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シリーズものの魅力

本を選ぶ時、シリーズものだと安心して手に取ることができるってありますよね。学校で子どもたちの本選びの様子を見ていても、シリーズものを手に取る子はとても多いです。我が子もシリーズものが大好きです。

今日は、なぜシリーズものが好まれるのか、そして子どもたちの読書の幅を広げるにはどうしたらよいか、について考えたことをまとめてみたいと思います。

心を揺さぶられすぎるのは嫌

本を読むと、ドキドキしたり、ワクワクしたり…感情が揺さぶられますよね。程よい揺さぶりは心地よく、本を読むことによって癒されたり勇気やパワーをもらったりすることができます。

でも、逆に揺さぶりが強すぎると、それがストレスになってしまいます。私も今まで読んだ本の中で、予想を超えた衝撃的な内容に出会ってしまい読むのを途中でやめたものや、事あるごとに辛い描写が思い出されるものがあります。

子どもの頃、「本当にあった怖い話シリーズ」や心霊写真が載っている本が流行ったことがありました。読みたいんだけど、夜絶対トイレに行けなくなると思い、読むかどうかすごく迷った経験があります。

本は、新しい世界や考え方を教えてくれる存在であると同時に、平穏な暮らしを脅かす少し怖い存在でもあるのかもしれません。シリーズものは、既に読んでいるものの延長線上でお話に入ることができるので、子どもたちが本を選ぶ際、安心して手に取れるのだと思います。

難易度がちょうど良いものを読みたい

子どもの場合、難易度のちょうどよさも大事になってきます。いくらおもしろそうでも、読めない漢字ばかりだったり、文字の量がその子に合っていなかったり、難しい言葉が並んでいたりすれば、1人読みは困難です。

同じシリーズならば、既にどんな分量・難易度の本か、見通しが立ちます。読めると分かっている本だと安心して読み始めることができます。大人でもそうですよね。

知っている友達に会いにいくような気持ち

シリーズを数冊読むと、登場人物がとても身近な友達のように思えてくることはありませんか?本の中の友人がどんな出来事に出会うのか、ワクワクしてきます。

また、読んでいると、自然に自分に似ている人物に感情を重ねたり、自分とは違う考え方の登場人物に反論したくなったり…。安心できる読書世界の中で、自分なりの考えを形成していくことができます。

新しい本を読み始めるとき、最初の3分の1くらいは、登場人物の関係性やその世界の空気感をつかむのにエネルギーを使います。シリーズものは、それを飛ばして、内容にすぐに入り込める良さがありますよね。

読書の幅を広げるには?

いつも同じシリーズばかり読むのもいいけれど、読書をステップアップさせるには、どうしたらいいでしょうか。これは、多くの保護者の方や先生たちが考えていることだと思います。

確かに、安心できる同じシリーズばかりではなく、新しい世界に一歩踏み出してほしいと思う気持ち、よくわかります。

でも私は、今夢中になっているシリーズにどっぷりはまることをまず大事にしたいと思います。大好きな本があると言うのは強いです。大人になったとき、「子どもの頃、この本が大好きだった」と言えるような本があったら素敵だと思いませんか?

長いシリーズを読破したというのは、自信にもなります。全巻読んだというと、もうその本とはだいぶ仲良しになっているということです。登場人物とは、親友みたいな感覚かもしれません。「主人公ならこういうとき、こう言うだろうな」みたいな行動パターンまで予想できるレベル。それだけ夢中になったら、本と深い付き合いになり、その子の人生を陰で支えてくれるはずです。

シリーズものをただ読んでいるように見えても、頭の中では、様々な思考が働いています。文章を読み慣れることは次の読書に必ず繋がっていきますし、読み返しているときは、頭の中で一度読んだものを再考しているので知識が強固なものになるでしょう。絵本だって侮れません。何度も読むことで、絵から、文字から、文章から、新たな発見を繰り返しているのです。

