創作におけるトレードオフ〜小説のちょっとしたコツ
小説のちょっとしたコツや小技をご紹介するシリーズ。
今回は「創作におけるトレードオフ」です。
トレードオフとは
トレードオフというのは、両立しない関係性のことです。
簡単に言うと「あちらを立てれば、こちらが立たず」という関係ですね。
小説を書いていると、よくトレードオフにぶつかります。
この関係性を知っておくと、執筆方針がブレずに済むでしょう。
代表的なトレードオフには以下のようなものがあると思います。
読みやすさ ←→ 情報量
物語の深さ ←→ 進展の速さ
詳細な描写 ←→ 想像の余地
それぞれ見ていきましょう。
1.読みやすさと情報量
1つ目は読みやすさと情報量です。
一般的に言って、情報量が多くなればなるほど読みにくくなります。
情報量を増やす要因はいろいろありますね。
表現における要因
詳細な描写
長い説明
凝った文章
視点人物の頻繁な変更
設定における要因
複雑な設定
難解な設定
構造における要因
登場人物が多い
場面が多い
逆転構造がある(ドンデン返しなど)
作中作がある(別の話や日記など)
読みやすくするには情報量を下げた方がいいのですが、そうすると、書こうとしている物語を十分に表現できない場合があります。
書きたい物語を優先して情報量を上げるか、読みやすさを重視して情報量を下げるか、決める必要があるでしょう。
私は基本的には「情報量を下げる派」です。
私の現状のゴールが「売れること」だからでしょうね。
複雑な話は、少なくとも私がいるジャンルではあまり歓迎されません。
2.物語の深さと進展の速さ
2つ目は話の深さと進む速度です。
図にするとわかりやすいでしょう。
物語を深くしていくということは、その場にとどまって垂直に掘り下げていくことです。
一方、物語を進めるということは、水平に時間を動かしていくことです。
この2つを両立させるのは難しいです。
物語を深めれば深めるほど話は進まなくなり、話をどんどん進めれば物語は浅いものになりがちです。
対策としては、ある章では垂直に掘り下げ、ある章では水平に進めると意識すると上手くいくかもしれません。
私は書いているジャンルがエンタメなこともあり、どんどん話を進める「水平派」です。
私がいるジャンルではシリーズ化するのが一般的なので、一つの巻でそれほど物語を深めなくても、シリーズを通して深めていくことができます。
一巻一巻は浅くても、長く書くことで結果的に情報量を増やし、物語を深めることが可能です。
3.詳細な描写と想像の余地
3つ目は詳細な描写と読者の想像の余地です。
描写すればするほど、対象や状況は明確になっていきます。
固定化されると言ってもいいですね。
一方、ふわっと描写しておくと、対象や状況はぼんやりしたままですが、読者が想像する余地は増えます。
たとえばホラー小説などでは、はっきり書かないことで、読者の恐怖を高める手法などが使われますね。
はっきり書けば書くほど、状況は固定され、意外性は低くなっていきます。
逆にぼんやり書けば書くほど、謎は深まり、何が起こってもおかしくないという緊張感をかもしだせるかもしれません。
これは明確に効果を狙えば、使い分けができるかもしれませんね。
私は「はっきり書く派」ですが、かと言って、それほど細かくは描写しません。
読者が容易に想像できるであろう場面や人物、状況は、意識して詳しく書かないようにしています。
私がいるジャンルでは、読者はどちらかと言うと、話が進展するのを期待しているので、わかることをくどくどと描写するのは避けたいからです。
今回のまとめ
小説のちょっとしたコツ「創作におけるトレードオフ」でした。
トレードオフ = 両立しない関係
創作にはトレードオフがつきもの
読みやすさ ←→ 情報量
物語の深さ ←→ 進展の速さ
詳細な描写 ←→ 想像の余地
トレードオフの関係を知り、どちらを優先するか、どう使うかを検討する
トレードオフにぶつかったとき自分がどちらを選んでいるか、この機会に確認してみるのもいいですね。
それではまたくまー。
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