれば、となりにいたおじさんのように買わないのだと思います。つまり、相対的な時代の価値を見た、というわけです。

しかし、本当に大切な価値判断の基準は「自分の幸せ」であるべきなのだと思います。自分の幸せは自分で決める!そう思って生きていければと、と朝市のイカを見て思いました。

                       三浦健太朗

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?