間違っても「また同じシリーズばっかり読んで…。」「たまには違うシリーズも読みなさい!」なんて言わないようにしたいですね。

子どもが新しいシリーズを求めたら

シリーズにはまった子が、新しいシリーズや別の本を求めたら、ちょっと次のステップに進む手助けができるかも知れません。

①同じ作者の別のシリーズ
1番ハードルが低いのは、今まで読んで気に入ったシリーズの、同じ作者の別のシリーズを薦めることです。同じ作者だと、作風が似ていることがあるので、手を出しやすいです。(中には、同じ作者だからこそ「しかけ」がある場合もあります。それを発見したときの子どもの喜びようといったらありません。)

②同じジャンルのシリーズ
探偵物、冒険物、スポーツもの…、好きなジャンルがあれば、そのつながりで次の本を紹介してみるとうまくいく場合があります。ただ、これが意外に難しいです。装丁とか、挿絵とか、字体とか…そういう細かい部分が違って、なんとなく読まないということになりやすいんですよね。これは、偶然ヒットすればラッキーくらいの気持ちでやってみるといいと思います。

③本紹介の本を活用
我が家で大ヒットしたのがこちらの本。「つぎ、なにをよむ?」です。

本紹介の本ってたくさんありますが、この本は心理テストみたいに矢印をたどりながら、自分でおすすめ本を探せるのです。ほぼ全てのページがカラーで、めくっているだけで楽しい!シリーズ以外の本もたくさん載っていますが、我が子は本選びの際にかなり参考にしていました。親とか先生とかでなく、第三者の情報っていうのがいいのかも知れません。
(ただ、こちらも万能ではありません。教室に置いていますが、ぱらっとめくって雑誌みたいに楽しんで終わりという子ももちろんいます。それでも、いろんな本があるというのを知る機会にはなっているはずです。)

④ブームをつくる
子どもが世界を広げる際、まわりの環境というのが少なからず影響してきます。
流行っている本というのは読みたくなりますよね。以前担任したクラス(4年生)で、シノダシリーズがブームになり、その後、富安陽子さんの本が大人気になりました。2年生では、「ぼくは王さま」(寺村輝夫)を読み聞かせして、そのシリーズを紹介したら、人気が出て、読む子が増えました。
読み聞かせをしたり、あるシリーズについて読んだ子と一緒にその本の話をしたりすることで、人気が出て、「私もそのシリーズ読もうかな」となるのはよくあることです。人気シリーズの1巻を、朝の読み聞かせで少しずつ読むということもよくやります。

ただ、気を付けたいのは、読んでいない子や能力的に読めない子が悲しい思いをしないように十分配慮すること。「本は自分の好きなものを自由に読むもの」とか「読んでいる本による優劣はない」とか、読書に対する価値観を共有しておきたいですね。中学生レベルの本を読んでいる子が優れていて、絵本を読む子は低レベルだ、みたいなものの見方が学級にあると、つまらなくなってしまいます。あくまでも、自分に合うものを探して読むということ。「先生や友達がはまっている本があっても、自分はそれは読まない」という子がいるのはもちろんOKですよね。それを前提とする学級経営や集団づくりというのは大切だと思います。

終わりに

今日はシリーズを読むことについて、考えてみました。自分の安心できる世界から、一歩外に踏み出す経験はとても大切な意味をもつと私は思います。

インターネットやAIの発展により、自分の好きな情報や自分に都合のよい情報には手が届きやすく、自分の目にしたくない情報とは距離を取ることが起きやすい時代です。
シリーズものを手に取ることや新しい本の世界にチャレンジすることは、自分と情報との距離感を掴む練習にもなると考えられます。本選びの経験が、将来様々な情報と向き合う際の土台にもなるように思うのです。


最後までお読みいただきありがとうございました。
おすすめのシリーズ本も、まとめてみたいと思います。
(たくさんありすぎて迷いそう…。)