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平和を考える児童書

夏休みです。たくさん本を読みたいと思いつつ、いろいろなことに追われ積読は増えるばかり・・・。本を開けば、たちまちその世界に入り込んしまうんですけどね。夏休みは充実した読書の時間を過ごしたいなと思っています。

さて8月なので、「平和を考える児童書」を整理しておきたいと思います。戦争の本は子どもにどんな形で提示しようか、いろんな意味で迷うことと思います。内容が刺激的過ぎると、子どもを不安な気持ちに追い込んでしまうでしょう。

でも、一方で、怖いから知らなくていいとも言い切れません。戦争の絵本は、子ども自身が進んで手に取るということも少ないです。どんな形で子どもたちに戦争について考えさせていくのか・・・。これは難しい問題です。国語や社会、道徳などで機会をみて読み聞かせをする、総合的な学習の時間で戦争について学ぶ際に紹介するなど、授業と関連させて子どもたちの様子を見ながら取り入れてみるのはいかがでしょうか。

今回は、読み聞かせできるくらいの短い本を中心に11冊ご紹介します。心理的負担が少ない順で書いています。(この順番は、私個人の見解です。)

①せかいでいちばんつよい国 (デビッド マッキー 作/なかがわ ちひろ 訳)

これは、ぜひ題名から内容を予想させた後に読み聞かせしたいですね。「せかいでいちばんつよい国」とはどんな国なのでしょう。シリアスにではなく、明るい気持ちで平和について考えるきっかけとなる1冊です。

②タヌキのきょうしつ (山下明生 作/ 長谷川義史 絵)

ほのぼのとした表紙ですが、広島が舞台で戦争についても描かれているお話です。リアルとファンタジーが混ざり合っていて、低学年の子どもたちには親しみやすいでしょう。タヌキへの感情移入を通して、戦争について考えることができます。(絵本ではなく、低学年向けのやさしい読み物です。)

③へいわってすてきだね(安里有生 詩/長谷川義史 画)

2013年の沖縄全戦没者追悼式で当時小学1年生の安里有生くんが朗読した詩からできた絵本です。子供らしい表現に、長谷川さんの絵が寄り添っている温かみのある絵本です。低学年向け。

④へいわってどんなこと?(日・中・韓 平和絵本)(浜田桂子)

この本の最大の特徴は、作者の浜田桂子さんが、中国や韓国の作家さんと一緒に作成したという点にあると思います。「平和」をテーマにする際にこのような活動を行ったというのは、とても価値のあることですよね。「平和」についていろいろな視点から考えることができる構成になっているので、子供たちが本の中からテーマを見つけて対話するような使い方もできると思いました。

⑤へいわとせんそう(谷川俊太郎 文/Noritake 絵)

絵は白黒で、とてもシンプル。ページの右側と左側でへいわとせんそうが対比できるようになっています。言葉と絵は少ないですが、伝わってくるもの、考えさせられるものはたくさんあります。自然と対話が促される本の構成がすばらしい。

⑥かわいそうなぞう(土家 由岐雄 文/ 武部 本一郎 絵)

3年生を担任しているときに、保護者が読み聞かせで選んでくれた本です。いつも読み聞かせでは、楽しく反応しながら参加する子供たちでしたが、この日ばかりは、真剣な表情で物語を噛みしめている様子でした。戦争のために動物を殺さなくてはならなかったという実話。その悲惨さがずしんと伝わり、子供たちの胸に訴えかけてきます。

⑦ドームがたり (アーサー・ビナード 著/ スズキコージ 絵)

過去・現在・未来が、原爆ドームの目線で語られています。スズキコージさんの絵がとても印象的で心に残ります。文を書いているのが、アメリカの人ということも大きな特徴です。あとがきの文章から、アメリカ目線と日本目線の違いを考えさせられました。

⑧ちいちゃんのかげおくり(あまんきみこ 文/上野紀子 絵)

教科書にも載っていますが、絵本で読むとまた違う印象です。「あまんきみこと教科書作品を語らう」(あまんきみこ/長崎伸仁/中洌 正堯 2019 東洋館出版)の中で、あまんさんがこのお話の構想を語る部分が印象的でした。ちいちゃんを生かしたかったけれど、「何度書き直してもちいちゃんは死んでしまいました」と言うのです。作者が意図しなくとも生まれる物語。戦争のお話や命のお話はそういった作用が働くものなのでしょうか。

⑨あるひあるとき(あまんきみこ 文/ささめやゆき 絵)

もう1冊、あまんきみこさんのお話です。あまんきみこさんは、満州に生まれ、大連で幼少期を過ごしました。大事にしていたこけし「ハッコちゃん」とのエピソードは胸に迫るものがあります。

⑩焼けあとのちかい(半藤一利 著 / 塚本やすし 絵)

最近知った絵本です。淡々と語られるからこそ伝わってくる戦争の恐ろしさ。東京大空襲を経験し、戦争と向き合ってきた著者の想いがこめられています。辛さや悲しさが詰まっていますが、主人公が生き残り、強い決意を語るところに救いがあり、子どもにも受け止めることができる内容だと思いました。もちろん、大人にもぜひ読んでもらいたい1冊です。戦争について語り継いでいくことの大切さを考えさせられます。

⑪おきなわ 島のこえ ―ヌチドウタカラ(いのちこそたから) (丸木 俊/丸木 位里)

最後はこれにしました。あまりにもショッキングな内容で、正直、小学生に向けて読んでいいものか分かりません。まずは、大人が読んで、戦争ではこういうことがあったんだと知るのがやはり大事なことのように思います。


今日は、絵本を中心に平和について考える本を紹介しました。既に親しみのある絵本もありましたが、図書館で借りて初めて読んだものもありました。いくつもの書店や図書館を回りましたが、「平和を考える本」コーナーを設けているところは少なかったです。あまり手に取られないからなのでしょうか。

戦争を経験した方が、だんだん少なくなってきています。子供たちが平和について考える機会をもつには、大人の関わりやきっかけ作りが重要だと思います。本は、様々な切り口から平和を考えるきっかけを与えてくれます。目の前の子供たちをよく見て、教材研究をしたり、本に触れる機会を作ったりしていきたいですね。