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第6章、寮(機械室)1ー「本当に、 ここって寮の蛇口に続いていると思う?」(あらすじ付き)

本編には死体が出てきます。苦手な方はご注意ください
太字の()は、私(主人公)の気持ちや考えていることです。
()の中の文字は、作者による注釈です。

                                                                         2024年 3月 1日、更新しました。

作者より




これまでのあらすじ

 王宮の会議に出席していた私(主人公、以下すべて、私)は、星の女神アルテミスから『(私が作った)鏡が盗まれた』との報告を受け、その犯人は銀河連合刑務所から先月出所したハップル博士らしいとわかる。
そして私は、『第二都市の学校に入学する』と発言してしまう。(第1章)

 一方、地獄ではブラックホールのような穴が開き、亡者たちが地上に出て行ってしまう。(第2章)

 さらに地上では、酒と音楽の女神バッカスと花の女神フローラ、村の子供が行方不明になっていた。(第3章)

大地の女神ガイアの導きで、バッカスとフローラに再会した私は、火の女神マーズと川の女神オフィーリアも連れて、第二都市に向かって砂漠の中を歩きだす。
                                                                                                                 (第4章)

 到着した第二都市では、A地区の中で亡者たちが争い、窪地(虹池)では水が無くなり大量の魚たちの死骸があり、道沿いの花や草木が枯れていた。
 部下たちと再開し、学校の運動場の中にいる亡者たちを倒した後、市長さんから吉谷という校長先生を紹介される。
 吉谷校長先生の案内で寮に行くと、『オフィーリアに水を出してもらいたい』と言われ、寮母のマリーさんがオフィーリアと彼女の部下たちを連れて、奥の部屋へと入って行ったのだが・・・(第5章)

詳しく知りたい方は、下記のマガジンからご覧ください。




機械室(ここから本編です。)


寮の機械室とその周辺を拡大した見取り図です。
機械室内の機械や道具などは省略しました。
寮1階の全体図を見たい方は、前回(5章ー5)をご覧ください。
(2023年4月15日に編集しました。)

 機械室のドアから、寮母のマリーさん(以下すべて、マリーさん)が慌てた様子で出てきて
「すみません、澪ちゃんというのは?」
「はい」
私は返事をして、マリーさんの横をすり抜けるようにして部屋の中に入った。
 その後ろからマーズちゃん、バッカス、フローラもついてくる。部下たちも、ついて来た。

 中は明かりがついているが、窓がないため薄暗く、ボイラーの機械や掃除道具やら様々な物が置かれ、壁には灰色の配管が通り、それが天井を突き抜けて、どこかの部屋にまで通っているようだ。
「機械室です。」と説明する校長先生の声が、背後から聞こえてきた。

 さらに奥の突き当たりに、四方を板で囲っただけの部屋があり、その部屋のドアの前で、タガメ、ナナ、ミミが部屋の中を覗いている。
 近くまで行くと3人が離れ、中を覗き込むと、すぐ前に立っている藍白が振り向き
「ん? 澪ちゃん?」
 私はうなずくと、床下の四角い蓋を開けた貯水槽の中を覗き込んでいるオフィーリアの肩を叩く。
「あっ澪ちゃん、どうしよう?」
彼女が困った顔で、私を見上げた。

 天井に付けられた電球が、明るく貯水槽の中を照らしている。
 覗いてみると、中には数人の死体が沈んで、配管の入り口に覆い被さり、蓋をしている状態になっている。おそらく亡者か私(?)により都市の水道網が壊れなければ、水が溢れ出ていたかもしれない。

 私はさらに、その奥を覗き込む。中は薄暗く、周囲の壁にはたくさんの丸い穴が空いているのが見える。
「あそこから、水が出ていたのかな?」
「だと思うわ。」
「とりあえず、ここの水はこのまま置いといて、別のルートから流すようにする?」
「うん。」
彼女はうなずくと、立ち上がって藍白に
「別のルートを」と言って、部屋を出て行った。

 私の後ろから、他の女神たちが覗き込み
「あーこれか? 原因は。」とマーズちゃん
「ここが、あの池に通じているってことか?」とバッカス
「そうですね。」とマリーさんの声が、背後から聞こえてくる。
 私はその場にしゃがんで床に手をつき、じっと貯水槽の中の死体を見つめる。
(このまま、ここ・・に置いといても、いずれ朽ちていくけど・・・。)

「どうします?」
いつの間にか私の背後で、副隊長が覗き込んでいる。
「ちょっと考え中。」
私は再び、死体に考えを巡らす。
(なぜ、ここ・・に死体があるのだろう? ここ・・に追い詰められたのか? この死体を取りのぞいたら水は、寮や学校、あの窪地まで流れてくれるのか? 植物って土の中から水を吸い上げるものだよね、うーん・・考えろ、なんかすごい大事なことを見落としているというか、すぐ目の前にあるのに気づいていないというか・・・。)
「澪ちゃん?」
(なぜ、窪地の水は一晩で干上がったんだ? 都市の人たちは知らなかった。たぶん昨日は、まだ水があったんだ。『夕方の5時ごろには出てこなかったわ。』、昨日の夕方5時・・それまでは水があった・・・。(第5章-3))


下にひそむ物

「おい!水が出たぜ!」
マーズちゃんが私を呼びにくる。
 遠くで、拍手と歓声が聞こえてくる。
「隊長?」

 私は1つの仮説を立て、副隊長に
「ごめん、中の死体を取り出したいから、私の体を支えてて。」
「でしたら自分がします、体が大きいですし・・。」
「えーと・・・。」
「それけたら、この水も寮の中に流れこむんじゃないのか?」とマーズちゃん
「んー本当に、ここって寮の蛇口に続いていると思う?」
「どういう意味だよ?」

 私は副隊長に
「昨日の夕方5時ごろって、何かあった?」
「あーあのころは・・都市の中程なかほどで、住民たちを体育館へ行くよう誘導してましたけど・・・。」
(あっそういえば、村の水は出てたんだ。フローラがケイトさんに水の入ったコップをもらっていたのを思い出した(第3章-2)、てことは第二都市だけ・・・。)
「じゃ、アオバに頼もう。」

 聞きつけたアオバが
「呼びました?」とドアの所までやって来る。
「この中の死体を引き上げて欲しいんだけど。」
「お安い御用、すよ。」
 アオバは着物の両袖を脱いで、それをウエストの周りで結び、腹這いになりながら
「副隊長、支えてもらえますか?」
「おう。」
副隊長はしゃがんで、アオバの腰の両脇をつかむ。
「よっ!」
 腰を90度、貯水槽(?)の中へ曲げ入れ、さらにズルズルと這いずるようにそのまま下へと下がった。首まで水に浸かりながら両手で死体を抱え、引き上げた。


次回

第6章ー寮(機械室)2「目の前のやつに集中しよ。」

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